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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第24話 ムクドリの巣

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(二)場所を借りた

◆ しばらくだけならいいか


数日後。


うちの人間も、ようやく気づいた。


朝、窓の外をムクドリが横切った。


くちばしには草をくわえている。


そのまま屋根の隙間へ入る。


うちの人間は、温かい飲み物を持ったまま、目でその姿を追った。


「えっ、そこに入るの?」


入る。


何日も前から入っている。


うちの人間は窓へ近づき、屋根を見上げた。


少しして、ムクドリが外へ出てきた。


「もしかして、巣を作ってる?」


作っている。


シジミは最初から知っている。


うちの人間は、少し困った顔をした。


「うちに?」


うちである。


カラスの巣は近くの木だった。


ムクドリの巣は、家の一部にある。


うちの人間は屋根の隙間を見ながら考え込んだ。


だが、すぐに少し笑った。


「まあ、しばらくだけならいいか」


よいのだろうか。


シジミには分からない。


鳥が屋根の中へ草や枝を運ぶ。


子が生まれれば、食事を運ぶ回数も増える。


鳴き声も増える。


巣の周囲が汚れる可能性もある。


何より、家に住む者と鳥の生活する場所が近すぎる。


人間は、まだ起きていない問題について心配しすぎることがある。


一方で、すでに屋根へ鳥が住み始めているのに、


「しばらくだけなら」


で済ませることもある。


何を心配し、何を気にしないのか。


基準がよく分からない。


◆ 一日に数時間で足りる


やがて、ムクドリの子育てが始まった。


カラスの巣があったときとは違い、姿はほとんど見えない。


巣は屋根の内側である。


だが、音は聞こえる。


親のムクドリが戻ってくる。


屋根へ止まる。


隙間へ入る。


中から小さな声がする。


しばらくして、また外へ出る。


飛んでいく。


それを一日に何度も繰り返す。


ムクドリは活動している時間が長い。


朝は早い。


まだ空が完全に明るくなる前から動き始める。


昼も飛び回る。


夕方になっても戻ってくる。


ときには、もう暗くなったと思うころにも声が聞こえる。


どうやら、一日に数時間ほど眠れば足りるらしい。


シジミには理解できない。


猫はよく眠る。


必要がないときは眠る。


安全な時間に休む。


体力を使う必要があれば、その前に温存する。


眠れる状況で、わざわざ起き続ける理由はない。


ムクドリは違う。


朝から飛ぶ。


食事を探す。


巣へ運ぶ。


また飛ぶ。


鳴く。


周囲を警戒する。


夜になっても、何かあれば鳴く。


ずいぶん忙しい。


それだけ動けば疲れるはずだ。


だが、次の朝にはまた早くから活動している。


鳥の体は、猫とは違う仕組みで動いているのだろう。


◆ ただ、うるさい


問題は、活動しているだけではないことである。


ムクドリは鳴く。


それ自体は、鳥だから不思議ではない。


だが、鳴き方に問題がある。


「ギャー!」


初めて聞いたとき、シジミは耳を伏せた。


何かに襲われたのかと思った。


怪我をした。


巣へ敵が入った。


仲間が捕まった。


その程度のことが起きた声に聞こえる。


シジミはすぐに屋根を見上げた。


だが、ムクドリは普通に立っていた。


周囲を見ている。


羽も乱れていない。


怪我もしていない。


また鳴く。


「ギャー!」


何も起きていない。


ただ鳴いている。


わざとなのかは分からない。


ムクドリにとっては普通の声なのだろう。


だが、なかなか神経に触る鳴き方である。


スズメの声は、意味こそ、


「飯!」


「はよう飯!」


と騒がしいが、人間の耳には軽く聞こえる。


ウグイスは、自分がどれほどイケているかを叫んでいても、声だけは美しい。


ホトトギスは少し自信のない主張をしていても、遠くまで通る声には季節らしさがあるらしい。


ムクドリは違う。


「ギャー!」


内容を理解しなくても、騒がしい。


意味が分からないから美しく聞こえるという、人間に有利な働きすらない。


ただ、うるさい。


しかも早朝からである。


◆ 場所を借りた


ある朝。


空が白み始めたばかりの時間に、屋根から声が響いた。


「ギャー!」


シジミは寝台の足元で目を開けた。


隣では、うちの人間が眠っている。


栗色の髪が枕の上へ広がっている。


もう一度、屋根から鳴く。


「ギャー!」


うちの人間の眉が少し動いた。


続いて、屋根の上を歩く音がする。


小さな足音だが、家の内側まで伝わる。


「ギャー!」


うちの人間が布団の中で動いた。


「何……?」


ムクドリである。


すでに何日も聞いている。


だが、眠っているところを急に起こされると、毎回何か起きたと思うらしい。


うちの人間は目を閉じたまま、布団を頭まで引き上げた。


「まだ早い……」


ムクドリには関係ない。


人間が何時まで眠るかなど知らない。


そもそも、ここが人間の寝床に近いことも理解していないかもしれない。


自分たちが巣を作った家の中に、何者がどのように住んでいるか。


そこまで考えて場所を選んだとは思えない。


雨を避けられる。


外から見えにくい。


入口が狭い。


子育てに使えそう。


それだけで決めたのだろう。


だが、住み始めた以上、少しは静かにしてもよいのではないだろうか。


家の中には、先に住んでいる者がいる。


場所を借りた。


少なくとも、結果としてはそうである。


それなのに、朝早くから屋根の上で鳴く。


「ギャー!」



※第24話「ムクドリの巣」は全五回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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