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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第26話 巣立ちびな合流

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(二)じゃあ鳴く

◆ 自分で取れ


子スズメは、食事がどこから来るのかをまだ完全には理解していない。


巣にいたころは、口を開ければ親が運んできた。


大きく鳴く。


羽を震わせる。


口を開ける。


それだけで、食事が入ってきた。


外へ出れば、自分で探さなければならない。


だが、長く続けてきた習慣は、すぐには消えない。


親の姿を見ると、子スズメは反射的に体を低くする。


羽を細かく震わせる。


口を開ける。


「飯!」


親は、


「自分で取れ」


と言いながらも、食べ物をくわえていれば、つい口へ入れてしまう。


子が口を開ける。


親が食事を入れる。


巣の中で何度も繰り返した動きである。


外へ出たからといって、親の側も急には切り替えられないらしい。


しばらくは、教えながら与える。


与えながら、自分で取らせる。


その繰り返しになる。


ただし、朝だけは事情が少し違っていた。


◆ 朝だけは事情が違う


うちの人間が庭へ食事をまくからである。


巣立った子スズメたちが、自分で食事を探すようになったころ。


親スズメは、子たちを庭の近くまで連れてきた。


ここには、決まった時間に食べ物が出る。


本来なら、食事の探し方を覚える場所としては、あまりよくない。


鳴けば人間が出す。


地面へ降りれば、すでに食べ物がある。


探す必要がない。


だが、巣立ったばかりの子へ食事を取らせるには、簡単で安全である。


親スズメとしても、まったく使わない理由はなかった。


そして、庭にはすでに先客がいた。


朝食を狙うスズメ軍団である。


以前から毎朝やってくる。


うちの人間が眠っていれば、寝床に近い窓の前で騒ぐ。


「飯!」


「はよう飯!」


「起きろ!」


鳴けば食事が出ることを知っている。


カラスが子育てしていたころも来た。


危険だと分かっていながら来た。


スズメ夫婦が屋根で子育てしていたころには、巣の前で騒ぐなと追い払われかけても来た。


食事に対する執着は強い。


その朝食軍団へ、巣立った子スズメと親スズメが合流した。


当然、さらに騒がしくなった。


◆ 自分の理由だけは特別


朝。


いつもの木に、朝食軍団が集まる。


「飯!」


「まだか!」


「人間寝てる!」


「もっと鳴け!」


そこへ、親スズメが子を連れてくる。


「離れるな」


「この木で待て」


「地面へ降りる前に周りを見ろ」


子スズメは周囲を見回した。


同じような姿のスズメが、たくさんいる。


「みんな親?」


「違う」


「家族?」


「違う」


「じゃあ何?」


「朝飯を食べに来た連中」


朝食軍団の一羽が聞きつける。


「連中とは何だ」


親スズメが答える。


「巣の前で騒いでいた連中だろ」


「もう巣立ったんだからいいだろ」


「よくない」


「何が?」


「朝からうるさい」


「人間を起こさないと飯が出ない」


「自分で探せ」


「お前も来てるじゃないか」


親スズメは少し黙った。


今は自分も、うちの人間がまく食事を利用しようとしている。


そこを言われると弱い。


「子に取らせる練習だ」


「同じだろ」


「違う」


「何が?」


「子育て」


「腹に入れば同じだ」


以前にも聞いたような話である。


立場が変われば、同じ行動にも別の理由をつける。


朝食軍団は、楽に食事を得るために来た。


親スズメは、子へ食事を取らせるために来た。


庭へ来て食べるという点では同じである。


だが、親スズメは自分たちのほうが正しいと思っている。


人間にもよくある。


自分が買うものは必要なもの。


他人が買うものは無駄遣い。


自分が遅れるのは事情があった。


他人が遅れるのは時間にだらしない。


自分が楽をするのは効率化。


他人が楽をするのは怠け。


行動が同じでも、自分の理由だけは特別だと思う。


◆ じゃあ鳴く


やがて、うちの人間が起きた。


窓の布が動く。


スズメたちが一斉に騒ぐ。


「起きた!」


「飯!」


「はよう!」


子スズメも周りにつられて鳴いた。


「飯!」


親スズメが言う。


「お前はまだ静かにしていろ」


「みんな鳴いてる」


「お前まで鳴く必要はない」


「鳴いたら飯が出るんでしょ?」


「そうだが」


「じゃあ鳴く」


子スズメはさらに大きく鳴いた。


「飯!」



※第26話「巣立ちびな合流」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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