Peace6-2
-現実世界 寮-
寮から出かけようとするのえるを、ふらんは引き止める。
ふらん「のえる!のえる!」
のえる「⋯。」
のえるはいつも逃げてきた。親が嫌いになった時から、嫌なことがある度逃げてきた。嫌なことが起こらないよう、最初から周りが距離を置きやすく、のえる自身が自分を大事にできる選択をしてきた。ふらんのおかげで低くなった他人との壁は、前よりも高く厚くなる。
今もまた、話しかけようとするふらんに嫌われるために、好きな服を貫くことさえやめていた。
ふらん「避けるくらいなら他人として聞いて!」
のえるは立ち止まる。
ふらん「というか、その服⋯。」
のえる「良い機会だし、あの服からは卒業しようかなって。もうすぐ就活も始まるし。」
ふらん「何で…のえる、自分を大切にしない選択はしないんじゃなかったの!?」
のえる「仕事をするためには、そんな事言ってられないから。島外に行きたいなら尚更。」
ふらん「…ふらん、就職先決まったよ。」
のえるは驚き、ふらんの方を振り返りかけるも、そのまま俯いてしまった。
のえる「おめでとう…本当に…。」
ふらん(こんな形で、伝えたくなかったな…。)
ふらん「でもね、のえるといられなくなってから、全然良いアイデアが浮かんでこなくなっちゃったんだ。」
のえる「…そっか。」
ふらん「…プロになっても好きな服作っていいと思う?」
のえる「そんなの⋯分からない。お金を稼いで生きていくためには、社会に評価されなくちゃいけない。お金を稼ぐことと、好きなことをすることって違うから。」
ふらん「でも自分を幸せにするためには、社会に呑み込まれない方がいいんじゃないの?自分自身が評価しなきゃ、心は豊かにならないから、のえるは自分を大事にしてたんでしょ?」
のえる「⋯話はもう終わり?」
ふらん「あ⋯うん。」
のえる「じゃあ。」
のえるは振り返ることなく、立ち去ってしまった。
ふらん(⋯やっぱりもう元には戻れないんだ。)
レレがのえるの元に現れる。
レレ「のえる!」
のえる「…レレ。」
レレ「このままでいいレ!?ふらんはのえるのおかげで、自分を好きになれたレ!それはのえるも同じじゃないレ!?」
のえる「…。」
レレ「ふらんは、のえると一緒じゃなくなってから、どんどん好きが分からなくなってるレ…。のえるは好きを貫けなくなっても良いレ!?そんなの、ふらんものえるも誰も喜ばないレ!」
のえる「でも…!それ以外、執着しない方法がないんだから、仕方ないじゃん!ふらんと双子だと分かった以上、もう家族愛探しなんて、する必要ないんだし…。」
レレ「のえるは今、ふらんを双子としか見てないレ!ふらんのこと、ちゃんと一人の人間として見てないレ!」
のえる「…!」
のえるが振り向く頃には、レレは飛んでいってしまった。
-夢の中-
いつも通り、のえるとヴェヴェは霧の中へと行ってしまった。ふらんとレレはのえるとヴェヴェを追いかけるも、途中で見失ってしまう。
今日はろわに頼んでいた、各々が好きな花を植える日だった。
ろわのところへ、ふらんは花を取りに行く。
ふらん「のえるが来なくなったのふらんの所為だし、ふらんが植えるよ。」
ろわ「そっか⋯それぞれが選んだ好きな花だから、のえるにも植えてほしかったな。」
レレ「そう言えば、ふらんとのえるって一緒に植える花を決めたレ〜?」
ふらん「ううん。咲いてからのお楽しみにする予定だったよ。」
レレ「合わせてないのならすごいレ〜!」
りおう「それ、言ってしまっていいんですか?」
レレ「何でりおうが知ってるレ?」
リュリュ「りおうはろわの家で園芸手伝ってるリュから、皆が何の花を選んだのか知ってるリュ。」
レレ「なるほどレ〜。でもふらんが植えるからバレちゃうレ…。」
ふらん「え?どういう…」
ろわ「はい、ふらんが頼んでたミモザの苗。それと…」
シュシュ「多分のえるは植えにこないシュから、渡しておくシュ。」
そう言って、シュシュはふらんに勿忘草の苗を渡した。
ふらん「これは…」
レレ「勿忘草レ。ふらんは、何でミモザを選んだレ?」
ふらん「それはあのお屋敷に、春になったらお供えしに行こうねって言ってたから…。」
レレ「きっとのえるも、同じこと考えてたと思うレ。」
ふらん「…!」
どこかで、ふらんはのえるが勿忘草を選んでくれるのではないか、そう思っていた。
逆にのえるなら、ふらんがミモザを選ぶことも見通すだろうと。
ふらん(こんなの、2人で咲いてから喜びたかったじゃん…!)
