(六)分からないままにはできない
◆ 親も他人も同じ反応
朝食軍団のスズメは、急いで欠片を飲み込んだ。
子スズメたちは目の前で止まる。
「なくなった」
「食べた」
「食べたからな!」
「次!」
「もうない!」
庭に残ったスズメたちは、それを見ていた。
一羽が言う。
「早く食べないから追われるんだ」
追われたスズメが答える。
「口を開けたまま来ると食べにくいんだ!」
「気にせず食べればいい」
「じゃあ次はお前がやれ」
「嫌だ」
全員、自分が食事を与える役にはなりたくないらしい。
だが、子スズメに迫られれば渡す。
うちの人間は、その様子を最後まで親子の団らんだと思っていた。
「親がちゃんと食べさせてあげてる」
親ではない。
「子どもも甘えてるね」
甘えてはいる。
相手を間違えているが。
「やっぱり家族って分かるんだねえ」
分かっていない。
分かっていないから、他人へ同じ仕草をしている。
むしろ、今日の様子から分かるのは、子スズメが親を完全には区別できていないということである。
あるいは、区別していても、食事を持つ大人なら誰でもよいと思っている。
どちらにしても、うちの人間の感想とは反対だった。
食事がなくなると、朝食軍団は少しずつ飛び去った。
子スズメが一羽、そのあとを追おうとする。
本当の親スズメが呼び止める。
「そっちは違う!」
子スズメは空中で少し向きを変え、親のいる木へ移った。
朝食軍団のスズメが遠くから言う。
「ちゃんと見てろ!」
親スズメが言い返す。
「お前たちが余計な食事をやるからだ!」
「こっちはねだられたんだ!」
「断れ!」
「お前の子はしつこい!」
子スズメが親へ向かって口を開ける。
「飯!」
親スズメは地面から拾った一粒をくわえていた。
少し間を置いたあと、子の口へ入れる。
「次から自分で取れ」
朝食軍団の一羽が遠くから鳴いた。
「お前もやってるじゃないか!」
親スズメは返事をしなかった。
親も他人も、結局は同じ反応をしている。
口を開けられる。
羽を震わせられる。
食事を求められる。
すると、与えてしまう。
違うのは、与えたあとの気持ちくらいである。
親は仕方がないと思う。
他人は迷惑だと思う。
子スズメは、どちらでも食べられればよい。
実に分かりやすい。
◆ 分からないままにはできない
うちの人間は、飛び去っていく親子を見ながら言った。
「仲良し親子、また明日も来るかな」
来るだろう。
だが、親子だけではない。
朝食軍団も来る。
子スズメはまた、親ではない相手へ食事をねだる。
他人スズメは困る。
断る。
しつこく迫られる。
最後には食事を与える。
そして、うちの人間はそれを見て、
「親子スズメ、仲良しだね」
と言う。
見分けられないなら、せめて断定しなければよい。
だが、人間は分からないものを見ると、分からないままにはしておけないらしい。
大きい鳥と小さい鳥。
食事を渡す。
ならば親子。
小さい鳥が口を開ける。
ならば甘えている。
大きい鳥が食事を入れる。
ならば愛情。
実際に何が起きているかより、自分が知っている分かりやすい形へ当てはめる。
そのほうが、見ていて気持ちがよいのだろう。
他人のスズメが嫌々食事を渡しているとは、考えない。
断りきれずに、自分の朝食を失っているとも考えない。
鳥の世界にも、しつこく頼まれて断れない者がいる。
子の側も、それを見抜いているのかもしれない。
うちの人間は温かい飲み物を手に、静かになった庭を眺めていた。
「朝からいいもの見たなあ」
朝食軍団の一部は、自分の食事を知らない子へ取られた。
親スズメは、自分の子が他人についていかないよう追いかけた。
子スズメは、誰が親なのか少し混乱した。
それを、うちの人間は仲のよい親子の朝食として見ていた。
シジミは猫語でつぶやく。
「本当に人間ってあさはかな生き物だよね」
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