Peace3-1
-次の日 夕方-
ゆらは学校に行ったものの、かすむ先輩に恋人ができたことで茫然自失としていた。人がいなくなった教室で、失恋したという事実が胸に込み上げ、気がつくと涙が止まらなくなっていた。
しばらく泣いているゆらのところに、タイミング悪くドアを開ける音が聞こえた。ゆっくりとゆらの元へ足音が近づき、右で食品の入った袋が擦れ合うような音が聞こえた。
るか「これ、お菓子。食べれる?」
ゆら「⋯小鳥居さん⋯何でここに…。」
るか「お菓子食べようと思って教室に来たんだけど…あと、るかでいいよ。」
ゆら「そうだったんですね⋯。すみません、お見苦しいところを…。るか、ありがとうございます。」
2人でパンを食べながら、ゆらはるかに質問する。
ゆら「…聞かないでいてくれるんですか…?」
るか「うん。話したくない時もあるでしょ。それに、前にも一度あったし。」
ゆら(るか、やっぱりあの時のこと覚えていたんですね…。)
-1年前-
ゆらは大学の自由すぎる制度に馴染めなかった。質問してもまともに取り合ってくれない事務員や先生、上辺だけの学科の友達、徹夜が続く課題量に、知らされてもいないのに過ぎていく課題提出の期限に失望して、不器用ながらも必死でしがみついた。自分のように社会で上手くやっていけない子どもを助けたいと児童学科へ興味を持ち、やりたい事を見つける為に進んできたにも関わらず、専門校よりも何もできなくなっていった。死にものぐるいな日々に、ある日、プツンと糸が切れた。
ゆら(今いなくなれば…こんなことやらなくて済むんでしょうか…。)
ふとそう思い、夜中に工事中で立ち入り禁止の橋から身を投げようとした。
その時、犬の鳴き声と共に、犬の散歩をしているるかと会ってしまった。
るかとは同じ福祉学部なので顔見知りではあるが、話したことはなかった。身を投げようとしていたことを、るかが学校に報告してしまうかもしれないという恐れを抱いて、数分の沈黙が流れた。
ゆら「…学校に報告しますか…?」
震えながらも、最初に話をきりだしたのはゆらだった。
るか「…どうするのが正解か、分からない。でも、双葉さんがそうしたくなるの、凄く分かるから。」
ゆら「だから、止めないんですか…?」
ゆらは自分で発した言葉に驚いた。この状況を止められることは、今1番嫌なことのはずなのに。それでもゆらは、誰かに見つけてほしかったのだと、痛感する。
るか「止められないよ。そういう他人の重大なこと、選択する権利ない。」
るかはそう言って帰ってしまった。
だが、るかに見つけてもらったことにより、少し心が落ち着いた。一日学校を休み、かすむ先輩やみれい、ふらんに大学をどう過ごしているか相談する。かすむ先輩に優しい先生の授業や、単位の取りやすい科目を教えてもらったり、みれいからは先生に積極的に質問することを教えてもらい、ふらんからは一年で詰め込み過ぎないで、科目に優先順位をつけることを教えてもらった。
あの時はるかに相談できなかったが、今はるかに話を聞いてほしいと思った。
ゆら「あの…迷惑でなければ…話を聞いてもらえますか…?」
るか「うん。るかで良ければ。」
ゆら「ありがとうございます…。…好きな人がいたんですけど、恋人ができたそうで。今までもそうだったんです。好きな人と両想いになれるのは奇跡なんです。こんな想いするくらいなら、出会わなければよかったのに⋯。」
るか「…るかはそんなに誰かを好きになれたことないから、これが励ましになるのか分からないけど⋯出会わなきゃ良かった出会いなんて、きっとないよ。」
ゆら「え⋯?」
るか「だって未来なんて分かんないし、誰と出会うかなんて決められないじゃん。それなら、意味があって出会ったんじゃないのかな。」
ゆら「⋯。確かに、そうなのかもしれません⋯。ありがとうございます、るか...。」
るか「こういう時はご飯を食べて寝るに限る。」
ゆら「へ?」
るか「丁度、お茶漬けが美味しいって話題のお店があるんだけど、行く?」
ゆら「⋯!はい!でも、今沢山食べてなかったですか?」
るか「これは夕食前の前夕食。」
ゆら「何ですかそれ。」
-次の土曜日 夜-
日付が変わりそうな頃、ゆらは机で勉強をしていた。
ゆら(もし、メメさんがかすむ先輩だったら…気まずくて会いたくありません…。それに…課題が…)
その思いと反するように瞼は重くなり、夢の中へと導かれる。
ゆら(また、来てしまいました…。なるべく…メメさんには会いたくないのに…。)
そう思うも、教会にはいつも通り、8人と8精霊が揃っていた。
ろわ「大分芽が育ってきたし、今日は大きめのポットに植え替えよう。」
ふらん「はーい!」
レレ「レ〜!」
園芸用トレーの前に集まると、ゆらが草取りしたポットだけ、違う草が生えていた。
ゆら「ま、まさか…間違えて違う葉を残してしまったのでしょうか…。」
ろわ「そうみたい。代わりにろわのポット半分、分けるから…」
ゆら「ごめんなさい!大切な花を…花壇に植える花が減ってしまって…。」
ろわ「大丈夫。私も偶に間違えて花取っちゃうし、こういうのは慣れだから。」
フィフィ「フィフィもゆらのことちゃんと見てなかったですフィ。ごめんなさいフィ。」
レレ「レレ達がフィフィを呼んじゃったせいレ。ごめんレ。」
のえる「それだけじゃないよ。のえるがろわに聞きすぎて、ゆらの方に行けなくしちゃってごめんね。ゆらが一番離れた場所にいたのに、配慮できなかった。」
ゆら「そんな事ないです!ぼくがもっとちゃんと最初の手本を見ていたら…。」
みれい「大丈夫ですよ!草取りも見方を変えたら、花を摘んでるのですから!」
ミュミュ「それは、実際その通りミュ。雑草の方が生命力が強いミュから、どうしても他の花の存続の為には抜かなきゃいけないミュ。」
りおう「そう思うと…雑草も抜きたくなくなってきました…。」
リュリュ「りおう!?それは仕方ないリュ!」
ヴェヴェ「そうヴェ。共存する為には、犠牲も必要ヴェ。」
のえる「ヴェヴェ、もう少し違う言い方にしようよ…。」
ヴェヴェ「では…のえるとレレ以外存在価値ないヴェ。」
レレ「待つレ〜!ふらんは!?皆は!?レレは皆と一緒が良いレ〜!」
ヴェヴェ「レレがそういうなら…ここにいる民は存在を許可するヴェ。」
メメ「ヴェヴェ、上から目線やめるメ。」
◾︎◾︎「話を戻して、フィフィ…?が育てたこの植物も、何か有効活用できないかな?」
シュシュ「勿論色んな方法があるシュ!せっかくゆらが育ててくれたシュし、ここで取れた雑草は教会や神楽家で保管しとくシュ!」
ろわ「いいね。雑草は土づくりの材料にもなるし、ビニールの代用にもなって自然に優しい。」
ゆら「皆さん…優しすぎます…!」
ゆら(だからこそ、こんなに優しい皆に迷惑をかけないようにしないといけません…!失恋したのは悲しいですが、皆が呆れない自分でいなければ…!)
小説をあまり読まない為、脚本調になっています。




