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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第24話 ムクドリの巣

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(三)家から出れば巣の近く

◆ まだ四時半


うちの人間が枕へ顔を押しつけた。


「うるさい……」


同意する。


スズメの朝食要求も騒がしかった。


だが、あちらは食事が欲しいという目的が分かる。


鳴けば、うちの人間が起きる。


起きれば、庭へ食事をまく。


スズメたちの行動には筋が通っていた。


ムクドリがなぜ今鳴いているのかは、シジミにもよく分からない。


仲間への連絡。


巣の周囲の確認。


何かへの警戒。


あるいは、ただ声を出しただけかもしれない。


どの理由であっても、声が大きい。


うちの人間は布団の中から腕を伸ばし、鳴る箱を見た。


「まだ四時半……」


鳴る箱が音を出す時間より早いらしい。


人間は、決められた時刻より前に起こされることを特に嫌う。


四時半に一度目を覚まし、もう一度眠る。


それだけなら大きな問題ではないように思える。


だが、うちの人間は、


「あと一時間半も寝られたのに」


と、失った時間を数える。


起きているあいだに数えているため、その分さらに眠る時間が減る。


人間は損を確認するために、損を増やすことがある。


屋根から、また声がした。


「ギャー!」


うちの人間は布団の中で言う。


「何でそんな鳴き方なの……」


本人に聞いたほうがよい。


もっとも、聞いてもムクドリの言葉は分からないだろう。


シジミにも、細かな意味までは分からない。


ただ、緊急事態ではないことだけは分かる。


ムクドリは元気である。


元気だからこそ、うるさい。


◆ 思ったよりうるさい


昼になると、さらに騒がしくなった。


親のムクドリが食事を運んでくる。


屋根へ止まる。


巣の近くで鳴く。


中から子の声が返る。


「飯!」


「こっち!」


「もっと!」


鳥の子は、どの種類でも食事の要求が強い。


スズメも。


カラスも。


ムクドリも。


親が戻れば口を開ける。


自分が一番腹を空かせていると主張する。


兄弟がいれば押しのける。


生きるためには必要なのだろう。


遠慮している子は、食事を受け取りにくい。


声を出す。


口を開ける。


自分はここにいると知らせる。


子どものうちは、それでよい。


問題は、親まで一緒に大きな声を出すことである。


「ギャー!」


巣の中から、


「飯!」


「飯!」


屋根の上から、


「ギャー!」


家の中にまで響く。


うちの人間は長椅子へ座り、絵の光る板を見ていた。


屋根から声がするたびに、少し眉を寄せる。


「思ったよりうるさいなあ」


巣を作っていると気づいたとき、


「しばらくだけならいいか」


と言っていた。


そのときに、子育てが静かだと思っていたのだろうか。


子がいれば食事を求める。


親は何度も出入りする。


鳥は鳴く。


予想できることである。


◆ もう少し寝てくれれば


うちの人間はムクドリについて調べ始めた。


「朝早くから活動するんだ」


すでに体験している。


「夜も鳴くことがあるんだって」


それも聞いた。


「睡眠時間、短いんだなあ」


感心するところではない。


睡眠時間が短い鳥が屋根に住んでいるため、こちらの睡眠時間まで短くなっている。


うちの人間は画面を見ながら、ため息をついた。


「もう少し寝てくれればいいのに」


ムクドリからすれば、うちの人間のほうが長く眠りすぎなのかもしれない。


朝になっても布団から出ない。


鳴る箱を何度も止める。


休みの日には昼近くまで眠ることもある。


ムクドリが人間の暮らしを見れば、


「いつまで寝ているのだ」


と思うだろう。


自分の生活時間を基準にすれば、相手はどちらもおかしく見える。


ただし、家はもともとうちの人間とシジミが住んでいた場所である。


後から来たムクドリが、朝四時半から屋根で鳴く。


少しくらい文句を言ってもよいように思える。


◆ 家から出れば巣の近く


数日後。


うちの人間が家の外へ出ようとした。


仕事へ行くためではない。


近くへ買い物に行くらしい。


外へ出ても問題のない部屋着に薄い上着を重ね、栗色の髪を低い位置でまとめている。


シジミも、少し外の様子を見るため玄関の近くへ来ていた。


扉を開ける。


うちの人間が外へ出る。


その瞬間、屋根の上から声が響いた。


「ギャー!」


うちの人間が驚いて顔を上げる。


ムクドリが一羽、屋根の端に止まっていた。


くちばしには食べ物をくわえている。


巣へ戻ってきたところらしい。


だが、入口の下にうちの人間がいる。


ムクドリは中へ入らない。


屋根の上から、うちの人間を見ている。


「どけ!」


「巣に近い!」


「ギャー!」


うちの人間が少し身を引いた。


「びっくりした」


ムクドリはさらに鳴く。


「離れろ!」


うちの人間が家の横へ一歩動いた。


巣の入口に近い。


ムクドリが屋根から飛び立つ。


うちの人間の頭上を通り、近くの電線へ止まる。


「ギャー!」


威嚇している。


間違いない。


子のいる巣へ近づく者を警戒している。


そこはカラスと同じである。


ただし、大きな違いがある。


カラスの巣は、近くの木にあった。


木の近くへ行かなければよい。


遠回りすれば、互いに困らない。


ムクドリの巣は、うちの家にある。


うちの人間が家から出れば、巣の近くを通る。


家へ帰るときも通る。


窓を開ける。


庭へ出る。


屋根の下を歩く。


すべて、巣の近くである。


避けようがない。


ムクドリは、うちの家へ巣を作った。


そのうえで、家に住んでいる者が出入りすると威嚇する。


ずいぶん勝手である。



※第24話「ムクドリの巣」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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