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最弱のゴブリンAに転生した俺、死亡フラグをへし折っていたら、いつの間にか最強の先導者にされていた件  作者: アルファベータ
第一章

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第15話 歓迎の宴


「……驚いたな。シードさんの数値、モンスターの限界を完全にぶち壊してますよ」


 ハイエルフの郷『リーズヘルテ』の玉座の間。俺のステータスウィンドウを凝視していたリッチのアランが、顎の骨をカタカタと鳴らしながら、今度は自分の胸元に手を当てた。


「なあ、シルヴィ。俺たちのステータスって、今どうなってんだろ? シードさんの【先導者の恩恵】ってやつが本当に発動してるなら、俺たちのデータも書き換わってるんじゃ……」


「確かめてみる価値はありますね。……開示オープン


 シルヴィが静かに念じると、彼の前に翡翠色のウィンドウが浮かび上がる。それに続いてアランも自身のステータスを展開した。


 二人のウィンドウが白銀の広間に並んだ瞬間、それを見守っていたハイエルフの守備隊長セレニアと戦士たちが、再び息を呑んだ。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


シルヴィのステータス(レベル27)


種族: エルフ(始まりの森・精鋭)

HP : 2,400 / 2,400(同族平均より+40%)

MP : 1,800 / 1,800

敏捷 : S(限界突破)

魔力 :B+

特性:【先導者の追随(シードの恩恵)】


シードの経験値還元に伴い、全パラメータの成長限界が常時解放されている。


アランのステータス(レベル15)


種族: リッチ(不死族・変異種)

HP : 900 / 900

MP : 6,200 / 6,200(レベル30のハイエルフ相当)

魔力 : A

精神 : A+

特性:【死体並列思考(Lv3)】、【先導者の追随(シードの恩恵)】



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「な、何ですか、この異常な数値は……!?」


 セレニアが細い指先で自身の口元を覆い、取り乱したように再びウィンドウに近づいた。


「シルヴィ殿……貴方は純血のハイエルフではなく、始まりの森の通常のエルフのはず。それなのに、レベル27の時点で【敏捷】が『S』に達しているなど、到底あり得ません! 我が郷の最精鋭の隠密でも、レベル40を超えなければその領域には至らないわ! それにそちらのアンデッドのアランさんも……レベル15でありながら、マナの総量がレベル30の私を遥かに凌駕している……!」


「うわ、マジだ……」アランが自分の骨の手を見て震えている。


「一週間、シードさんに地獄のブートキャンプをさせられた時、妙にレベルの上がりが早いとは思ったけど……これ、経験値3倍だけじゃなくて、ステータスの『天井(限界値)』そのものが引き上げられてるんだ。シードさんの【先導者の恩恵】って、俺たちを強制的に“天才”にするバグスキルなんじゃねえか……!」


「すべてはシード様が、我々の可能性を引き出してくださった結果です」


 シルヴィは当然のように胸を張り、俺の後ろへと一歩下がった。セレニアは信じられないものを見る目で俺たちを見つめ、やがていくつかの質問を投げかけてきた。


 影王会との戦闘の経緯、あの二重人格の怪物リル・ムルが使った魔法の性質、そして俺たちがこれから何を目指すのか。


 俺は人間の傭兵の姿(認識阻害)に戻り、淡々と、しかし澱みなく答えた。


「俺たちの目的は、この世界の因果を狂わせ、すべての命を間引きしようとする『影王会』、そしてその背後にいる『運営』の排除だ。そのためなら、俺はどんな力でも利用する」


 その冷徹で、しかし世界のすべてを見透かしたような俺の言葉に、セレニアは深く感じ入ったように目を伏せた。


「……分かりました。貴方たちの真実、そしてその背負う宿命の重さを、リーズヘルテは全面的に認めます。シード様、そして戦士の皆様。まずはその傷ついたお身体を癒やしてください。我が郷の総力を挙げてもてなしましょう」



◇◆◇


 その夜、俺たちはリーズヘルテの最上層にある、星空が最も美しく見える極上の客室へと案内された。


 エルフの郷の料理とは異なり、ハイエルフのもてなしは洗練を極めていた。大樹の蜜を使った極上の黄金酒、一口食べれば魔力が回復する精霊の果実、そして最高級の猪肉の香草焼き。


