Peace5-1
案内所まで行くと、丁度迷子の親もアナウンスをしてもらうところだったようだ。
親は子どもの元へ駆け寄る。
「心配したんだから!」
「ごめんなさい…。」
「本当にありがとうございます…!」
るか「あまり叱らないであげてください。親御さんと離れてから、ずっと寂しい想いをしていたみたいなので。」
子どもの親はそっと子どもを抱きしめる。
「ゆらー!るかー!ありがとう!」
ゆら「迷子にならないように、お祭り楽しんでくださいね!」
ゆらとるかは親と共に去っていく子どもに手を振った。
るか「あ、随分前にかすむからメールが。『穴場を見つけたから、送ったリンクの場所に集合』だって。」
ゆら「皆さんには本当に迷惑をかけてしまいました…。るかもごめんなさい。」
るか「反省会は後。兎に角急ご。」
歩いている途中、ゆらはるかに質問する。
ゆら「聞いたことがなかったのですが、るかって、どうして児童学科を選んだのですか?」
るか「…一番は、大人の身勝手な行動に振り回される子どもを減らしたい…が理由かな(るかみたいにならないように)。でも、そんなことなかなかできないから、まずは振り回された子どもの心のケアをしたいって思って。」
ゆら「るかが誰かに寄り添える理由は、そこにもあったんですね。」
るか「そういうゆらは?」
ゆら「ぼくですか!?ぼくは…ぼくみたいに社会で上手くやっていけない子どもが、自信をなくす前に、適切にその子達のケアがしたいんです。自分がこの世界にいてもいいんだって、1人でも多くの人に思ってもらいたいんです。」
るか「ゆららしい動機だね。だから、すぐに困ってる子どもを助けられるんだ。」
ゆら「そ、それはただ放っておけないだけで…。でも、皆さんに迷惑をかけてしまってますし、もっと落ち着いて行動できるように気をつけます。」
るか「それは本当にそう。」
無事、皆と合流でき、かすむとほまれが見つけた穴場から、花火を見ることができた。
花火も終わり、帰り道にるかは、ゆらに最近気になっていたことを尋ねる。
るか「最近、無理してない?」
ゆら「え?」
るか「かすむのことで色々あったはずなのに、無理に笑ってるんじゃないかと思って。」
ゆら「やっぱり、上手く笑えてませんかね…?」
るか「そういう訳じゃないけど…。」
ゆら「…ぼくは昔から不器用で、だから勉強や運動だけじゃなくて、友達を作るのも苦手で、惚れやすくて気味悪がられたりもしていたんです。」
るか「…それは、気味悪がる人に問題があると思うよ。」
るか(ゆらも、かすむみたいに恋愛で苦しんできたんだ…。それに、かすむと違って鈍感じゃないから、もっと沢山嫌な思いを感じてきたのかもしれない。)
ゆら「…ありがとうございます。でも、ぼくにも問題があるんです。周りとコミュニケーションを取るのが下手だったから。好きな人ができても、その想いをどうすれば良いのか分かりませんでした。そんなの、周りの人から見たら、人の形をした違う生き物のようなものです。」
るか「…それならるかもそうだよ、この社会で上手くやっていけないし。」
ゆら「るかでも、そう思うことがあるんですか?」
るか「まあ、食べることと寝ることくらいしか取り柄ないし。」
ゆら「それ取り柄だったんですか⋯いや、それ以外にもきっとありますよ⋯!」
るか「でもさ、結局人生において必要な才能は備わってるんじゃないかって思う。その不器用さ?も、ゆらが何かに気づく為にあるんじゃない?」
ゆら「あれ⋯その台詞⋯確かメメさんが書いて…やっぱり、るかだったんですね。」
るか「そう言えば、せれんの創作の歌詞候補にも書いたっけ?」
ゆら(るかはきっと、大変なことを沢山乗り越えてきたからこそ、夢の中でも現実でも人に寄り添えて、繊細で優しくて、温かいです。)
