第5話 次なる『超上級ダンジョン』
この世界では―――とある伝説が囁かれていた。
21の存在が確認されている『超上級ダンジョン』。
その全てを攻略した末に現れると言われている『最後』にして『最古』のダンジョン―――『世界の果て』。
その最深部には、この世界の『理』を超えた『力』が眠っている、と―――
『力』とは一体何なのか。
そもそも、そのダンジョンは本当に全ての『超上級ダンジョン』を攻略することで現れるのか。
知る者は誰もいない。
それでもその伝説を信じ、数多くの『冒険者』達が『超上級ダンジョン』へと挑み―――
そして、その殆どが帰らぬ者となっていった―――
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
―――ダッ! ダッ! ダッ! ダッッ!!!
黒鹿毛の馬の胴体を持つ女ケンタウロス――ステラフィアが、片手に『長槍』を携えながら凄まじい速度で森の中を駆けていく。
「もうすぐ見えてくるはずだよ、ステラ!」
「そうか、思っていたより早く着きそうだな」
馬の胴体の上に跨り、『魔力の鎖』を握るリィドが声をかけ、『鎖』を身体に巻き付かせたステラフィアがそれに応える。
「いやぁ、それにしても……あの『下級ダンジョン』を出発してから、たった5日で次の『目的地』に到着できるなんてね」
今リィド達が向かっている『目的地』は、彼らが出発した場所からでは仮に馬車などを使ったとしても優に一ヵ月以上は掛かる距離にあった。
だが、2人はそれを自身の『力』によって強引に短縮していた。
ステラフィアの創り出した『長槍』――《ライトニングスピア》によって強化された『敏捷力』を使っての移動。
更には強化された『ステータス』に物を言わせて、普通であれば遠回りしなければいけないような深い森や渓谷を突っ切っての大幅ショートカット。
その結果、本来ならばあり得ない期間での長距離移動を実現していたのだった。
「今更言うまでもないことだけど、やっぱり君は凄く頼りになるね!
ありがとう、ステラ!」
「ふ、ふん!
この程度、私の力を持ってすれば造作もないことだ」
混じり気なしの感謝の言葉を前に、ステラフィアは思わず頬を赤く染めながら『プイッ』と顔を背けて照れ隠しをしてしまう。
「だがまあ、その、なんだ。
これだけの時間、魔法を持続出来たのは私も初めてのことだし。
これは恐らく、お前の力によるものだということは、まあ、認めざるを得ないし。
だからその、これはお前おかげであるということも、私は認めてやっても―――」
「あのさステラ!!!
君が不器用ながらも僕のことを褒めようとしてくれてるのは分かるし、僕としても凄い嬉しいんだけどさ!!!
せめて走っている間は前を向いて貰えないかな!!!
とんでもない速度出てる状態で『プイッ』ってされると滅茶苦茶怖いんだよね!!!」
と、相も変わらずな会話を続けている内に―――
「って、ステラ!
ほら、見えたよ!」
「―――!」
その『目的地』が姿を見せ始めた。
『アルヴァー大陸』のほぼ中心に存在していた『愚者の宮殿』より南へと大きく下った先にある、その場所―――
「あれが―――」
「うん、僕達が挑む次の『超上級ダンジョン』―――『星の宮殿』だよ」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
2人は、その銀色の『宮殿』を共に見上げていた。
「確か……これが『人間領』に残っている最後の『超上級ダンジョン』という話だったな」
「うん、と言ってもここは『魔族領』の境界ギリギリの場所なんだけどね」
現在『アルヴァー大陸』は人間達が統治している大陸東側――通称『人間領』と、『魔王軍』が実質的に支配している西側――通称『魔族領』とで分かたれている。
そして、これまで攻略された『超上級ダンジョン』は全て『人間領』内に存在していたものであった。
「つまり、ここ以外に存在していた『人間領』の『超上級ダンジョン』はお前が所属していた『勇者パーティ』によって全て攻略済みという訳か」
「……………………」
「―――?」
リィドはステラフィアの言葉にすぐには答えなかった。
「………正確に言うと、『勇者パーティ』が現れるよりも前に、数十人規模の『冒険者パーティ』によって、とある『超上級ダンジョン』の攻略が行われたことがあるんだ。
そして、そのパーティは見事攻略を成し遂げた。
それがこの世界で初めての『超上級ダンジョン』の攻略成功例だよ」
「………ふぅん、そうだったのか」
妙な間を置いてそんな話を口にするリィドに対し、ステラフィアは若干の違和感を覚えるも、深くは追求せずに相槌を打った。
その言葉に込められた何かしらの『感情』のようなものに、あえて気付かないフリをしながら。
「まあ……それはともかく、さ」
リィドは話題を切り替えるように―――あるいは、自分達の『目的』を再確認するかのように、強い『意志』と共に、ステラフィアに短く尋ねる。
「早速、行く?」
その問いに、ステラフィアもまた『意志』と共に答える。
「ふん、当然!」
そうして、少年と女魔族はニヤリと笑い合うと―――
「それじゃあ―――!」
「ああ―――!」
―――トッ……!
2人は同時に、その『宮殿』に手を触れた―――




