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サラの咲く道

レイがさらわれたというのに、アモンのやつは心配する素振りさえ見せない。

その辺のところを怒鳴りつけてやったら、

「ちょっとヤーギュに寄り道していって良いか?」

だと。

ヤーギュはここから少し北にある修羅の隠れ里なんだと。


「家族か親戚でもいるのか?」

「いや、俺にはそんなものは無い。ただ俺は昔、行かねばならなかったんだ。」

「昔?」

「ああ、昔ゼムにさらわれたとき成人の儀式を行うためにヤ-ギュに行く途中だったんだ。」

「へー。」

「今まですっかり忘れてた。俺はそこへ行かねばならないはずだったんだ。何で、今まで忘れていたんだろう?」

こんな悲しそうな顔をするアモンは見たことがないが、それでも俺は言わねばならない。

「レイさんのことはどうするんだ?」

「あれなら心配ない。すぐ帰ってくるさ。誰も、あいつには傷一つ付けることができないんだ。」

「え?」

「詳しくは聞いてくれるな。」


アモンの言ったとおり、レイは日暮れまでには戻ってきて、何事も無かったようにみんなの夕食を作っていた。

三人組については、

「やっつけてしまいました~。」

以外のことを話してくれなかった。


牛車は俺が薄紅色の花が咲きほこる道を走らせている。

ユリアは絶対に出てはいけないと牛車の自室に軟禁状態にある。

修羅の血を少しでも引くユリアの匂いがもれてもいけないとメイドゴーレムたちが大掃除をしている。

いったい何があるんだ?


アモンが魔法が使えるメンバー全員を集めて修練所に閉じこもった。

だから中に入れてもらえない俺とルーナが御者を勤めるしかない。

いったい何があるんだ?


周りの景色を眺めていると、奥から出てきたフル装備のレイが音も立てずにしなやかな動作で俺の隣に座った。

「代わろう。」

レイは気配を完全に絶っていて真横に座っているのに全く存在感を感じない。

俺からたずなを受け取ったレイはまっすぐ前を見て牛車を走らせているが、その姿にどこか違和感を感じる。

「じゃぁ、中に入ってくるね、アモンおやすみ。」

「おやすみ。」

!このレイそっくりなのがアモンだと!?

「お前アモンか?!」

「なんだ気が付かなかったのか。ルーナでも判ったと言うのに。ちょっとみんなに成長にひつような気を分けてもらったんだ。」

「お前完全に気配を消してるだろう、存在を認識出来てるだけでほめて欲しいくらいさ。見た目だけでレイと区別なんかつくかよ。ところでなんで大人になっているんだ?」

「修羅は二人で気を交換して成人するんだ。俺は一緒に成人してくれる相手が居ないんでしかたがないんだよ。成人しないと祭りに参加できないんだ。」

にっこり微笑んでいてもアインの目は氷のように冷たい光を湛えている。

「それなら俺が付き合ってやるのに。」

そう、俺には使えないが並み以上の魔力がある。

そしてハーフエルフである俺は修羅と同じ成人の仕方が出来る。

「そうだな、アインありがとう。」

俺たちの会話はそれで止まってしまった。

「なぁアモン。」

「なんだ?」

「死ぬなよ。」

「成人の祭りと、先祖の墓参りをするだけさ。俺が死んだりするわけがないだろう。」

「そっか。」

アモンは俺に嘘をつかない。


アモンは牛車を道が二股に分かれている場所で止めた。

「ちょっと行ってくる。ヤマトで待っていてくれ。あさってには合流する。」

走り去っていくアモンに三つの気配が交差し、またアモンの気配だけが遠ざかっていく。

アモンは俺に本当のことを言ってくれないこともある。


****************************************


「それなら俺が付き合ってやるのに。」

か、アインのやつ意味が分かって言ってるんだろうか?

二人で気の交換って婚約者同士しかしないだろう。

俺は襲い掛かってきた三人の修羅の角を切り飛ばしてサラの花が咲き誇る道を急いだ。

あの時もサラがきれいだった。

いっそ完全に忘れてしまって居ればよかったのに。

俺は中途半端に記憶を封印したゼムを恨んだ。





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