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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第30話 謎のひな

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(三)見たいのを我慢する

◆ 仮の巣


うちの人間は近くの家へ戻り、小さな箱を持ってきた。


底には穴を開けた。


中へ乾いた草と、柔らかな紙を少し入れる。


雨が入りにくい。


直射日光が当たり続けない。


下から簡単に見えない。


上空からも目立ちにくい。


それでいて、親鳥が出入りできる。


そのような位置を探す。


候補はいくつかあった。


低い枝は、猫や犬が届きやすい。


葉のない枝は、カラスから見える。


奥へ入りすぎると、親鳥がひなを見つけにくいかもしれない。


うちの人間は、木の周囲を何度も見た。


「この辺かな」


今度は、すぐに決めつけなかった。


上を見る。


下を見る。


道から見えるか確かめる。


少し離れて見直す。


やればできるらしい。


最終的に、葉の多い木の枝へ仮の巣を固定した。


地面からは少し高い。


人間なら手を伸ばせば届く。


猫が簡単に跳びつける高さではない。


上には葉が重なっている。


下からも中が見えにくい。


悪くない。


うちの人間は薄い布を使い、ひなをそっと持ち上げた。


ひなが小さく鳴く。


「親」


「怖い」


うちの人間は、できるだけ揺らさないように仮の巣へ移した。


「大丈夫だからね」


大丈夫かどうかは、まだ分からない。


親鳥が見つける。


戻ってくる。


食事を与える。


そこまで確認できて、ようやく少し安心できる。


◆ 離れて待つ


うちの人間は仮の巣の中をのぞいた。


「これでいいかな」


近すぎる。


親がいるなら、その顔を見ているかもしれない。


大きな人間が巣の前へ立っている。


しかも猫まで近くにいる。


これでは戻れない。


シジミは少し離れた塀へ移った。


うちの人間も気づいたらしい。


「私たちも離れないと」


そのとおりである。


二人は、木から距離を取った。


近くの家の陰。


仮の巣を直接のぞき込まない位置。


ただし、親鳥が戻ったかどうかは少し確認できる。


うちの人間は、じっと木を見ていた。


一分。


二分。


三分。


「来ないなあ」


早すぎる。


親鳥にも警戒がある。


さきほどまで人間がひなを触っていた。


猫もいた。


すぐに安全だと判断するとは限らない。


周囲を何度も確認する。


人間が本当に離れたか見る。


猫が隠れていないか見る。


そのうえで近づく。


待つ必要がある。


うちの人間は、少し体を前へ出した。


「ちょっと見てこようかな」


駄目である。


見に行けば、また最初からになる。


人間は、見守ることが苦手だ。


何かをしていなければ不安になる。


触る。


動かす。


のぞく。


声をかける。


助けようとする。


だが、何もしないことが一番よい場面もある。


離れる。


静かにする。


親へ任せる。


それも行動である。


うちの人間は、どうにかその場へ留まった。


「ちゃんと来るかな」


分からない。


だが、来る可能性を残すために離れている。


今できることは、それだけだ。


◆ 親かもしれない


しばらくすると、近くの屋根へ一羽の鳥が止まった。


小さい。


茶色がかっている。


くちばしに何かをくわえている。


うちの人間が息を止めた。


「あれ、親かな」


可能性は高い。


だが、まだ分からない。


鳥は屋根の上から、仮の巣がある木を見ている。


すぐには近づかない。


周囲を見る。


道を見る。


うちの人間が隠れている場所も見る。


シジミがいる塀の方向も見る。


シジミは顔をそむけた。


そちらへ近づく気がないことを示す。


鳥はしばらく動かなかった。


うちの人間も動かない。


珍しく、正しい。


◆ 親が来た


鳥は屋根から飛び立った。


木の高い枝へ移る。


そこでまた止まる。


ひなが小さく鳴いた。


「親」


鳥の体が動いた。


声を聞いたらしい。


一段低い枝へ降りる。


さらに仮の巣の近くへ移る。


うちの人間が小声で言った。


「来た」


鳥は仮の巣の縁へ止まった。


中をのぞく。


ひなが口を開ける。


親鳥は、くちばしにくわえていたものを、ひなの口へ入れた。


「飯!」


「いた」


「ここにいた」


「次も持ってくる」


親である。


どうやら、ひなの場所を見つけたらしい。


うちの人間の肩から力が抜けた。


「よかった……」


それはシジミも同意する。


親が戻った。


食事を与えた。


少なくとも、今後も世話を続ける可能性は高い。


家へ連れて帰らなくてよかった。


もし持ち帰っていれば、親鳥はひなを見つけられなかった。


ひなも親から食事をもらえなかった。


人間は、助けたつもりで親子を引き離すところだった。


◆ 見たいのを我慢する


親鳥は、すぐにまた飛び去った。


次の食事を探しに行ったのだろう。


うちの人間は、仮の巣へ近づこうとした。


だが、途中で止まった。


「また戻ってくるから、行かないほうがいいよね」


ようやく理解したらしい。


見たい。


近くで確認したい。


写真を撮りたい。


だが、それを我慢する。


今回は少し成長した。



※第30話「謎のひな」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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