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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第25話 今度はスズメの巣

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(三)同じスズメだろ

◆ どちらにも理由がある


屋根の親スズメが鳴く。


「静かにしろ!」


庭のスズメ軍団が鳴き返す。


「飯が出たら静かになる!」


「出るまで騒ぐな!」


「出るまで騒がないと、飯が出ない!」


筋は通っている。


困ったことに、どちらの主張にも理由がある。


子育て中だから、巣の近くを静かにしてほしい。


朝食が欲しいから、人間を起こしたい。


親スズメは、ひなの安全を優先する。


スズメ軍団は、自分たちの腹を優先する。


同じ種類でも、立場が違えば望むことも違う。


庭の一羽が言った。


「お前たちも食べればいいだろ」


親スズメが怒る。


「ひなの食事を探しに行くんだ!」


「庭のを持っていけば?」


「人間がまくものばかり食べさせられるか!」


「腹に入れば同じだろ」


「同じじゃない!」


子を育てる親には、食事の内容にも考えがあるらしい。


庭のスズメたちは、自分が食べられればよい。


巣の親は、ひなへ何を与えるかまで考える。


同じ食事でも、目的が違う。


さらに別のスズメが言った。


「じゃあ、お前たちは食べなくていいから、オレたちに食わせろ」


「だから、巣の前で騒ぐな!」


話が元に戻った。


◆ 面倒だ


スズメ軍団は、少し鳴く声を落とした。


「飯」


小さい。


うちの人間は起きない。


もう少し大きくする。


「飯!」


親スズメがすぐに怒る。


「うるさい!」


スズメ軍団の一羽が不満そうに言う。


「これじゃ人間が起きない」


「起こすな!」


「朝飯が出ない!」


「別の場所で探せ!」


「面倒だ!」


それが本音だった。


食事はほかでも探せる。


だが、この庭なら、うちの人間がまく。


虫を探す必要もない。


草の種を見つける必要もない。


危険を冒して道へ降りる必要もない。


ただ鳴いて待てばよい。


一度楽な方法を覚えると、手放すのは難しい。


スズメ夫婦が子育て中かどうかより、自分たちの朝食のほうが重要である。


◆ 場所と権利


親スズメが、巣の入口から飛び出した。


庭の木へ降りる。


スズメ軍団の近くへ止まった。


「ここで騒ぐな!」


一羽が言い返す。


「ここはお前の庭じゃない!」


「うちの巣がある!」


「巣は屋根だろ!」


「屋根の下も近い!」


「食事は庭だ!」


「声は屋根まで聞こえる!」


「鳥なんだから聞こえるだろ!」


激突である。


人間から見れば、同じようなスズメが枝に集まって鳴いているだけだろう。


だが、話している内容は穏やかではない。


静かにしろ。


食事を出させろ。


巣へ近づくな。


庭はお前のものではない。


先に来ていた。


後から住んだ。


朝から、場所と権利をめぐって争っている。


◆ 平和だなあ


そこへ、うちの人間が起きてきた。


寝床に近い窓の布が動く。


スズメ軍団が一斉に反応する。


「起きた!」


「飯!」


「もっと鳴け!」


親スズメが叫ぶ。


「騒ぐな!」


結果として、全員の声が大きくなった。


うちの人間が窓を開ける。


栗色の髪を片手で整えながら、庭を見た。


木の枝。


塀の上。


屋根の端。


何羽ものスズメが集まっている。


「今日もたくさん来てる」


庭のスズメ軍団が鳴く。


「飯!」


親スズメが鳴く。


「巣の前で騒ぐな!」


別の一羽が鳴く。


「早く飯!」


もう一羽が鳴く。


「帰れ!」


うちの人間は、その声を聞きながら笑った。


「平和だなあ」


どこがだろう。


朝食を求める集団と、子を守る夫婦が争っている。


同じ種類であることは、何の助けにもなっていない。


むしろ、互いの言葉がよく分かるため、言い争いがはっきりしている。


◆ 同じスズメだろ


うちの人間は柔らかな上着を羽織り、庭へ食事を持ってきた。


窓を開ける。


親スズメが警戒して屋根へ戻る。


「人間が出た!」


「巣を見るな!」


スズメ軍団は喜ぶ。


「飯だ!」


「降りろ!」


「早く!」


うちの人間が食事をまく。


庭へ一斉にスズメが降りた。


食事をついばむ。


取り合う。


押しのける。


追いかける。


親スズメは屋根から、その様子を見ている。


「早く食べて帰れ!」


庭の一羽が答える。


「今食べてる!」


「騒ぐな!」


「取るな!」


「それはオレのだ!」


「そっちの話じゃない!」


巣の親の警告と、庭の食事争いが混ざっている。


誰が誰へ何を言っているのか、分からなくなりそうである。


一羽が大きな欠片をくわえた。


巣のある屋根へ近い場所へ飛ぶ。


親スズメがすぐに追いかける。


「こっちへ来るな!」


「食べる場所を変えただけだ!」


「巣に近い!」


「同じスズメだろ!」


「だから安心とは限らない!」



※第25話「今度はスズメの巣」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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