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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第31話 犬軍団

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(三)シジミの人間

◆ 人気者だねえ


犬たちの飼い主も、ようやく集まってきた。


さきほどまで犬同士で走っていたのに、急に一か所へ集まったため、何があるのか気になったらしい。


「どうしたの?」


「何かいる?」


一人の人間が、柵の外にいるシジミへ気づいた。


「あ、猫ちゃん」


別の人間も言う。


「みんな猫が気になるんだ」


少し違う。


猫だから集まった犬もいる。


だが、最初の犬が友達だと紹介したために集まった犬も多い。


犬たちは今も話している。


「シジミ!」


「入って!」


「友達!」


「匂い嗅がせて!」


「何食べる?」


「どこで寝る?」


「今日何する?」


質問が多い。


人間の子どもに少し似ている。


興味を持った相手へ、思いついたことをすべて聞く。


相手が答えている途中でも、次を聞く。


一匹の飼い主が笑った。


「人気者だねえ」


人気者とは違う。


一匹の犬が知っている名前を大声で広めた結果、集団から一方的に友達認定されたのである。


別の飼い主が、以前会った犬を見て言った。


「知ってる猫ちゃんなの?」


犬はうれしそうに鳴いた。


「友達!」


人間には、ただ大きく吠えたように聞こえたらしい。


「興奮しちゃってるね」


興奮はしている。


だが、理由もはっきりしている。


シジミを見つけた。


名前を覚えていた。


再会した。


ほかの犬へ紹介した。


犬なりに筋は通っている。


飼い主は犬の首輪へ手をかけた。


「猫ちゃん怖がってるから、静かにしようね」


怖がってはいない。


うるさいと思っているだけである。


以前と同じ誤解だ。


猫の近くで犬が吠える。


ならば、猫は怖いはず。


人間は、それ以外を考えない。


◆ 犬の友達は増える


シジミは毛を逆立てていない。


耳も伏せていない。


逃げてもいない。


ただ座り、犬たちを見ている。


それでも、


「怖がってる」


ことになる。


ほかの飼い主も犬たちを呼び戻そうとした。


「ほら、猫ちゃんを囲まないの」


囲んでいるのは事実である。


柵がなければ、本当に周囲へ集まっていたかもしれない。


だが、襲うつもりではない。


犬たちは、シジミへ挨拶している。


遊びへ誘っている。


質問している。


中には、以前の犬が友達と言ったから、何となく来ただけの犬もいる。


一匹が隣の犬へ小さく尋ねた。


「どんな友達?」


「知らない」


「何して遊ぶ?」


「知らない」


「でも友達?」


「そう言ってた」


犬にも、よく分からないまま集まった者がいるらしい。


集団が走れば走る。


集団が止まれば止まる。


誰かが友達と言えば、友達だと思う。


犬は集団の判断を信じる傾向が強い。


猫なら、ほかの猫が知っているからといって、すぐに近づいたりはしない。


まず自分で見る。


匂いを確かめる。


安全か判断する。


必要がなければ近づかない。


犬は違う。


「あいつの友達なら、オレの友達かもしれない」


と考える。


ずいぶん前向きである。


悪く言えば、警戒が足りない。


よく言えば、仲間を増やすのが早い。


一匹の小さな犬が柵の下へ鼻を差し込んだ。


「シジミ」


名前を呼ばれた。


シジミがそちらを見る。


小さな犬の尻尾が激しく動く。


「見た!」


見るくらいはする。


「オレのこと見た!」


見ただけである。


「友達!」


また増えた。


犬の友達になるために必要なことは、ずいぶん少ないらしい。


◆ シジミの人間


名前を呼ぶ。


相手が見る。


それで成立する。


別の犬が言う。


「オレも!」


「シジミ!」


シジミは見なかった。


「見ない」


「もう一回!」


「シジミ!」


まだ見ない。


「聞こえてない?」


聞こえている。


反応しないだけである。


犬は無視されている可能性をあまり考えない。


聞こえなかった。


気づいていない。


もう一度呼べばよい。


実に強い。


人間なら、一度返事をされなかっただけで、


嫌われた。


怒っている。


何か悪いことをした。


そのように考えることがある。


犬は違う。


返事がない。


ならば、もっと大きな声で呼ぶ。


「シジミ!」


うるさい。


シジミがそちらを見ると、犬は満足した。


「見た! 友達!」


どうしても友達にされるらしい。


そのとき、道の向こうから、うちの人間が歩いてきた。


シジミがいつもの道にいないため、探しに来たのかもしれない。


犬たちが一か所へ集まっているのを見て、足を速める。


「シジミ?」


うちの人間が名前を呼ぶ。


犬たちが一斉に反応した。


「シジミ!」


「名前言った!」


「シジミの人間!」


「友達の人間!」


今度は、うちの人間まで友達の関係へ入れられた。



※第31話「犬軍団」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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