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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第27話 メジロとウグイス

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(三)見た目はこっちがウグイスっぽい

◆ 声はウグイス、姿はメジロ


シジミは庭の茂みへ耳を向けた。


少し離れた場所から、別の鳥の声が聞こえた。


春先から何度か聞いている。


「オレ、イケてる」


「ここ、オレの場所」


「聞こえてる?」


ウグイスである。


姿は見えない。


葉の重なった奥にいる。


人間がよく知る鳴き方で、自分の存在を主張している。


うちの人間も気づいた。


「あ、ホーホケキョ」


人間には、そう聞こえるらしい。


うちの人間は庭を見回した。


「ウグイス、どこ?」


声は聞こえる。


だが、姿は見つけられない。


ウグイスは、茂みの中にいる。


目立たない色で、枝や葉の影へ紛れている。


一方、メジロは果物の上にいる。


明るい緑色の体が見える。


白い目の周りも見える。


人間は声を聞くとウグイスだと分かる。


だが、姿を見つけられない。


そのすぐ近くにいる緑のメジロを見て、ウグイスだと思う。


声はウグイス。


姿はメジロ。


人間の頭の中では、その二つが一羽の鳥になっているらしい。


ウグイスが鳴く。


緑の鳥が飛ぶ。


人間は、緑の鳥が鳴いたと思う。


実際には別である。


うちの人間は、茂みの声を聞きながら、果物を食べているメジロを見た。


「もしかして、あのメジロが鳴いてる?」


違う。


メジロの一羽も、声の方向を見た。


「またウグイス」


もう一羽が答える。


「さっきオレたちが間違えられた」


「迷惑だな」


「向こうも迷惑じゃない?」


そのとおりである。


メジロはウグイスと呼ばれる。


ウグイスは実物を見られたとき、思っていたより地味だと言われる。


どちらにも利点がない。


◆ 全然違うんだ


うちの人間はしばらく庭を見回した。


だが、本物のウグイスは見つけられなかった。


「声はするのになあ」


声が聞こえることと、姿が見えることは別である。


姿が見えないからといって、目の前の別の鳥をウグイスにしてよいわけではない。


うちの人間は、もう一度絵の光る板を見た。


メジロの写真。


ウグイスの写真。


二つを見比べる。


「全然違うんだ」


最初から違う。


「メジロのほうが、ウグイス色っぽい」


その色の名前にこだわるから、話がややこしくなる。


ウグイス色という名前があっても、ウグイスが必ず人間の考えるウグイス色をしているとは限らない。


人間は、空の色を空色と呼ぶ。


だが、空はいつでも同じ色ではない。


海の色も一つではない。


桜色と呼ばれる色も、すべての桜が同じではない。


名前は、人間が大まかに決めた印である。


本物を縛るものではない。


だが、人間は自分たちがつけた名前へ、現実を合わせようとする。


うちの人間は、今度こそ理解したようにうなずいた。


「次からは間違えない」


本当だろうか。


メジロたちは果物を食べ終えた。


一羽が枝から飛び立つ。


もう一羽も続く。


二羽は家の上を回り、近くの木へ移った。


うちの人間が手を振る。


「また来てね、メジロ」


今度は合っている。


少し成長したらしい。


◆ 次からは間違えない


翌日。


うちの人間は、また庭の木へ果物を置いた。


しばらくすると、小さな緑色の鳥が飛んできた。


白い目の周り。


昨日と同じメジロである。


うちの人間は窓へ近づいた。


「あ、また来た」


少し間を置く。


「えっと……ウグイスじゃなくて……」


名前が出てこないらしい。


昨日、あれほど調べた。


目の周りが白いからメジロ。


分かりやすい名前である。


それでも、うちの人間は少し考えた。


「メ……メジロ!」


どうにか思い出した。


メジロは果物をつつく。


「人間、今日は合ってる」


「昨日教えられたから」


「明日は?」


「知らない」


うちの人間は満足そうだった。


「ちゃんと覚えたよ」


誰へ言っているのだろう。


◆ 見た目はこっちがウグイスっぽい


そのとき、庭の茂みからウグイスの声が聞こえた。


うちの人間はすぐにそちらを見た。


だが、やはり姿は見えない。


代わりに、果物の上のメジロが目に入る。


うちの人間の視線が、声のする茂みとメジロの間を行き来した。


そして、小さくつぶやいた。


「でも、やっぱり見た目はこっちがウグイスっぽいんだよなあ」


何も覚えていない。


名前は覚えた。


違う鳥だということも知った。


だが、自分の中にあるウグイスの姿は変えられないらしい。


知識が増えても、印象がそのままなら、同じところへ戻る。


メジロはメジロである。


ウグイスはウグイスである。


人間が作ったウグイス色に、どちらを当てはめるかなど、鳥には関係ない。


シジミは猫語でつぶやく。


「本当に人間ってあさはかな生き物だよね」



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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