ふらん「ふらんはやっぱり、もう一度のえると話す。元の関係に戻れなくても、新しい関係になればいいだけだから!」
レレ「レ…!分かったレ!」
-現実世界 大学-
ふらんはのえるのいる棟へと向かう。すると、ヴェヴェがやって来た。
ヴェヴェ「ふらん、そっちにのえるはいないヴェ。」
ふらん「ヴェヴェ!」
ヴェヴェ「ついてくるヴェ。案内するヴェ。」
ふらん「え?」
ヴェヴェ「レレから聞いたヴェ。ふらんは急ぎすぎヴェ。」
ふらん「でも、のえるにちゃんと話そうと…」
ヴェヴェ「知ってるヴェ。時は来たヴェ。」
ヴェヴェが案内したのは、いつもの寮の屋上だった。ふらんとヴェヴェが到着した時には、のえるとレレが話をしていた。
ふらん「のえる!」
のえる「…ふらん。」
のえるはふらんの横を通り過ぎ、寮の中へと戻ろうとする。しかし、扉の前にヴェヴェが立ち塞がる。
のえる「…ヴェヴェまで…」
ヴェヴェ「のえる許すヴェ。ふらんの話を聞いてほしいヴェ。」
ふらん「のえる!最後まで話聞いて。のえる、一緒にお供えに行くために、勿忘草を植えようとしてくれてたんだよね?」
のえる「…その頃は双子だったこと知らなかったし。でもごめん、一緒には行けない。現に今、ふらんに忘れられようとしてるんだから。」
ふらん「それは無理だよ!誰かの記憶に残ってる限り、のえるは独りになんてなれない!」
のえる「じゃあどうしろって!?誰かを嫌いになるのが怖くて、周りから逃げて、親から逃げて、いつも好きなものだけと向き合って…今もまた目の前のふらんからも逃げてる。…こんなのえるを、嫌いになって当然じゃん。」
ふらん「それって自分を大切にしてるってことでしょ?いいじゃん。それに、人を好きと嫌いの両極端になんて分けられないよ。好きなとこもあるし嫌いなところもある。どんなに好きな人でも完璧はないでしょ?」
のえる「じゃあ今、のえるが周りの目を気にしてファッションを変えてるの見て、幻滅した?」
ふらん「…ううん、悲しくなった。それに…ごめんね。」
のえる「え?」
ふらん「ふらん…ふらんはのえると双子なこと、ずっと前から知ってたから。 」
のえる「え…どういうこと…」
まだ父方の祖母が生きていた頃、ふらんは魔法戦士のアニメを見ることも、可愛い服を着ることも禁止されていた。祖母は体裁を気にする人だった。
ふらんはずっと、母と双子であるのえるに会いたかった。のえるの写真はなかったが、母の写真は父の書斎の棚から見つけることができた。
魔法戦士のアニメもテレビでは見られなかったが、父から借りたパソコンでこっそり見ていた。
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




