第8話 ファーストダブルバトル!
―――ヒュッ……!
巨大飛蝗の群れを薙ぎ払った『大剣』を、ステラフィアは軽く一振りした。
「ふむ……やはり《ライジングブレード》を生成しても、私に負担は無いようだが……これはお前の力なのか?」
「うん、多分ね。
僕は『従属化』したモンスターと魔力を共有することが出来るから。
ただ、『従属化』は人間や魔族といった理性を持った者には効かないというのが定説だったはずなんだけど………いや、それを考えるのは後にしよう。
今は―――」
会話を打ち切った2人は―――目の前を見つめる。
「「「ギチギチギチィィィィ………!!」」」
「フン……まだ大分残っているか」
未だ大量にこの場に残る巨大飛蝗が―――次は我こそがあの『得物』を咀嚼せんと大顎を打ち鳴らし、翅を広げ―――
「「「ギチィィィイイイイイイッッッ!!!」」」
再び、襲い来る―――
「まあ―――関係ないな」
ぽつりと呟いたステラフィアは―――
「はッッッ!!!!」
その手に握る『大剣』を―――振るう!
―――ザンッッッッッ!!!
その一振りで7、8体の『デス・グラスホッパー』が纏めて両断される。
続けて―――
「はぁああああああああああああッッッ!!!」
裂帛の叫びと共に、ステラフィアは『大剣』を凄まじい速度で振り回す。
「「「ギュギチイィィイイッッッ!!!」」」
『大剣』が振るわれる毎に、巨大飛蝗達が薙ぎ払われていく。
更に―――
「こちらから行くぞッ!!!」
―――ダッッ!!
ステラフィアは高速で剣を振るったまま、自ら『デス・グラスホッパー』の群れの中に突撃をかけた。
「「「ギギィィイイイイィィイイッッ!!」」」
飛蝗達は『獲物』の正面からだけでなく真横や背後からも間断なく襲い掛かるが―――女魔族とその背に乗る少年を覆う天蓋と化した剣撃の嵐を前に、為すすべなく斬り伏せられていく。
そして気が付けば―――大量に蠢いていたはずの『デス・グラスホッパー』の群れは、5分と経たずにほぼ全てが消え失せていた。
「ん……アレは……?」
そして、最後に残った一際巨大な『デス・グラスホッパー』を見たステラフィアが怪訝な声をあげる。
「ステラ、気を付けて。
アレは『デス・グラスホッパー・コマンダー』―――群れの統率者だよ。
一般個体よりも『ステータス』が高くなっているはずだ」
馬の背に乗るリィドがステラフィアへと警告を飛ばすのと同時―――
「ギヂィィァァアァアアッッ!!!」
『デス・グラスホッパー・コマンダー』がステラフィアに向かって、正面から真っ直ぐに飛び掛かる。
「っ―――!
速い―――!」
先程までの個体群とは一線を画す速度に、ステラフィアは一瞬目を見張る。
並の『冒険者』―――『E級』や『D級』は言うに及ばず、『A級冒険者』でも見切ることは出来ないであろう速さで襲い掛かる『デス・グラスホッパー・コマンダー』に対し―――
「しかし―――見える!!」
ステラフィアは、自身の目の前に来るタイミングに完璧に合わせて『大剣』を振り下ろした。
だが―――
―――バッッッッッッッ!!!
「―――っ!!」
『デス・グラスホッパー・コマンダー』は『大剣』が身体に触れる直前―――強靭な後ろ脚で床を蹴り、突進の軌道を真横へと変えた。
ステラフィアは舌打ちと共に空振りに終わった『大剣』を構え直し、一瞬で遠く離れた場所へと移動した『デス・グラスホッパー・コマンダー』に視線を向け直した。
「今の一撃を避けるとは……!」
「あの『デス・グラスホッパー・コマンダー』……『敏捷力』が飛びぬけて高い個体なんだ……!」
ギチギチと大顎から嫌な音を出す巨大飛蝗の統率者を見やりながら、ステラフィアとリィドが警戒の色を濃くしながら話し合う。
そして『デス・グラスホッパー・コマンダー』は―――
―――ダンッッッッッ!!
巨大な翅を広げながら再び後ろ足で床を蹴り、飛び跳ねる。
だが、今度はステラフィアの正面へではなく―――
―――ダッ! ダッ! ダッ! ダッッッ!!!
「これは―――!」
巨大飛蝗の統率者は壁や天井へと次々に飛び移っていき―――2人の周囲を旋回する動きを見せ始めた。
正面からの攻撃は通じないことを学んだ『デス・グラスホッパー・コマンダー』による、凄まじい『敏捷力』に物を言わせた攪乱戦法―――
「っ……ステラ……!」
頬に一筋の汗が流れたリィドに対し―――
「なるほど……確かに厄介な『速さ』だな。
なら―――」
―――シュァ……!
微塵も焦りを見せないステラフィアは、『大剣』を消失させると―――
「《リインフォース・アームズ》」
再び、その『魔法名』を口にする。
そして―――
―――バリィィィイイッッ!!!
その手に、新たな『武器』が生成された。
「《ナンバーズ・フォー-ライトニングスピア》」
構えられるは『長槍』。
先程までの『大剣』と同じく、銀色の光を放つそれを両手で握るステラフィアは、静かに4つ脚を曲げた。
次の瞬間―――
―――ヒュンッ…………
その姿が、消えた。
「ギッ―――!?」
『獲物』の周りを高速で旋回しつつ、その複眼で『獲物』の姿を捉え続けていた『デス・グラスホッパー・コマンダー』から驚愕の鳴き声があがる。
そして―――
―――トッ………
消えたはずのステラフィアの姿が現れた、その時―――
彼女が握る『長槍』の先には―――『デス・グラスホッパー・コマンダー』の身体が突き刺さっていた。
「ギッ……ヂィ……!!??」
自身が全く知覚できぬ内に胴体を貫かれていた巨大飛蝗の統率者は、何が起きたのかも分からぬままビクビクと身体を震わせた後―――ダラリと脚を垂らし、動かなくなった。




