↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第19話 再びスズメ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/110

(三)昨日より早い

◆ 仲良く食べてる


うちの人間は窓を開け、庭へ少しだけ食べ物をまいた。


「ほら、今日の分」


スズメたちが一斉に降りる。


「飯!」


「食え!」


「こっち多い!」


「取るな!」


「オレのだ!」


静かになったわけではない。


要求が争いへ変わっただけである。


うちの人間には、楽しそうに食べているように見えるらしい。


目を細めて眺めている。


「朝からよく食べるねえ」


朝だから食べるのである。


それに、食べ物を出したのはうちの人間だ。


食べることを期待して出したはずなのに、実際に食べると感心する。


人間は、自分が予想したとおりのことが起きても驚ける。


スズメたちは地面を跳ねながら、食べ物を奪い合っている。


一羽が大きな欠片を取る。


別の一羽が追う。


「それ寄こせ!」


「先に取った!」


「半分よこせ!」


「嫌だ!」


うちの人間が微笑む。


「仲良く食べてる」


どこを見ているのだろう。


仲良く分けているのではない。


早い者が取っている。


奪われないように逃げている。


食事がなくなれば、争いは終わる。


それを人間は、仲良く朝食を取ったと考える。


意味が分からなければ、何でも平和に見えるらしい。


◆ 起こされちゃった


うちの人間は窓を閉めた。


そして大きく欠伸をする。


「せっかくの休みなのに、起こされちゃった」


自分で食事を出すからである。


出さなければ、スズメたちはいずれ別の場所へ行くかもしれない。


だが、鳴けば出す。


出すから、また来る。


また来るから、鳴く。


うちの人間はスズメたちに起こされていると思っている。


スズメたちは、鳴けば人間が食事を出すと思っている。


どちらも正しい。


ただし、この関係を始めたのは、うちの人間である。


一度食べ物を置いた。


次の日も置いた。


かわいいと言って喜んだ。


そして今では、寝床の近くまで来て起こされている。


自分で覚えさせておきながら、


「起こされた」


と被害を受けたように言う。


人間は原因と結果の間が少し長くなると、自分が原因を作ったことを忘れる。


うちの人間は台所で温かい飲み物を用意した。


まだ眠そうに長椅子へ座る。


「スズメって、どこで寝てるか分かるのかな」


シジミはうちの人間を見た。


少しは疑問に思っていたらしい。


だが、おそらく分かっていない。


分かっていなくても困らない。


この窓の近くで鳴けば反応が早い。


それだけ知っていれば、人間を起こせる。


人間は理由を理解しようとする。


どうして。


どこで知った。


何を考えている。


だが、スズメたちは結果だけで動く。


鳴いた。


人間が起きた。


食事が出た。


次も鳴く。


必要なことは、それだけだ。


うちの人間は飲み物を両手で包み、窓の外を見た。


庭では、食事を終えたスズメたちが飛び去っていくところだった。


「明日はもう少し遅く来てほしいなあ」


無理である。


早く鳴けば、早く食事が出た。


スズメたちは、そう覚えた。


明日は今日より早く来る可能性すらある。


もっと早く鳴けば、もっと早く食事が出るかもしれないと考えるからだ。


人間は動物へ食事を与えると、自分になついたと思う。


だが、スズメたちはうちの人間を好いているわけではない。


食事を出す存在として覚えただけだ。


庭の窓。


寝床に近い窓。


起きる時間。


食事がまかれる場所。


必要な情報を集め、最も効率のよい方法を選んでいる。


どちらが観察されているのか、うちの人間は気づいていない。


◆ 昨日より早い


翌朝。


空が白み始めるより少し前。


シジミは、窓の外の小さな物音で目を覚ました。


枝へ何羽かが止まる。


まだ鳴いていない。


スズメたちは、家の中の反応を確かめているらしい。


少しして、一羽が鳴いた。


「飯!」


うちの人間は動かない。


もう一羽が続く。


「はよう飯!」


反応はない。


三羽目が、昨日より大きな声で鳴いた。


「起きろ!」


うちの人間が布団の中で動いた。


スズメたちは一斉に騒ぎ始める。


「起きた!」


「効いた!」


「飯!」


昨日より早い。


そして、うちの人間も昨日より早く目を開けた。


実際に早い。


スズメたちは、また一つ学習したらしい。


早く来ても、人間は起きる。


うちの人間は枕へ顔を押しつけた。


「まだ暗いのに……」


それでも、しばらくすれば起きるだろう。


鳴き続ければ食事が出ると、スズメたちは知っている。


うちの人間が根負けすることも知っている。


寝床の位置を知らなくても、人間の扱い方は理解している。


シジミは猫語でつぶやく。


「本当に人間ってあさはかな生き物だよね」



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。