いつの間にか人が増えてる
牛車はナーギャを出てその衛星都市に3回ほど立ち寄ったあとは峠道を走っている。
「おはようございます。」
「おはよう。」
?
「いまのメイドさんゴーレムじゃなかったよな?」
なんかこの牛車、部屋の数が増えてないか?
「アイン様おはようございます。」
このメイドはレイさんだ。
俺の後ろにいたプルート、おれのケーンの名前ね、もしっぽを振って挨拶している。
「知らない人がいるみたいなんだけど?」
「ディアナ様が自分も修行の旅に出るとおっしゃって。」
「それでお付の人を連れてきたの?」
「はい、セリナ様おひとりですが、お連れになっていらっしゃいます。」
俺はガシャンガシャンと近づいてくる足音に向かって頭を下げた。
「アイン・デ・マーリンと申します。始めてお目にかかります。」
「ナーギャの千卒長でセリナともうします。そのような丁寧な挨拶は無用にしていただきたく思います。」
セリナさんはファリアたちを従えて、修練所へ入っていった。
「修行だ~。」「がんばです~。」「わ~。」
???
「さっき、メイドさんが居たんだけど?」
「ディアナさまです。料理の修業がしたいとおっしゃって、あれが修行服らしいです。」
レイにかわいくにこっと微笑みかけられるとなぜか胸がドキッとなる。
「王女様がここに居ていいのか?」
「はい、王様の許可書を御持参でしたので大丈夫です。」
「そか。」
「はい。」
それじゃぁ俺も修行でもするか。
セリナは只者じゃなかった。
最初は楽にねじ伏せていたのだが。
「ぐぎゃぁ。」
「セリナさんの勝ち!」
なんで、なんでなんだよ。
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峠を一つ越えて入ったのはイーガ盆地。
ここは夜叉たちの里。
もう少し北のコーガにも夜叉の里がある。
夜叉は魔法が巧みな少数種族で、精神支配などの高い耐性があるので番号もちが潜んでいる可能性は少ない。
アインはスランプに入ったらしい。
これはまぁしかたの無いことだ。
俺が渡した木剣は剣筋が鋭くなるほど振りにくく、力が強くなるほど重くなるんだ。
アインのやつ全くそれに気が付かないところが只者じゃない。
ひとりで寡黙に木剣を振り続けている。
最近まともに話もしてないなぁ。
ぼんやり考え事をしながら、牛車を走らせていた手に双流星が現れる。
認識よりも手が動くほうが早い。
これはこれで困ったもんだと思いながら、向こうの空き地で対峙してにらみ合う二人の男とその間に立つひとりの女、そして3人を取り巻く男たち。
よくある愛を賭けての決闘というやつね。
俺は無視して行きたかったんだけど隣にいたソフィアさんが飛び出した。
「私はファラリスの神官です。意味なき決闘ならば私が預かりましょう。意味ある決闘ならば私が見届けましょう。」
やですね、宗教家ってのは。
このへんだけ大神官ゼクリスを友誼を持ちながら影で嫌っていた不死王ゼムに共感できたりする。
決闘の原因を簡単に纏めると,戦うのはイーガの長の長男ベルドとコーガの長の次男ロム。
ベルドの妹ジュリアにロムが結婚を申し込んだところ、もともと仲が悪い両家の間で話がこじれてこの騒ぎになったらしい。
決闘はソフィアさんが見届け人として行われることになった。
やっかいなことだ、神官が見届け人になったからには神に誓って全力で戦わねばならない。
負ける気全開のベルドさんも相手を殺す気で戦わねばならない。
死ななければ神官の治療で元通りにはなるんだけどな。
そして見てる者全てが予想のつく決闘が始まった。




