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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第26話 巣立ちびな合流

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(一)教える側も大変

◆ 地面の遠さ


屋根の隙間で育っていたスズメのひなたちも、とうとう巣の外へ出られるようになった。


最初に出てきた一羽は、屋根の端で長いこと動かなかった。


羽はもう生えそろっている。


体の大きさも、親と極端には変わらない。


だが、立ち方が少し頼りない。


足元を見る。


地面を見る。


隣の屋根を見る。


親を見る。


そして、また足元を見る。


親スズメが、少し離れた場所から鳴いた。


「こっち!」


子スズメは羽を少し広げた。


すぐに閉じる。


「無理」


「飛べる!」


「落ちる」


「落ちる前に羽を動かせ!」


「どうやって?」


「こう!」


親が一度飛んでみせる。


屋根から離れ、近くの木へ移る。


子スズメはその姿を見送った。


自分の羽を見る。


もう一度、下を見る。


「高い」


巣の中にいたころは、外へ出たがっていた。


入口の近くまで来て、親が飛び立つたびに騒いでいた。


だが、実際に外へ出ると、話は違うらしい。


外は広い。


地面は遠い。


風もある。


巣の中から見ていた景色と、自分の足で立って見る景色は同じではない。


人間にもよくある。


自分でやりたい。


一人でできる。


早く自由になりたい。


そう言っていた者が、いざ自分で決めることになると、


「どうすればいい?」


と周囲を見る。


自由には、選ぶ必要がある。


失敗しても、自分で立て直さなければならない。


巣の中から外を見るだけなら、自由は楽しそうに見える。


実際に外へ出れば、地面の遠さまで分かる。


◆ 自分で飛んだ


親スズメが、もう一度呼んだ。


「早く!」


子スズメは羽を広げた。


今度は閉じなかった。


屋根を蹴る。


一瞬、体が下へ落ちる。


慌てて羽を動かす。


まっすぐではない。


少し右へ傾く。


また左へ傾く。


それでも、地面には落ちなかった。


近くの木へ向かい、親より少し低い枝へ着地した。


枝が大きく揺れる。


子スズメは足へ力を入れ、どうにか止まった。


「飛べた!」


親が答える。


「最初から飛べると言っただろ」


子スズメは胸を張った。


「自分で飛んだ!」


先ほどまで無理だと言っていたことは、もう忘れたらしい。


そのあと、ほかの子スズメも順番に巣から出た。


一羽は迷わず飛んだ。


一羽は入口から顔だけ出し、ほかの者が全員出たあとも動かなかった。


一羽は飛び出す方向を間違え、親とは反対側の屋根へ着地した。


親スズメたちは、何度も呼びかけていた。


「こっち!」


「そっちじゃない!」


「低い枝へ行け!」


「壁に近づくな!」


「猫がいるかもしれない!」


最後の言葉を聞き、シジミは窓辺から少し離れた。


何もするつもりはない。


だが、巣立ったばかりの子を連れている親へ、猫が敵意のないことを説明するのは難しい。


子スズメたちは、まだ飛び方も逃げ方も不安定である。


親が神経質になるのは当然だった。


シジミは屋根の下へ行かない。


子スズメの進む方向へ回り込まない。


窓辺から静かに見るだけにする。


相手が警戒しているときは、距離を取る。


それで大抵の問題は避けられる。


うちの人間にも教えてやりたいところである。


うちの人間は、窓に顔を近づけていた。


「出てきた。かわいい」


近い。


窓の内側なので直接危害を加えるわけではないが、親スズメから見れば大きな顔がこちらを見ている。


親スズメがすぐに鳴いた。


「見られてる!」


「子を隠せ!」


子スズメたちが枝の奥へ移る。


うちの人間は残念そうに言った。


「あ、隠れちゃった」


隠れさせたのは、うちの人間である。


◆ 教える側も大変


しばらくすると、親子のスズメは少しずつ家から離れるようになった。


巣立ったからといって、すぐに親から離れるわけではない。


最初のうちは、親と一緒に動く。


安全な木。


休める場所。


危険な道。


水のある場所。


そして、食事の取り方を教えてもらう。


親が地面へ降りる。


草の間を見る。


何かをついばむ。


子スズメがあとから同じ場所を見る。


だが、何を探せばよいのか分からない。


とりあえず小石をつつく。


食べられない。


枯れた葉を引っ張る。


重い。


細い枝をくわえる。


違う。


親が近くで虫を見つける。


「これ」


子スズメが近づく。


「飯!」


「自分で取れ」


「取って」


「今見せた」


「口に入れて」


「自分で食べろ」


親が虫を落とす。


子スズメは少し迷ったあと、自分でついばんだ。


「食べられた!」


「そうやって探す」


「次も取って」


「自分で探せ」


教える側も大変である。



※第26話「巣立ちびな合流」は全六回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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