-るかの幼少期-
るかが小学校に上がる頃、親が離婚した。
るかの母は仕事人間で、有名企業に就職し、父と出会って結婚したものの、母は家事育児のどちらも出来ないので、父が家事をし、母方の祖母がるかの面倒を見ていた。
るかの祖母には2人の子どもがいたが、年下である、るかの母の方が優れていた為、母のことを贔屓していたらしい。
祖母はるかの家にしか来ず、かすむの母である、るかの母のきょうだいから母も祖母も嫌われていた為、介護も全てるかの母が背負う事となった。
父は一人っ子で自分の家族の介護もあるため、祖母の方まで手が回らず、疲弊した母に仕事をやめて介護に専念すればいいと言った。しかし、母は仕事をしない人生は考えられないと、仕事をやめず、夫婦喧嘩が絶えなくなり、お互い介護や仕事、夫婦関係で心身をすり減らしていた。
この国では優秀な家(主に社会貢献をしてきた家)は長生きができるという特権があるので、最後には介護が付き纏う。そうやって"長生きをしても良いことはない"と、政府は法律に異議を唱える長生きをしたい人々に平等を言い張っている。
るかの両親はどちらの家も優秀だが、介護施設に入れられる程のお金はないので、介護から逃れることはできなかった。家の中は常にピリついていて、結果離婚をすることとなった。るかの親権は母になり、るかの養育費は父が払い続けている。
るかはお父さんが家から出ていく時、「生きる為に必要な才能は全て揃ってる」と言われたことを胸の奥にしまい、上手くいかないことがあってもその言葉を思い出していた。今思えば、お父さんは自分に言い聞かせたのだと思う。そうしないと、満身創痍のお母さんと一緒にいたら、自分が引っ張られてしまうから。
-次の日-
ゆら「フィフィ、ぼく、るかに告白しようと思います。」
フィフィ「フィ!?」
ゆらは夏祭りの時に、るかを意識していたことに気づく。友達ですらなかったゆらの話を真剣に聞き、傍にいてくれた。それだけでなく、夢の中でもあんなに迷惑をかけたのに、嫌な顔一つしなかったるか。だからこそ、今までのように伝えられなくなる前に、と意気込んでいるゆらを、フィフィは引き止める。
フィフィ「ゆら、また相手に恋人ができるんじゃないかって焦ってますフィ?」
ゆら「⋯それは⋯。」
フィフィ「今はるかも何か思い悩んでるみたいですフィし、るかの気持ちを聞かないとですフィ。」
ゆら「でも、どうやって聞けばいいんですか⋯?もしかしたら、聞かれたくないかもしれないのに。」
フィフィ「それはですフィ…。」
ゆら「どうしたらいいのか、分からないです…。また、好きになったこと自体が無にならないか、怖くて…。出会わなければなんて思いたくないんです…。」
ゆらはハッとする。
(⋯っ!フィフィの言う通りです。ぼくはいつも自分のことばっかりです。皆だって辛い想いをしてるのに、いつも自分の辛いことしか見えていなくて⋯。)
ゆら「ぼくって本当、駄目ですね。ごめんなさいフィフィ。」
フィフィ「ゆら!思い詰めてほしいんじゃないんですフィ!でも、ゆらは大事なことを忘れてますフィ!」
ゆら「え⋯?」
フィフィ「好きになったことも、出会ったことも、全部ゆらを形成するものですフィ!告白できなかったら出会った意味はないのですフィ?友達は?」
ゆら「友達は大事です!でも、友達にも依存してしまいます⋯。皆が離れていかないか怖い⋯。お互い、利害の一致があるから一緒にいられるだけで、それがなくなっちゃったら⋯。恋人なんて唯一無二ですから、もっと深い関係なのに⋯」
フィフィ「それでもいいんですフィ!」
ゆら「え?」
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




