来た夜叉、連れ去った修羅
だれだ?あのおっさん。
修練所で見知らぬ夜叉のおっさんがアモンと手合わせをしている。
アモンの魔力球をおっさんに向けて撃つ!
ボム!!
俺は目の前に来た魔力球を叩き潰した。
なんだ?!いまの。
魔力障壁で打ち返した?
「わりぃ。鍵を閉めてなかった。」
おぃアモン、俺じゃなかったら黒焦げになってたぞ、全力出しただろ。
「次は俺だな。」
おっさんがアモンに向けて撃つ!
アモンが作ったU字型魔力通路に吸い込まれて元来たほうに吐き出される。
ボム!おっさんがそれを叩き落とす。
「違うな。」
「あぁ違う。」
「なんなんだよいったい?で、だれなんだよあんた?」
「この人はイーガのベルド。決闘で今の魔力球を出したんだが相手に当たるまで確かに見たんだが実際に倒れたのがこの人だったんで何が起きたのか検証してたんだ。分け分からん。」
ふむ、反射とかじゃないな。
「時間魔法とか?」
「それも考えたんだけど、巻き戻しだと手元で消えるだろ。」
ふむ、
ならば、
もしかして、
「立っている位置を入れ替えたんだろう。当たるとすぐ戻して。」
「それかなベルドさんそこにたっててくれ、撃って入れ替えてみるから。」
「おいやめろ!」
ボム!
「アモンお前バカだろ?」
魔力球がおっさんにあたったと思った瞬間にアモンが黒焦げになった。
「これだな。」
「おぃおっさんそんなことを言ってる場合か?大丈夫か?」
アモンはすぐ復活した。
丈夫なやつ。
「これだな。かなり応用が利きそうだが、分かっていれば対策も簡単だ。」
「だな。」
「おぃ、アモン、のんきなこと言ってないで、体を洗って着替えて来い。すごい格好してるぞ。」
焦げた服は復活しない。
「仕掛けが分かったことだし、風呂でも行くか。アインお前も汗臭いぞ。」
固まる俺にアモンは笑いかけた。
「ちゃんと風呂は三つ作った、ルーナはまだ嫁入り前なんだ。お前には見せてやらん。」
三つ?
アモンはディモン家専用と書かれた暖簾をくぐって行った。
「風呂入ろうぜ、俺はベルド・ドド、イーガ一の使い手のはずだったんだが、決闘でさっきの技をくらってな。負けて居られなくなったんでここで厄介になることになったんだ。」
「アイン・デ・マーリンよろしく。」
「よろしくな、おっさんじゃないぞまだ若いんだ。」
男湯を使うのは俺たち二人だけか、いい湯だ。
湯から上がってくつろいでいたら警報が鳴った。
あわてて駆け上がった御者台にはすでにアモンの姿があった。
「どうした?」
「レイがさらわれた。あいては修羅の3人組だ。」
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牛車はイーガから古都ヤマトへ向かう峠道を走っている。
ヤマトはフェアネス皇国がこの大陸を統べる前の大帝国の首都があった場所だ。
首都はやや北のコートに移りやがて滅びた。
俺の不死王の塔はヤマトの真ん中にある。
ん?
何者かが牛車と並走している。
3人、かなりの手練だ。
そして御者台からレイの気配がフッと消えた。
御者台には真っ青になったセリナさんだけが座っていた。
「アモンさん!いま三人組がレイさんをさらっていきました。」
「分かってる。セリナさん怪我はない?」
「はい、私には何もしませんでしたから。」