Peace1-3
ある雨の日、傘がなく急いで寮に帰ろうとしていたふらんは、寮の屋上に止まっているカナリアを見つけた。様子が気になり、屋上へと出てみると、カナリアは怪我をしているようだった。ふらんはカナリアを部屋に入れ、病院へと連れて行った。怪我が治るまでカナリアの世話をし、レレと名付けた。
レレはしばらくすると元気になり、寮の屋上から飛び立っていった。しかし時折、ふらんの様子を見に来るかのように屋上に現れた。
ある夜、課題に行き詰まったふらんはいつものように、屋上へと赴いた。すると、他にも鳥の面倒を見ている人がいた。その人が面倒を見ていた鳥はレレではなく、別の鳥だった。
ふらんは紫色の洗練されたゴシックな服を着こなすその人が気になって仕方がなかった。
かつて好きな服を堂々と着ることができなかった自分と対極の人間が目の前に存在する。
話したくても声が出ないと、あたふたしていると、その人は振り返り、ふらんと目が合った。
その人は立ち上がり、何事もなかったかのようにふらんの横を通り過ぎた。
ふらん「あ、あの…!」
咄嗟にふらんは呼び止め、その人は振り返ることなく足を止めた。
ふらん「あ…の…、凄く素敵な服だなって思って!それにあなたも!着こなせるの凄いし、服に皺ひとつないし、服が大好きなんだなって伝わってきた!」
???「…ありがとう。⋯もう行っていい?」
ふらん「待って!明日見ふらんって言うんだけど⋯」
のえる「そうなんだ。…如月のえる。」
ふらん「えっと、如月さん…も、もしかして服飾科なの?」
のえる「ううん、法学科。この服もお店で買っただけで、自分でアレンジとかできない。」
ふらん「そうなんだ…!意外…!」
のえる「明日見さんは服飾科なの?」
ふらん「うん!て言っても、自分で作った服は、着てないけど。今も、転科しようか時々悩んじゃうし。」
のえる「何で?」
ふらん「…皆が作る服、どれも素敵で、ふらんにはそんな才能ないし、いつも似たようなデザインになっちゃうから。」
のえる「似たようなデザインじゃ駄目なの?それが好きなんじゃなくて?」
ふらん「うん…どの服も大好きだけど、魔法戦士みたいな服は1番好きで…。だけどそれだけじゃファッションデザイナーにはなれないから…。もっと早く、自分の限界に気づくべきだった。」
ふらん(何で弱音ばっかり出ちゃうんだろ…、頑張って話しかけたのに…。)
のえる「でも、その時はそれが最善の選択だと思ってたんでしょ?後悔したってその時の自分の意志は変えられないのに。」
ふらん「…!それは、そうだね…。如月さんは、自分が好きな服を着てて笑われること、怖くない…?」
のえる「そんな事考えてたら、どんな服も着れなくなっちゃうじゃん。そんな中途半端な想いで着るなんて、服に失礼だし。何より、のえるはそういう自分を大切にしない選択をした方が後悔する。」
ふらん「…!!」
のえる「それじゃ。」
そう言ってのえるは階段を降りていく。ふらんにとってのえるは孤高で輝かしく見え、その日から憧れの存在となった。
そして初めて作った服を作り直すだけでなくアレンジを施し、改めて自分が作った好きな服を着るようになった。
寮の屋上で再びのえると出会う。
のえる「その服…」
ふらん「これ、初めて作った服なんだ。自分に自信が持てなくて破いちゃってから、実家に置いたままにしてたんだけど、ちゃんと直したよ。今出来る限りのアレンジもした。」
のえる「良いじゃん、その服。あとはメイク。」
ふらん「え?」
のえる「明日見さんが好きな服に合う、好きな自分になること。内面はなかなか変えられないけど、外見はすぐ変えられるから。」
ふらん「…魔法戦士みたいに、ふらんがなっていいのかな…。」
のえる「なるんだったら徹底的にならなきゃ。自分の為の服でもあるけど、服に見合う自分になることも、大事だと思ってる。」
ふらん「服は自信をくれる魔法…だもんね。」
のえる「ちゃんと分かってるじゃん。」
初めてのえるが微笑んだ。
ふらん「そう言えばこの鳥、どこから来たの?」
のえる「分からないけど、よく来るから勝手にヴェヴェって呼んでる。シマエナガってこの島中にいるし、どこにいても不思議じゃないんだけどね。」
ふらん「え…?シマエナガってあの白くてもふもふの鳥…だよね?こんな茶色くなくない?」
のえる「全身白いのは冬の時だけだよ。顔だけ見たらちゃんとシマエナガじゃん。」
ふらん「本当だ…!冬しか見れないんだと勘違いしてた。」
のえる「鳥もおしゃれだから。そうだ、良かったらのえるにヘアセットとかやらせてくれない?その服に合うの思いついたから。」
ふらん「良いの…!?是非、お願いしたい!」
ふらんは髪型を変え、大学の制服にもアレンジを加え始めると、同じ服飾科で話しかけてくれる人が何人か現れた。
のえるは社会学部法学科に所属している為、大学で会ったことは一度もないものの、寮の屋上でレレとヴェヴェの面倒を見たり、大学や趣味の話をした。
何より、ふらんは父子家庭、のえるは母子家庭で育ち、お互い欠けたものを探していた。そうして、家族愛探しのパートナーとなった。
-春休み-
1年が終わる頃、のえるとふらんはロリィタの専門店が並ぶイベントへと足を運んだ。
そこでふらんの大学の友達である、香椎とあに出会った。
ふらん「とあじゃん!って出店側なの!?」
とあ「ふらん。ええ、どういう舞台衣装に需要があるのか調査してて。良かったらふらんとそちらの方も協力して。」
お人形のような服に身を包んでいるとあは、のえるに視線を向ける。
ふらん「あ、紹介遅くなってごめんね!この人は香椎とあ。同じ服飾科なんだ!それで、如月のえる。学部は違うけど同じ寮なの!」
とあ「どうぞよろしく。」
のえる「よろしく…。」
???「とあ!お客さんがいるなら座ってないでご案内しないと!」
とあ「そうね。ふらんは友達だから、気が抜けてたわ。」
ふらん「その人は、とあの知り合い?」
とあ「うーん…ビジネスパートナーって感じかな。」
さくね「とあのお友達?これは失礼。波澄さくねと言います。以後、お見知りおきを。」
皇子のような服を纏ったさくねが、慣れたようにお辞儀をする。
さくね「僕は主に劇団の演出に携わっているんだ。とあは見ての通り舞台衣装を担当している。」
ふらん「すごい!2人って劇団入ってるの!?」
とあ「小さな劇団だから、時々役者もやらされるけど、夢だったから楽しいわ。」
ふらん「同い年でそこまで活躍してるなんて、やっぱり凄いよ!」
さくね「ということは僕とも同い年なんだね。学校の知り合い?」
とあ「ええ。ふらんは同じ服飾科で、そちらの如月さんは、ふらんと同じ寮で…」
のえる「社会学部の法学科だから、学部は違うけど同い年だよ。」
さくね「じゃあ全員来年度で13歳、成人ってわけだ。僕は芸術学部でも創造プロデュース科だから、あまりとあとも交流が少ないんだよ。」
ふらん「創造プロデュース科は芸術学部では珍しい3年制で特殊な学科だもんね。あんまり合同授業もないし。」
さくね「その代わり、2年では様々な企画で他の科の生徒とも交流しようと思っているから、期待していてくれ!」
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




