Peace1-2
-せれんとろわの幼少期-
せれんとろわは元々、島の住人ではなかった。
普通の人達だけが暮らす場所で生まれたが、ろわには親がおらず、小さな施設で育った。
ろわは物心ついた頃からシュシュの存在が見えていた。ろわにとっては当たり前のようにいるシュシュだが、どうも他の人から見えることはないらしい。その意味がまだ分からなかったろわは、シュシュと何処にいても話をする為、施設でも幼稚園でも気味悪がられていた。
それを察したシュシュは
シュシュ「シュシュのせいでごめんシュ。もう喋らないようにするシュ。」
ろわ「何で?ろわが勝手に喋りかけてるだけじゃん。だから、シュシュも喋ってよ。シュシュのおかげで、今日をやり過ごせてるから。」
そんなろわは、段々といじめの対象になっていった。幼稚園でいじめられていると、いつの間にかせれんが全員を殴り倒していた。
せれん「弱くね?」
「お前がおかしいんだよ!」
せれんは普通の家に生まれた子だったが、普通とはかけ離れた存在だった。
ろわとシュシュはせれんが生まれ変わる前、共にいた存在だということを知っていたが、あまりにも性格が違った為、ずっと疑っていた。
ろわ「…ありがとう。」
せれん「何が?」
ろわ「何がって…助けてくれたんだと思って…」
せれん「助ける?せれんが?何で?」
ろわ「え…じゃあ何で追い払ってくれたの?」
せれん「せれんより強そうな人間が嫌いだから?」
ろわ「?」
せれん「いや、人間は全員嫌いだな…」
ろわ「人間って…お母さんとお父さんも嫌いなの?」
せれん「ううん。」
ろわ「?よく分からない…。」
シュシュ「シュシュもありがとうって伝えたかったシュ…。シュシュはろわとしか話せないし、ろわにしか触れられないシュ…。」
ろわ「ずっと怒ってくれてたじゃん。私はそれだけで嬉しいよ。」
せれん「あ、もしかしてよく独り言喋ってるのってあんたか。」
ろわ「…!」
ろわはまた殴られると思い、縮こまる。
せれん「…何してんの?」
ろわ「…え?だって殴るんじゃ…」
せれん「あんたみたいな奴殴ってもつまんないよ。なんか人間に見えないし。」
ろわ「…もしかして…せれんも、覚えてる…?じゃあやっぱり…」
せれん「覚えてる?何を?」
ろわ「あ…えっと、生まれ変わる前のこと…」
せれん「え!?あんたってもしかして神様!?」
ろわ「違うけど…」
せれん「違くないよ!神様はぜんちぜん…?だってパパが言ってた。」
ろわ「全知全能のこと?」
せれん「そうそれ!めちゃくちゃ強くて何でも知ってるって!あ、でもあんたは弱いから違うか。」
ろわ「…あんたじゃなくて、神楽ろわ。」
せれん「あー人の名前とか興味ないんだよね。あんたでいいよあんたで。」
その後、せれんは何かとろわを気にかけていた。恐らく観察対象として。それ以外はいつも通り、誰かと喧嘩していた。
ある日幼稚園で、せれんは皆で植えた花を引っこ抜き、先生から怒られていた。周りには子どもが集まり、泣いている子やせれんを睨んでいる子がいた。
「せれんさん、何でこんなことしたの!?皆で育てた花なんだよ!?」
せれん「皆?あいつしか花育ててないじゃん。」
そうせれんはかぶれた手でろわを指さす。
先生は周りの子を見るも、目を伏せていた。
「でも、皆落ち込んでるよ!花だって、きっと悲しんでるよ!」
せれん「あいつ以外花を見てもいなかったんだから、今皆見て花も喜んでるよ。」
先生は絶句する。このことはせれんの親にも伝わったが、世間体を気にする親は頑なに病院へ連れていかなかった。
ろわ「せれん、私が花を育ててるの見てたんだね。」
せれん「見てたのはあんたの傷の数。ここでいじめられてないのに、段々増えてる気がして。」
ろわ「あー…よく転んじゃうんだよね…。」
その夜、ろわはいつものように施設の人から殴られていた。
シュシュ「ろわ!警察呼ぶシュ!このままじゃ…ろわが死んじゃうシュ…!」
ろわ「死ねるなら、それはそれでいいよ。ここの人皆、最近イライラしてるし、明らかにシュシュと話してるから殴られてるんじゃない。…シュシュも一緒に、天国へ行けるかな…。」
