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本当に人間ってあさはかな生き物だよね  作者: KEI
第19話 再びスズメ

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(一)みんなで鳴け

◆ 味をしめたスズメたち


味をしめたスズメたちが、たびたび朝に来るようになった。


以前、うちの人間が庭へ食事を置いた。


正確には、食事を置いたつもりはないのかもしれない。


余っていたものを、少しだけ庭へまいただけである。


だが、スズメたちからすれば同じことだ。


食べ物が出た。


食べた。


次の日も来てみた。


また出た。


それが何度か続けば、ここへ来れば食事が出ると覚える。


動物は学習する。


人間が思っているより、ずっと早く学習する。


そして、一度うまくいった方法は繰り返す。


朝になると、庭から声が聞こえる。


「飯!」


「はよう飯!」


「起きろ!」


いつもどおりである。


人間には、


「チュンチュン」


と聞こえているらしい。


ずいぶん穏やかな表現である。


実際には、朝食の催促だ。


しかも、お願いではない。


要求である。


初めのころは、庭の木に止まって鳴いていた。


少しすると、うちの人間がよく庭へ出入りする窓の近くへ集まるようになった。


そこまでは分かる。


食事を運んでくる人間が現れる場所である。


扉の前で待つ。


窓の近くで騒ぐ。


効率のよい方法だ。


ところが最近、少し様子が違う。


スズメたちは、庭へ出入りする窓ではなく、家の横側にある別の窓の近くで騒ぐようになった。


その窓の向こうには、うちの人間の寝床がある。


◆ 寝床に近い窓


朝。


まだ空が少し白み始めたばかりの時間。


シジミは寝台の足元で目を覚ました。


隣では、うちの人間が眠っている。


栗色の髪が枕の上へ広がり、布団から片腕だけが出ていた。


まだ起きる気配はない。


そこへ、窓の外から声が響いた。


「飯!」


続いて、もう一羽。


「はよう飯!」


さらに別の一羽。


「腹減った!」


うちの人間は動かない。


スズメたちは、少し間を置いた。


「聞こえてないぞ!」


「もっと近くで鳴け!」


「飯!」


「はよう飯!」


声が大きくなる。


シジミは耳を動かした。


やはり、この窓の前にいる。


庭へ出る窓ではない。


食事を置く場所からも少し離れている。


それなのに、わざわざ寝床に近い窓へ集まっている。


いつの間に、うちの人間の寝床の位置が分かったのだろうか。


スズメは家の中へ入らない。


窓の外から見える場所にも、寝台はない。


布で閉じられているため、外から中の様子はほとんど分からないはずだ。


それでも、うちの人間が眠っている場所の近くで鳴く。


何かの拍子に、窓の隙間から見たのだろうか。


うちの人間が朝、この部屋から出てくるのを観察していたのかもしれない。


あるいは、部屋の明かりが消える時間を見ていたのかもしれない。


人間は鳥を、庭へ来て少し鳴き、何も考えず飛び去る生き物だと思っている。


だが、鳥は周囲をよく見ている。


食事がある場所。


危険が来る方向。


逃げられる枝。


どの人間が食べ物を出すか。


何時ごろ現れるか。


一度覚えれば、次の日にも使う。


ただし、寝床の位置まで理解しているとは限らない。


この場所で騒ぐと、うちの人間の反応が早い。


ただそれだけに気づいた可能性もある。


最初は庭の窓で鳴いた。


反応がない。


別の場所へ移動した。


この窓の近くで鳴いた。


すると、うちの人間が早く起きた。


だから、次からも同じ場所で鳴く。


それなら筋が通る。


鳥に必要なのは、家の中の間取りを理解することではない。


どこで鳴けば食事が早く出るかを覚えることだ。


結果さえ分かればよい。


人間も、機械の細かな仕組みを知らなくても使う。


印を押せば明かりがつく。


別の印を押せば絵が動く。


なぜそうなるか分からなくても、使い方さえ覚えれば困らない。


スズメも同じなのだろう。


この窓の前で鳴けば、人間が早く動く。


それだけ覚えた。


◆ みんなで鳴け


窓の外で、また声が響いた。


「飯!」


「まだか!」


「寝てるぞ!」


「起こせ!」


一羽が、窓の近くにある細い枝へ飛び移った。


くちばしで枝をつつく。


小さな音が窓へ伝わる。


うちの人間が、布団の中で少し動いた。


スズメたちの声が止まる。


どうやら反応を確認しているらしい。


うちの人間は寝返りを打った。


それだけだった。


すぐに、また鳴き始める。


「起きた!」


「もう一回だ!」


「飯!」


「はよう飯!」


完全に起きたわけではない。


だが、体が動いた。


自分たちの声が届いたと判断したらしい。


一羽が窓枠へ降りた。


「もっと鳴け!」


「みんなで鳴け!」


「飯!」


「飯!」


「飯!」


騒がしい。


人間は鳥の朝の声を、爽やかだと言う。


朝日に鳥の声。


季節の空気。


自然の目覚め。


そのようなものをまとめて、気持ちのよい朝だと考える。


だが、実際には食事を要求する集団が、寝ている人間の近くまで来て大声を出しているだけである。


人間が同じことをすれば、爽やかとは言われないだろう。


朝早くから家の窓の前に集まり、


「飯!」


「はよう飯!」


と叫べば、すぐに追い払われる。


鳥だから許されている。


小さくて羽があり、人間には言葉の意味が分からない。


それだけで、ずいぶん扱いがよい。


うちの人間が、ゆっくり目を開けた。


窓の外から声がする。


「起きたぞ!」


「飯だ!」


「早くしろ!」


うちの人間は布団の中で、ぼんやり窓のほうを見た。


「スズメ……?」


そうである。


しかも、ただ鳴いているのではない。


起こしに来ている。


うちの人間は目を閉じ直した。


「まだ早いよ……」


スズメには伝わらない。


人間の言葉を理解できないのではない。


声が小さすぎる。


そもそも窓も閉まっている。


だが、うちの人間が何か言ったことには気づいたらしい。


「返事した!」


「起きてる!」


「飯!」


「はよう!」


声がさらに大きくなる。



※第19話「再びスズメ」は全三回です。

続きます。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/humans-foolish-top

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