 あの日から飲まず食わずで、宿でハーミルに飯を半分掠め取られた反動もあり、俺は贅沢に並べられた料理を静かに、しかし確実に平らげていった。


「――シード様、お食事の口に合いましたでしょうか」


 部屋のテラスの扉が開き、月光を浴びた白銀の髪を揺らしながら、セレニアが入ってきた。


 昼間の強固な鎧は脱ぎ捨て、薄手のエメラルドグリーンのドレスを纏っている。ハイエルフ特有の、透き通るような白い肌が月明かりに照らされて神秘的に輝いていた。


「ああ、素晴らしい味だ。傷ついた魔力回路が、この郷の料理と空気マナだけで急速に修復されていくのが分かる」


「──それは良かったです……」


 セレニアは少し頬を染め、俺の隣の椅子へと静かに腰掛けた。彼女の手には、二つのクリスタルグラスと、淡く発光する極上の酒瓶が握られている。


「昼間は、無礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。ゴブリンの姿を見ても、貴方の本質を疑うべきではなかった……。貴方のあの毅然とした佇まいと、世界を救おうとする強い意志に、私は……激しく心を揺さぶられました」


 セレニアが俺のグラスに酒を注ぐ。その指先が、かすかに震えている。彼女の目は、昼間の警戒心に満ちた守備隊長のものではなかった。


 圧倒的な強者であり、世界の先導者である俺に対する、純然たる「憧憬」と「畏怖」、そして――一人の女性としての熱い視線。


「私は数百年の間、このリーズヘルテを守ることだけを考えて生きてきました。ですが、貴方のあのステータス、そして『世界を間引きしようとする神々に抗う』という言葉を聴いた時、胸の奥が熱くなって、止まらないのです……。シード様、もしよろしければ、このセレニアも貴方の旅路に……」


 至近距離から見つめてくる、ハイエルフのその美貌。その瞳には、すでに俺に対する絶対的な忠誠と、隠しきれない情愛が宿っていた。


「俺の旅は地獄へ続く道だぞ、セレニア」


俺はグラスを傾け、冷徹に笑ってみせた。


「構いません。貴方という気高き混沌の王とならば、たとえ世界の果ての地獄であっても、私は喜んで共に行きましょう」


 セレニアはそう言うと、俺の手の上に、自身の温かい手をそっと重ねてきたのだった。


「……おいおいおい、嘘だろ」


 客室の少し離れた影、テラスの様子が丸見えのコリドーで、アランとシルヴィがその光景を覗き見ながらヒソヒソと会話を交わしていた。


「なぁシルヴィ、シードさんって前世でどんな超絶モテ男だったんだろうな? エルフの郷の姫と獣人のトップを瞬時に虜にしたと思ったら、今度はあのプライドの塊みたいなハイエルフの守備隊長まで、出会って数時間で完全にオチてんじゃねえか。あのゴスロリの怪物だって、戦闘中楽しそうだったし……それは違うか」


 アランが骨の頭を抱え、前世の冴えないゲーマーとしての僻みと、純粋な驚愕をゴチャ混ぜにした声を漏らす。


 シルヴィはそんなアランを冷ややかな目で見据えながらも、テラスで月光に照らされる俺の背中を、深い敬意を込めて見つめていた。


「当然です、アラン。シード様には、他者を惹きつけずにはいられない『絶対的な覇王のカリスマ性』がある。姿がゴブリンであろうと、人間の大剣士であろうと関係ない。あの御方の出す言葉、行動、そして圧倒的な強さへの執念が、傷ついた者や、誇り高き者の心を芯から掴んで離さないのです」


「……確かに、な」


アランはフードを深く被り直し、小さく笑った。


「俺だってさ、最初の頃は『姿ゴブリンの奴なんかに従えるかよ』って思ってた。でも、あの地獄の特訓で俺をボロボロにしながらも、最後にはちゃんと人間としての尊厳をくれた。……なんかさ、あの人の後ろについていきたくなるんだよな、不思議と。あの人が行く場所なら、どんな世界の崩壊が待ってても、本当にひっくり返してくれそうな気がするんだ」 


「ええ。私たちは、あの御方の背中をどこまでも追いかけるだけです」


二人の信頼の視線が、俺の背中に突き刺さる。


【先導者の恩恵】と【先を見据える者】の特別称号。それらは単なるステータスの補正ではない。この生きた世界において、絶望に抗うすべての者を惹きつける、絶対的な「王の資質」そのものだった。


もてなしの夜が更けていく。



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