シュシュ「ろわお願いシュ!助けを呼ぶシュ!」
ろわ「無理だよ!誰も助けてなんかくれない。警察を呼んでここがなくなったって、また新しい所でいじめられるだけ!第一、ここの人達は絶対上手く隠す。」
次の日、休日だがせれんはろわがいるという施設を訪れた。ろわがボロボロな状態で面会に現れる。
せれんは何かがプツンと切れたように怒りが込み上げてきた。何故か、ろわが他人によって傷つけられることが許せなかった。
せれん「ねえ、転んでなんかないでしょ。」
ろわ「…ここ、段差多くて…」
せれん「嘘つき。段差なんか全然なかった。」
ろわ「…ここにはないだけで、中は段差だらけなんだよ。」
せれん「じゃあ見せてよ。」
「ごめんね。ここの施設じゃない子は、これ以上入れないんだ。」
せれんは従業員を睨みつける。
せれん「あっそ。」
ろわはせれんが暴れだすかと思っていたが、意外にもすんなりと帰っていった。
夜、せれんは施設に忍び込む。壁を伝い、一つ一つ窓を覗き込んでいった。
その時
「ろわを助けてシュ…!」
そんな声が聞こえた気がした。
声がした方の窓を覗くと、案の定ろわが虐められていた。せれんは窓を開け飛び込んでいった。勢いよく殴りかかりにいくも、相手は大人だった。
あっという間に殴り返され、せれんは窓に背中からぶつかる。窓が割れ、血が流れた。しかし、せれんは人よりも強かった。起き上がれず意識は朦朧としているも、痛みより怒りが込み上げていた。
ろわも大人も、せれんが死んだと思った。
ろわ「せれ…」
「…ほら!悪いことをする奴は…死ぬんだよ!給料が安いのに残業が多いのは、全部お前たちがいる所為で、そういう奴ら皆死ぬんだ!!!」
その言葉が、せれんに深く刺さった。
自分より強い相手はどうやっても排除できない。だが、せれんやろわを殴る悪い奴は、殺さなければならないと。
せれんは窓ガラスの破片を持って、ろわに殴りかかろうとする大人に、深く刺した。それだけで死ななかったら困るので、床に散らばったガラスを持ってきては何度も、何度も刺した。
ろわ「もうやめてよ!」
そうろわに言われるまで、自分の手が傷だらけなことにさえ気が付かなかった。
せれん「…痛い。」
ろわ「せれん…何で…。」
せれん「ろわはこの人じゃなくて、せれんに死んでほしかった?」
ろわ「そ、そうじゃなくて!何で…殺したの…?」
せれん「…せれんとせれんのものを虐めたから。」
ろわ「私は物じゃない!」
せれん「じゃあ、ろわはこの人に虐められたままで良かった?」
ろわ「嫌だ!…でも、これじゃあせれんが、捕まっちゃう。」
せれん「…何で?」
ろわ「…は?」
せれん「せれん、悪いことしてないのに何で捕まるの?」
ろわ「いや、だって人…殺しちゃってるし…。」
せれん「でもこいつ、悪いことした奴は死ぬって言ってた。だから死んだだけじゃん。そうじゃなかったら今も生きてるでしょ?」
ろわ「いや、それはその人の言い訳で…本当だったら捕まってたし…。」
せれん「でもろわを虐めてたのに捕まってなかったよ。」
ろわ「それはバレてなかっただけで…いや、バレてたかもしれないけど、皆見て見ぬフリしてただけ。ここに人権なんてないから。」
せれん「人権って何?」
ろわ「…えっと」
せれん「まあ難しい話はいーや。つまりバレなきゃいいってことね。」
ろわ「え!?そういう訳じゃないんだけど…。」
せれん「この部屋に入ってきた奴全員殺せばバレない。」
ろわ「…無理だと思う。」
せれん「ろわ、手伝って。」
ろわ「はあ!?」
そしてあっさり見つかり、窓ガラスは没収された。
だが、施設での虐待のこともあり、この事は世間に広まらなかった。
せれんとろわは病院へ送られ、様々な検査をし、島流しが決定した。
せれんの両親はせれんを見捨て、異端の島に流された叔父と叔母の元にせれんを送った。
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




