後悔
雪菜は数日こそ忍び泣いたものの、ガガガと着陸した飛行機のように、以前の生活を取り戻しつつあった。
定刻通り学校に行き、放課後は美月と出かけ、スーパーに寄って、夕食の支度をし、母と代わり映えのない話をして、風呂に入ってから部屋でぼんやりしている。
しかし、雪菜には心残りがあった。和子のこと。最後に彼女に会ったあの日、これが最後かもしれないと霊感のささやきがあったのに、なぜ感謝の言葉を伝えなかったのだろう。あの日はそれが目的だったのに言いそびれてしまった。あれが「ありがとう」を伝えられる最後のチャンスだったのに。
告別式以来、和子が夢に出てくるようになった。最初のうちは生前のように笑っていたが、やがて憂いに満ちた目で雪菜を見るようになった。彼女の死が夢の中にまで侵食したことが悲しく、その意味を考え、悩む日が続いた。
そして雪菜にはこんな変化もあった。緊張の糸がぷつりと切れたように、百人一首と距離を置くようになった。あれだけ夢中で覚えた和歌が今では音を失い、漢字と平仮名を並べただけの味気ない線にしか見えなくなってしまった。
雪菜は和子がいま、どの雲にいるかわからない。
きっとうじうじしている自分を見て失望していることだろう。できるだけ早く立ち直らなければいけないのに思い通りに動けない。そんなもどかしさを振り払うかのように、雪菜はリビングで毛繕いをしているリーベを部屋に連れてきたりと、誰かの温もりに甘える日々を送った。




