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そして覇者になる ~織田信長の物語~  作者: ノーネアユミ
第四章 元亀争乱編

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4 姉川の戦い


 いざ浅井との決戦のため戦場に到着したが、城山を見た信長は汗をかく。


(小谷城めっちゃ攻めづれぇ)


 美濃を手に入れた際、山中の城を攻めるためさんざん苦労を味わった信長だ。

 城がそびえる山の規模で、手間の多さも予想がつく。


 谷間をうめる城下町はともかく、山の中腹にある本丸には勝利の工程が描けないのだ。

 ロクな登山道には兵が準備万端で待っているだろうし、それ以外の斜面から重い甲冑(かっちゅう)を着て登れるはずない。

 浅井長政には信長を敵に回すだけの武力と名城があった。



 何もしないまま帰るわけには行かないので、町だけ焼いた信長は攻撃の方向を変える。

 姉川を超え小谷南東の横山城に。


「まずは先に支城を落とす。本城はその後じゃ」


 横山城なら規模も小さく攻めやすい。攻めている間に浅井軍を引きずり出せるかもしれないし、そうでなくても小谷城近くに拠点を確保できれば上々。



 翌日、小谷城に朝倉の援軍が到着した。小谷を攻め続けていたら織田軍の損害は大きかっただろう。


 そして横山城を取られたら小谷城の不利は計り知れない。そんなことは浅井長政にも分かり切っている。

 長政は朝倉軍と共に出陣した。


「上様、浅井軍が出てきました」

「よし、迎え撃つか」



 六月二十八日の早朝、浅井軍は姉川ぞいに陣をしく。

 対岸の織田軍と向かい合った。

 敵は大軍ではあったが、信長も手は打ってある。


 同盟者の徳川家康に援軍を求めてあったのだ。

 徳川家には信長の娘五徳姫を家康の嫡男信康に嫁がせている。

 家康は慎重な男だ。信長を裏切るなど考えもしなかった。




 家康自ら率いる徳川軍が、織田軍に加わった。


「このたびの戦は我ら徳川が先陣を仕りたい」


 軍議で徳川家康が信長に申し出た。


「ならぬならぬ! 先陣は我らじゃ」


 織田家の家老、柴田や佐久間は猛反対。

 戦で最初に戦いを始めることはとても名誉なことなのだ。危険だけど。


 武士は名誉を重んじる。

 どちらが先陣を切るかで織田家と徳川家でもめたが、信長は織田家から池田勝三郎と丹羽五郎左を徳川軍に付けることにした。


「これでどちらが先でも構わぬだろう」


 これなら双方どちらが先に戦いをしかけても織田家としては面目が立つ。



 信長は尾張衆と美濃衆の連合軍を率い東北に進み始めたのは午前10時ごろ。

 浅井軍は川を越えてきた。


「よし、奴らが渡り終わる前に鉄砲玉を降らせろ」


 信長軍は岸に留まり敵を迎え撃つ。


 そのやや西方では徳川軍が姉川を越え出した。動こうとしない朝倉軍と戦うため。


 東と西で、別々に両軍がぶつかる。

 正面衝突は一気に激戦になる。


 数時間の激闘の後、川の水は戦死者の血で赤く染まった。



 姉川の戦いは有名な割に、信長の勝利と言えるか微妙な戦いだった。

 徳川寄りの記録では、数が多い朝倉軍を徳川が抑えたから織田も勝てたとある。しかしそれは家康の功績を際立たせたいだけであろう。浅井軍は数こそ少なくとも将の実力と兵の士気が高い。


 織田・徳川軍も浅井・朝倉も両方に被害が多く、どちらも兵を退かざるを得なかった。




 しかし浅井長政の横山城への救援は防げた。それこそが大きな成果である。


 援軍が来ない横山城は織田軍に門を開くしかない。

 小谷城を攻めるのにめちゃくちゃ好都合な横山城が、信長の手に渡った。


 その横山城を信長は木下秀吉に任せる。おそらく秀吉が調略をしたのだろう。



 信長自身は軍を佐和山に向けた。


 後に『三成に過ぎたるもの』とうたわれた佐和山城は交通の要所にあり、ここを抑えれば岐阜から京への往来がたやすくなるのだ。絶対に手に入れたい。


 七月一日、信長は丹羽五郎左らに城を囲ませた。自身は馬周りだけで上洛し、将軍に戦況を報告してすぐ岐阜に戻る。

 軍を立て直すために。


 しかし猶予はあまりなかった。敵はこちらのスキを突いてくるのだ。

 三好三人衆の生き残り三好長逸(ながいつ)が摂津で挙兵した。

 


 

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