Peace6-4
-実習 朝-
学童の子ども達とハイキングをする日がやって来た。朝から山へ登り、実習生のゆら達は先生達に続き、子どもを見守っている。
ゆら「皆、植物に夢中になっていますね。やっぱり自然って凄いです!」
るか「なんか職業病みたいに、ふとした時に植物見ちゃうけど、子ども達が目を離せなくなるのは分かる。そんなるか達は子どもから目を離しちゃ駄目だけど。」
子どもの1人が、ゆらに質問する。
「これなんて花ー?」
ゆら「この黄色い花ですか?えっと…なんでしょうこの花…」
るか「多分、ニッコウキスゲじゃないかな…?ろわに聞かないと自信ないけど。」
「へー!」
「小鳥居先生詳しい!」
「じゃあ、こっちの花は?」
るかはあっという間に子どもに囲まれていた。何故かその輪の中にゆらも入っていて
ゆら「るか、凄いです!」
るか「何でゆらまで?」
ゆら「勿論子ども達のことはちゃんと見ていますが、純粋に博識だなと思いまして!るかも花に詳しいんですか!?」
るか「ううん全く。ただ、眠れない時にろわが植物図鑑貸してくれたから読んでた。」
ゆら「そんな時も植物だなんて、流石ろわですね…!」
山の頂上に着き、漸くお昼休憩になった。
ゆら「この後川遊びだと思うと、気が重いです…。何もなければいいのですが…。」
るか「それが1番心配だよね。その分休憩も長いし、大丈夫だと思いたいんだけど。」
ゆら「それに、ゆらはそんなに泳ぐの得意じゃなくて…。」
るか「でも、溺れない程度には泳げるでしょ?ここ島だし。」
ゆら「はい…。小学校でそれはもう毎日、放課後まで特訓させられました。でも、実践は別といいますか…。」
るか「そこはもう、流れに任せるしかない。るか達にとって毎日は、良くも悪くも冒険だから。明日何が起きるかも、今でさえも、何が待ってるか分からない。」
ゆら「…そうですね!」
ゆらとるかは気を引き締め、川遊びに臨んだ。
川は整備されていて、子どもにとっても浅めだった。流れもゆっくりとしていて、鳥のさえずりや葉が風に揺れる音が聞こえた。
無事に川遊びが終わり、先生が生徒の数を数える。しかし、1人足りなかった。
辺りを見渡すと、立ち入り禁止区画の川に溺れかけた児童がいた。先生達は用意していた水の入ったペットボトルを実習生に投げさせ、浮き輪を膨らませたり、並行して救急隊に電話をしながら、周りに助けを呼んでいた。
投げたペットボトルは、溺れている子どもの近くに着地するも、見つけられないのか、その子どもはペットボトルを掴まなかった。
近くまで人を呼びに行った実習生も、肝心な時に人が周りにいないらしく、数人の実習生と先生で遠くまで呼びに行くことに。
ゆらは、異変を感じた。
ゆら(あの子…見間違えでなければ、さっきペットボトルを遠ざけていました⋯。何か、ペットボトルに掴まれない事情でもあるのでしょうか…。)
先生は浮き輪を膨らませ、そこにロープを取り付ける。ゆらはその先生のところへ行き、
ゆら「その浮き輪を持って、ゆらが泳ぎます!」
「何を言ってるの!?道連れになる可能性もあるんだよ!?」
ゆら「でも、多分あの子、浮き輪だけ投げても、掴まらないと思います…。」
「どういうこと…?」
ゆらはロープがついている浮き輪をその子に向かって投げる。
「ちょっと…!」
案の定、その子は浮き輪に掴まらなかった。
「もしかして、見えてないのかな…!?」
ゆら「分かりません。兎に角行ってきます!」
「双葉さん!?」
るかは救急隊に電話を終えると、ゆらが川に飛び込んでいる光景が目に映る。
るか「ゆら!?」
ゆらは子どものところまでたどり着くも、子どもはゆらを跳ね除けるように抵抗している。
るか「どういうこと…?何でゆらに掴まらないの?」
段々と子どもの体力が尽き始め、やっとゆらは子どもを抱えることに成功した。
しかし、ゆらはロープがついていない浮き輪を持って行った為、上手く前に進まない。
すると、先生が即座にロープを投げる。
皆で綱引き状態となり、なんとかゆらと溺れかけていた子どもを岸にあげることができた。
