物語の終わり
最終話です。
それから数日でミーツェはテルゼに向かう準備をしなくてはなりませんでした。ギルが準備を急ぐのもセルスロイの忠告が有っての事かもしれません。
「足りないものは向こうで揃えればいいんだから。」
「そうは言っても献上品を定めたいのに……。」
「ミミが居れば何もいらないさ!さあ。」
「もう……ギルがこんなにせっかちだったとは思わなかったわ。」
「今度こそミミを逃すわけにはいかないからな。せっかちで結構だ。」
笑いながらギルはミーツェを引き寄せます。ミーツェの頬はバラ色に染まります。
そんな二人を見つけた仏頂面のデイがギルを見つけて叫びました。
「こら!ギル!そんなところでイチャついてないでこっちの私物を確認しろ!」
「振られ男はおお怖い。」
「なんだとぉ!!!」
「わ!ごめん!デイ!」
「ったく!俺のお蔭で上手く行ったくせに!感謝が足りない!」
ギルは軽くミーツェに舌を出すとデイの元へ走って行きました。ミーツェも船の方へ足を向けると後ろからラルフに声をかけられました。
「ミーツェ様。」
「ラルフ。どうしたの?畏まって。」
「数々のご無礼お許しください。私は貴方を疑っていました。」
「私は、」
「は?」
「私はアルギル様の真っ直ぐなところが大好きです。ラルフは?」
「わ、私もです。」
「教会で助けてくれて感謝してます。アルギル様の一番の親友であるあなたに認めてもらえるよう私も努力します。」
「……親友だと、アルギル様が言ったのですか?」
「いえ?違いましたか?でもきっとそう思っていると思いますよ。」
「もったいない話です。」
「ずっと貴方がアルギル様を守ってこられたんですね。」
「……。」
「どうかしましたか?」
「いえ。そんな風に言われたことはなくて。」
ラルフは不思議なものを見るようにミーツェを見ました。誰に頼まれたことは有りません。でも、ギルが真っ直ぐな性格な分、いつも心配で隣でギルに寄ってくる人を見分し、疑ってかかるのはラルフの仕事のようなものでした。
「これからもよろしくお願いします。」
差し出される美しい手にラルフは引き寄せられるように自分の手を伸ばしました。もう少しでミーツェの手に触れると思うとラルフはなぜか感動すらしました。でも……
「だ、め、だ!」
「ア、アルギルさま!?」
「ギル?」
向こうに行ったはずのギルは息を切らせて走って来たようです。ギルはミーツェの手を握り、ラルフの差し出された手を払いました。呆れたミーツェはラルフと顔を見合わせました。
「せっかくラルフと仲良くしようと思っているのに。」
「ミミは俺と仲良くしてたらいいんだ。」
ニコニコと笑い、ギルはミーツェを船に誘導しました。困り顔のミーツェがラルフの顔を見ると、ラルフは肩をすくめてミーツェに答えました。
しばらくして船が出港し、ミーツェはキジロを振り返りました。猫だった時と違って隣にはギルがいます。けれど少し寂しい気持ちもあります。セルスロイはミーツェたちが城に帰ってから今日まで部屋から出てくることは有りませんでした。
「ミミ。」
ミーツェが悲しそうにしているのを見てギルは声をかけました。ギルの手には猫だったミーツェが付けていた黒いリボンと宝石のついた指輪が有りました。
「これは、俺の祖母に貰った指輪なんだ。その昔、テルゼを大きくした祖父が祖母に送った物で、宝石としての価値はそう無いのだけど、本物の愛に出会える不思議な力が宿ってるんだって聞いた。」
そう言うとギルはミーツェの手のひらに指輪を置きました。
「私が貰っていいの?」
「君しか渡したい人はいない。猫だった時も、今も。」
「ありがとう。大切にするわ。その……リボンももう無くしたりしないからもう一度貰えないかしら?」
ミーツェのその言葉に嬉しくなったギルはミーツェを抱きしめました。
「ミミ、こちらこそ、ありがとう。」
セルスロイの事はギルにはどうしようもありません。そのかわりミーツェの笑顔をひとつでも増やそうとギルは思いました。きっとセルスロイはギルとミーツェの結婚式にも出席しないでしょう。それが彼なりのはなむけに思えます。
テルゼに向かう船は一組の愛し合う恋人たちを乗せて滑らかに進みました。
以前キジロを離れた時とは違い、ミーツェは船先で愛しい人とその景色を見つめます。
二人はきっと幸せになることでしょう。
「昔、昔、あるところに……」で始まって、お約束の締めくくり。
そうして二人は幸せに暮らしました。
~~~~~FIN~~~~
思っていたより完結まで時間がかかってしまいました。
最後までお付き合いいただけた方に感謝を。
ありがとうございました!




