やっと来れた
季節が夏に移り変わり日差しがきつく暑い日々が続く。夏織は病院から退院し、思い切って一人暮らしを始めていた。最初は両親に反対されていたがミーヤが、夏織と同じアパートの隣に住むと聞くと承諾した。内心は凄く心配。
学校は夏休みが明けてから通い始めることにした。
まだ、記憶の方は完全に戻っていないが時々、前みたいな口調で話す時がある。めんどくさそうな。
「ミーヤさん。髪結んでもらっていいですか?」
「はい」
今日はこれから優孝のお墓参り向かう準備中。ミーヤに髪をブラシで磨いでもらう。自分でも出来るがミーヤにやってもらうと納得する出来になる。
いつものようにお気に入りのシュシュでポニーテールにしようとした時。
「あ、今日からサイドにしてもらっていいですか?」
「サイドですか?……分かりました」
手際よく髪を左側に束ねてサイドテールの完成。鏡を見て確認してうんっと納得する。
色々な種類の花をたくさん持ってアパートから出発。
「ここが優孝様のお墓になります」
夏織が優孝のお墓に来るのは今日が初めて。退院したらすぐに行こうとしたが中々行く機会を逃したりして予定より1か月ほど遅れてしまった。
毎日ミーヤは来てるのでお墓の周りには、落ち葉など一切なく綺麗になっている。
「少々お待ちください」
ミーヤはハサミでてきぱき花のじくを切りお花にお供えし水をあげる。
「それでは私は一旦離れるのであとはお二人で」
そう言ってお辞儀をしてその場から離れていった。
夏織はしゃがんでなんとなく目を瞑り、すぐにあける。
「初めまして川中君。……君のお陰で私は今、生き続けられてる」
語りかけるように話す。
「なんだか不思議なの。君は亡くなってしまったのに私のここでドクンドクンって動いてる。生きている」
胸に手を当てる。
「君は亡くなってなんかないよ。ちゃんとここで、私の傍にいくれて生きてるよ。これからは私の傍にいて一緒に生きていこう」
弱めの風が吹き髪が揺れる。
「記憶を失って君のことはほとんど覚えてないけど……これ!」
シュシュに指をさす。
「数日前に思い出したの!このシュシュ君が私に送ってくれた物って、思いだした時はすごく嬉しい気持ちになったんだよ?」
微笑む。
「君のこと忘れてしまって本当にごめんなさい。でも、これから少しずつ時間が掛かってしまうかもしれないけど、君のこと思い出すね。多分なんだけど私は君のことが好きだったと思う。だから……」
自然の両目から涙が溢れ出した。
「夏織さん」
ミーヤがお線香を焚いて戻ってきた。ハンカチで涙を拭いてあげる。
「さっ、手を合わせましょう」
二人はお墓の前で手を合わせる。
「それでは優孝様、また来ますね」
「君の分もこの先頑張るね」




