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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第25話 今度はスズメの巣

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(一)気づかれていないか

◆ 予想どおり次が来た


カラスのひなが巣立った。


ムクドリのひなも巣立った。


巣を守るカラスに警戒されることもなくなった。


早朝から屋根の上で、


「ギャー!」


と鳴かれることもなくなった。


これで本当に平和になるのだろうか。


シジミは、そう思っていた。


カラスがいなくなったときも、同じことを思った。


その直後に、ムクドリが家の屋根へ巣を作った。


ならば、ムクドリがいなくなったあとにも、何かが来る可能性はある。


空いた場所は、空いたままとは限らない。


安全だった場所。


雨を避けられる場所。


実際にひなが育ち、巣立った場所。


そういう場所を見つければ、別の鳥が使おうとすることもある。


数日後。


予想どおり、次が来た。


スズメである。


◆ 超優良中古物件


朝、シジミが窓辺で外を見ていると、一羽のスズメが屋根の端へ止まった。


見覚えのある屋根の隙間を、離れた場所から眺めている。


すぐには近づかない。


首を細かく動かす。


周囲を見る。


カラスはいない。


ムクドリもいない。


人間が外へ出てくる気配もない。


それを確かめてから、少しずつ隙間へ近づいた。


入口の手前で止まる。


中をのぞく。


すぐに離れる。


また周囲を見る。


それから、もう一羽が飛んできた。


最初の一羽よりも、さらに慎重だった。


屋根へ直接は降りない。


近くの木へ止まる。


電線へ移る。


家の周りを一度飛ぶ。


ようやく、最初の一羽の隣へ降りた。


二羽は小さな声で話し始めた。


「ここ、いいかも」


「前、カラスが近くにいた」


「もういない」


「本当に?」


「最近、見ない」


「ムクドリもいた」


「それもいなくなったみたい」


「ちゃんと巣立った?」


「ちゃんと巣立ったっぽい」


二羽は、屋根の隙間を見た。


「じゃあ、超優良中古物件!」


「巣立ち実績あり!」


なるほど。


そういう評価になるのか。


人間が家を選ぶときも、似たようなことを気にする。


雨が入らない。


風が強くない。


危険が少ない。


暮らしやすい。


そして、以前そこへ住んでいた者が無事に暮らせていたか。


鳥にとっても同じらしい。


すでに一度、ムクドリのひなが育った。


親鳥が食事を運んだ。


ひなは巣立った。


少なくとも、子育ての途中で巣が壊れたり、外敵に襲われたりはしていない。


実績がある。


スズメ夫婦から見れば、十分に魅力的な場所なのだろう。


◆ リノベーション


ただし、ムクドリが使っていた巣を、そのまま使うわけではなかった。


厳密には、少し違う。


スズメ夫婦は、巣の中へ大量の藁を運び始めた。


細い枯れ草。


柔らかそうな葉。


どこかから拾ってきた糸。


小さな羽。


人間が落としたらしい紙の切れ端まで運んでくる。


すでにある巣材を利用しながら、自分たちが使いやすい形へ整えている。


人間風に言えば、改装である。


リフォーム。


あるいは、リノベーション。


二つの違いは知らない。


うちの人間も、絵の光る板で家の話を見るたびに使い分けているが、たまに自分でも混乱している。


古いものを直すのがリフォーム。


価値まで変えるのがリノベーション。


以前、そのような説明を読んでいた。


ならば、ムクドリの巣をスズメ向けに作り変えているのだから、リノベーションなのかもしれない。


だが、巣の入口へ藁を詰めすぎて、何度か外へ落としている。


価値が上がっているのかは分からない。


一羽が藁を運ぶ。


もう一羽が中で受け取る。


形を整える。


少しすると、入れたばかりの藁が外へ落ちる。


外にいた一羽が、それを見る。


「落ちた」


中から声がする。


「形が悪かった」


「さっき運んだばかり」


「だから?」


「また運ぶの?」


「また運んで」


人間の家づくりにも、似たようなことがあるのかもしれない。


一度作る。


気に入らない。


壊す。


また作る。


完成に近づいているようで、同じところを何度も直す。


それでも数日すると、巣はスズメ夫婦のものらしい形になっていった。


入口の近くまで藁が増えた。


内側には柔らかいものが集められている。


外からは奥が見えにくくなった。


◆ 気づかれていないか


スズメは警戒心が強い。


庭へ食事を食べに来るスズメたちも、すぐ地面へは降りない。


まず木に止まる。


次に周囲を見る。


シジミがいないか。


カラスがいないか。


人間が近くにいないか。


逃げ道があるか。


それを確かめてから降りる。


食事をついばんでいるあいだも、何度も顔を上げる。


一粒食べる。


見る。


もう一粒食べる。


また見る。


何かが動けば、一斉に飛ぶ。


そのスズメが、子を育てる場所を選ぶのである。


慎重になるのも当然だった。


スズメ夫婦は、巣作りを始めてからも何度も周囲を確かめた。


人間が屋根を見上げれば、作業を止める。


シジミが窓辺へ来れば、離れた木へ移る。


庭へ別の鳥が来れば、しばらく戻らない。


本当にここでよいのか。


危険はないか。


気づかれていないか。


そう考えているらしい。



※第25話「今度はスズメの巣」は全四回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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