第25話【Side: ラッツ】
(……なんで、こうなるんだろうな、まさに売り言葉に買い言葉! 思ってもない反抗なんかしてしまって……)
俺にとって金章祭は、貧しい自らの暮らしから抜け出すための、唯一の蜘蛛の糸だった。銅徽章すらない両親は、日々の糧を得るだけで精一杯。
そんな中で見た祭りの舞台は、天上の世界に等しかった。血の滲むような努力の末に銅賞を掴み、やっと銀徽章の傭兵にまでなった 。出来レースだと知っても、あの舞台で流した汗と、応援してくれた人々の笑顔は本物だった。その煌めいた街が、輝いた希望が今、炎と黒煙に包まれている。
あの時、目指していた金賞に届かず、銅止まりだったあの時の気持ち……! 金賞をとったハイドン=クレーヴァスが灰の鋼として名を挙げていると風の噂を聞いたとき!
(俺はもう、夢なんか見ない!絶対に!)
――そう誓うくらい、高みに届かなかった時は、悔しかったし、頑張っていた。だけど頑張っても結果は伴わなかった。それが裏で誰か手を引いていたからだってのか……?
金章祭は……遠く、人生はいつまで経ってもこのままなのか。そんな不安を紛らわすために、夢が叶わなくともせめて、自分自身を認めてあげるための、夢の舞台なんじゃないのか?
それが、その人参さえ、権力者が都合の良い広告塔を作りたいだけの、舞台装置にしか過ぎなかった……?
じゃあ俺や、共に涙を飲んだあいつらの気持ちは、どうなるんだよ。あの時の、俺の悔しさは……一体なんだったんだ!
(俺のせいでパーティは空中分解、やり手の金徽章に目をつけられた俺にオルビスで出世の未来はない……)
(俺は夢なんか見ねぇなんて誓っても、結局はずっと……後ろ髪引かれていたんだな。)
――だったらせめて、俺は俺が進みたい道を進むだけだ!
「……悪い!ガリウス、俺はオルフェインに戻らぁ!」
決意と共に、俺は馬車の扉を蹴破るようにして飛び出した。




