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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第25話 今度はスズメの巣

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(二)超優良中古物件にも欠点

◆ 今度はスズメが巣を作ってる


だが、うちの人間はとっくに気づいていた。


「今度はスズメが巣を作ってる」


少し楽しそうだった。


ムクドリが屋根へ巣を作ったときには、


「思ったよりうるさい」


「家を出るたび威嚇される」


「早く巣立って」


と何度も言っていた。


それでも別の鳥が同じ場所へ巣を作り始めれば、また喜ぶ。


前回の経験から、何も学んでいないのだろうか。


あるいは、ムクドリとスズメは違うと思っているのかもしれない。


たしかに違う。


ムクドリは、


「ギャー!」


と鳴く。


スズメは、人間の耳には、


「チュンチュン」


と聞こえる。


声だけなら、スズメのほうが穏やかである。


だが、内容まで穏やかとは限らない。


◆ ひなが生まれた


やがて、巣の中から小さな声が聞こえるようになった。


ひなが生まれたらしい。


親が戻ってくると、声が一斉に大きくなる。


「飯!」


「こっち!」


「先に!」


「腹減った!」


どの鳥の子も、食事については遠慮しない。


親が何かをくわえて帰ってくる。


入口へ止まる。


中へ入る。


ひなが騒ぐ。


食事を渡す。


また飛んでいく。


その繰り返しである。


スズメ夫婦は忙しくなった。


巣を作っていたころより、さらに周囲へ神経を使う。


食事を探しに行く。


巣へ戻る。


入口へ近づく前に、周囲を見る。


危険がいないか確かめる。


そして、すばやく中へ入る。


シジミは、なるべく屋根の近くへ行かないようにしていた。


スズメのひなを狙うつもりはない。


だが、親にそのつもりがないと理解させるのは難しい。


猫である。


小さな鳥を捕まえることもある。


巣の近くにいるだけで、警戒されるには十分だった。


だから距離を取る。


相手が神経質な時期に、わざわざ近づく理由はない。


◆ お前もスズメだろ


しかし、すべてのスズメが同じように配慮するわけではなかった。


毎朝、庭へ食事を求めに来るスズメ軍団である。


うちの人間は、相変わらず庭へ食事をまいている。


カラスが子育てをしていたころも来た。


危険だと分かっていながら、朝食を諦めなかった。


ムクドリが屋根へ巣を作っていたころも来た。


そして今度は、同じスズメが子育てをしている。


同じ種類なのだから、少しは事情を理解し合えるのかと思った。


だが、そうではなかった。


朝。


まだうちの人間が起きていない時間に、いつものスズメたちが庭へ集まった。


低い木。


塀。


窓の近く。


それぞれ、いつもの位置へ止まる。


そして、一羽が鳴いた。


「飯!」


別の一羽も続く。


「はよう飯!」


「起きろ!」


「腹減った!」


いつもどおりである。


屋根の巣では、親スズメが動いた。


入口から顔を出す。


庭を見る。


何羽も集まっている。


大声で鳴いている。


一羽の親スズメが、低い声で言った。


「何だ、あいつら」


もう一羽も入口から周囲を確かめる。


「いつも朝飯を食べに来る連中」


「うちの前で?」


「前から来てる」


「今も?」


「今も」


庭のスズメ軍団は、さらに騒ぐ。


「飯!」


「まだか!」


「寝てるぞ!」


「もっと鳴け!」


親スズメの体が少し膨らんだ。


「こら! うちの前で騒ぐな!」


庭のスズメたちが一瞬黙る。


巣の親が続ける。


「こっちは子育て中なんだ!」


庭の一羽が屋根を見上げた。


「お前もスズメだろ」


「だから何だ!」


「仲間じゃないか」


「仲間なら静かにしろ!」


◆ 後から作ったんだろ


そのとおりである。


同じ種類だからといって、無条件に歓迎されるわけではない。


巣の近くへ集団が来る。


大声で鳴く。


動き回る。


それだけで、親スズメには迷惑なのだろう。


騒ぎを聞きつけて、カラスや猫が来るかもしれない。


人間が窓を開けるかもしれない。


巣の場所に気づかれるかもしれない。


子育て中の親から見れば、仲間がいる安心より、巣の近くで騒がれる危険のほうが大きい。


だが、朝食を狙うスズメ軍団には、別の事情がある。


ここで鳴かなければ、うちの人間が起きない。


うちの人間が起きなければ、食事が出ない。


食事が出なければ、朝食を食べられない。


一羽が親スズメへ言った。


「人間を起こしてるんだ」


「別の場所で起こせ!」


「ここで鳴くと早い」


「巣の前だ!」


「それはお前たちが後から作ったんだろ」


正しい。


スズメ軍団は、ムクドリが巣を作るより前から庭へ来ていた。


うちの人間を起こし、食事を要求していた。


その習慣がある場所へ、スズメ夫婦が移ってきた。


家の屋根が優良中古物件でも、周囲が静かな住宅地とは限らない。


物件だけでなく、近隣の状況も確認するべきだった。


スズメ夫婦は、カラスがいないことを確かめた。


ムクドリがいないことも確かめた。


以前のひなが無事に巣立ったことも確認した。


だが、毎朝ここへ食事を求めて来る集団までは、調べていなかったらしい。


◆ 超優良中古物件にも欠点


人間の家選びでも、建物だけを見て決めたあとで困ることがある。


駅が近い。


部屋が広い。


日当たりがよい。


だが、朝から騒がしい。


隣がうるさい。


人の出入りが多い。


住み始めてから、初めて気づく。


超優良中古物件にも、欠点はある。



※第25話「今度はスズメの巣」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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