るか「馬鹿ゆら。」
ゆら「ご、ごめんなさい。」
るか「これだから感情で動く人は苦手。溺れてる人には近づくなってよく言うじゃん。今の、危うく巻き込まれて死んでたからね?」
るかが涙を流す。
ゆら「るか…!ごめんなさい!本当にごめんなさい…。るかにああ言われたけど、やっぱり、考えるよりも先に体が動いてしまって…いいえ、そうやって言い訳するのは良くないですね…。本当にごめんなさい。」
ゆらの目にも涙が溢れる。
その時、背後から掠れながらも必死に訴えかける声が聞こえる。
「本当だよ!何で助けたの!?」
予想外の人物から、そう言われた。
それは、ゆらが助けた子どもだった。
るか「何言ってるの?その前にゆらにお礼は?」
「お礼って…別に助けてって…頼んでない…。」
子どもは、涙でいっぱいになった顔を隠すように、手で擦る。
ゆら「るか、多分、この子には事情があるんだと思います。ずっと投げたペットボトルや浮き輪を取らなかったので…。」
るか「…そうだったの?」
涙が落ち着いた後、子どもは救急車が来るまでの間に話してくれた。
その子どもは、親が離婚してしまったらしい。その理由は、自分のせいだと。
「よく2人が喧嘩してる時に言ってた。ぼくの教育がとか、ぼくの進学先がって…。だから、ぼくがいなくなれば、ママもパパも仲良くなると思って。」
ゆら「それで⋯ゆらに掴まろうとしなかったんですね。⋯ゆらも、自分なんていなければって思ったこと、何度もあります。でも話を聞く限り、君の場合は、それで解決する問題ではない気がします…。憶測でしかないですけど。」
「どういうこと…?」
るか「今の気持ち、両親に話してみた?」
「ううん…。言ったら、もっと仲が悪くなるんじゃないかと思って…何も言ってない。」
るか「それなら、話してみるといいよ。もし本当に君のことを大事に思ってるなら、きっと考え直してくれるから。…先生は、それが言えなかったから。」
「え…?先生の家も…?」
るか「状況は違うけどね。でも、出ていくお父さんに何も言えなかった。今もどうしてるのか分からない。だからそうなる前に、話せるうちに話した方が、絶対良いから。もし何かあったら、ちゃんと誰かに相談して。学童の先生でもいいし。溜め込む前に、話すんだよ。」
ゆら「そうですよ!1人じゃないんですから!」
「うん…言ってみる。迷惑かけてごめんなさい。」
るか「もう1つ、ゆら先生に言うことあるでしょ?」
「え?」
るか「助けてもらった時は?」
「…!先生、ありがとう…。」
ゆら「は、はい!親御さんと、きちんと話し合えるといいですね。」
そしてその子は、救急車に乗っていった。
ゆら「…本当に、るかの言う通りです。また考えなしに先走ってしまいました。ゆらがしてもらったら嬉しいことでも、他人からしたら迷惑なことだってありますよね…。ゆらは、消えてしまいたかったあの時、るかが見つけてくれたから、思い留まれました。でも、そうじゃない人だっているって、もっと考えるべきでした…。」
ゆらの足元には、何滴も雫が零れていた。
るか「そういうことじゃなくて…もっと…もっと自分を大事にしてよ!人を助けたいとか、自分はそれしかできないとか、そういう前に自分を大事にしなよ!じゃなきゃ…じゃなきゃ周りが悲しむって、悲しむほどの価値があるって分かってよ!」
ゆら「…!はい…。でも、どうやって自分を大事にしたらいいか…分からなくて…。」
るか「取り敢えず…突っ走らないで。今の子は異例だったけど、きっと本当に困ってて、ゆらに救われた人だっているから。」
ゆら「そ、そうでしょうか…。それならやっぱり、喜んで突っ走ってしまいそうなのですけど…。」
るか「もっと周りも見てよ。この状況を見てたのはゆらだけじゃない。せめて、るかがいる時は一緒に考えられるんだから。だから、先に行かないでよ。約束。」
ゆら「…はい!約束です。」
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




