今の二人
――コンコン。病室の扉がノックされ、どうぞっと言うと入ってきたのは華怜だった。
「体の方はどうですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
ミーヤが来ると思ったら違かったからちょっと焦る。
「……えっと確か七条さんですよね?」
一回しか会ってないから名前を間違ってないか恐る恐る確認する。
「えぇ。そうですわ。合ってますよ」
フゥーっと安心する。
「記憶を失うと人がガラッと変わってしまうのですね」
「すいません」
「別に謝らなくていいのよ。ただ、調子が狂うのです」
「ん?それはどういうことですか?」
「あなたと私はいつも会うたびによく言い合いしていたのよ?始まったらいつ終わるのか分からないぐらいにね」
「そ、そんなに私たちは仲が良くなかったんですか?」
「それはもうね。特にあなたと優孝が話をしてるとなんだか悔しくてね。すぐに間に割って入りたくなるほど」
「……い、今私と話をしてるとどうですか?機嫌が悪くなりますか?」
「いいえ、思いませんわ。だからこうして普通にあなたと話をしてると不思議ですわ」
フフッと少し微笑む華怜。
「七条さんと川中君はどんな関係だったんですか?」
「川中君ね……私と優孝は恋人同士だった関係よ」
「だった?別れてしまったんですか?」
「私は嫌だったんですけど私のためとか言ってね……ちょっと強引だったけど、また付き合ってくれること信じて別れることを承諾したんです」
悲しそうな顔をして窓の外を見る。
「ごめんなさい!私のせいで!」
「謝らないで。あなたを責めてないしあなたのせいだと思ってないわ」
「で、でも!」
シッーと夏織の唇を指で押さえ言葉を塞ぐ。
「多分ですけど次優孝が選ぶ人は、あなただと思うわ」
「それは何故ですか?」
「ん~。分からないけどそんな感じがするのです。……さて、私はそろそろ退席しますわ」
スタスタと扉の方へ歩いて行き、少し開けた時に振り向かず。
「……あなたの胸の中で動いている心臓。大切にしてね」
病室を出るとそこにはミーヤが立っていた。
「華怜様」
シッーっと今度は自分の唇の前で指を立てウィンクして、何も言わずにその場を去って行った。その後ろ姿にミーヤは深く頭を下げた。




