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そして覇者になる ~織田信長の物語~  作者: ノーネアユミ
第四章 元亀争乱編

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2 金ケ崎の退き口

挿絵(By みてみん)


 近江周辺大ざっぱ地図


「お(やかた)様、浅井(あざい)軍の様子がおかしいと報告が」

「何じゃ」


 木の芽峠を越えている最中に側近が近寄り伝える。


「その、連絡におもむいた使者が浅井軍から追い返されました」

「は? なぜじゃ」

「どうも‥ 裏切りではないかと」

「裏切り? 誰が? 誰を?」

「長政殿が、お館様を」


 それでも信長は納得できなかった。


 確かに領地を接する浅井と朝倉に親交はあるのは不思議ではない。

 しかし戦国の世ではそんな情は意味をなさず、今現在の同盟の方を優先する。


 信長は義弟の野心を見誤っていたのだ。




義兄(あに)上の強さは疑わないが、それゆえ脅威でもある」


 浅井長政にとって信長は、ただの信頼できる同盟者ではなかった。

 信長の軍事力があれば畿内を押さえるのは時間の問題。

 しかしそうなると、浅井領を広げる機会は失われてしまう。


 信長も義弟には朝倉の領土をある程度は与えるかもしれない。しかし重要拠点は織田家が全て抑えてしまうのは目に見えていた。


 長政はつぶやく。


「朝倉を倒したところで手に入るのは越前の一部だろうが、今信長を討てば、美濃と尾張がそっくり手に入る、な」



 浅井長政は一世一代の賭けに出たのだ。


 軍才があるからこそ分かるのだろう。

 朝倉をはさみうちにできる策は、裏を返せば信長のはさみうちを可能にすることに。




「殿、浅井軍が裏切りました! どういたしましょう!」

「近江の城に放火されています、敵は六角、浅井と示し合わせたかと」


 信長が半信半疑でいる内に、裏切りの知らせが次々と届く。


(長政め、六角も引き入れたか)


 ある意味用意周到すぎる。この裏切りは急遽(きゅうきょ)決まったことではない。

 信長が若狭(わかさ)に進軍したあたりから計画は練られていたのだろう。



「ええい撤退じゃ! しんがりは‥池田勝三郎!」


 幼馴染の勝三郎に兵3千を預ける。


「わたくしめにもお命じ下され!」

「そなたは‥明智十兵衛! 分かった、池田軍を補佐しろ」


 明智は義昭の家来だが器用に何でもこなす。信長も重宝していた。



「それでは皆の者‥」

「それがしも!」


 退却を宣言しようとした信長の前にサル顔の小男が(おど)り出た。


(えっとこいつは京奉行に任じた木下‥誰だったっけ? まあやる気のある奴にはやらせよう)


「分かった、任せるぞ。勝三郎、十兵衛、あとえっと‥サル!」

「は、この木下藤吉郎秀吉にお任せあれ!」



 信長は撤退を始める。が、問題はもう一つあった。


「お館様、どちらに向かいましょう?」

朽木(くつき)以外あるまい」


 そう、問題はどこに逃げるか。

 琵琶湖東沿いの街道からは浅井軍が迫ってくる。

 西の若狭は制覇した直後。逃げなどしたら今度は猛攻撃を受ける。


「しかしそちらも浅井の領地ですぞ」

「他にどこが通れる! 黙ってワシに続けぇ」


 後退できるのは琵琶湖の西回りルートだけ。

 どうせそれしかできないのだ。今は全力で逃げるのみ!


 一目散に朽木に走った。



 朽木谷は今こそ浅井領だ。

 しかしそうなったのはたった二年前。元々その地を治める朽木氏は将軍家の奉公衆だった。

 都を追われた将軍義輝をかくまったりしている。


(浅井の傘下と言えども忠誠心は将軍家にある‥ はずじゃ)


 ある種の賭けであったが、信長は勝った。


 将軍の後見役である信長を、朽木氏は助ける。

 四月三十日、信長は無事京に生還をはたした。




 金ケ崎のしんがり主力は池田恒興らしいです。秀吉が自分の活躍を盛りに盛ったのでしょう。


 長政が裏切った理由ですが、義昭黒幕説は義昭にアリバイがありすぎて捨てました。

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