23-4 闇は消えても、また
異が死んだ。山守の地に移り住んだ、新たな民も死に絶えた。もう、誰も居ない。
山守神は山守の地を閉ざされ、囚われた隠を導き為さる。禍津国へ。
虫も獣も草も花も、全ての隠が姿を消し、鎮森は色を失った。けれど、辛いのは今だけ。
山守の地で他とは違う姿になった隠が、残らず人の世を去れば戻る。
ザワワッ。
「そうだね。」
ソヨソヨ。
「楽しみだね。」
鎮森の民は圓洲で、幸せに暮らしている。
アンリエヌの民になったのだ。もう、この森に戻る事は無い。けれど聞こえる。
幼児の笑い声、歌声がハッキリと。
「辛かろう、寂しかろう。」
祝辺は動かない、動く気も無い。
「エンさまなら、きっと。」
大岩を気の毒に思ったジルが、麓の拠点から化け王城に報告した。
和神が清め為さったのだ。再び闇堕ちする事も、闇の道と繋がる事も無い。
けれど放っておけば何れ、また狙われる。使い捨てられてしまう。そう考えて。
「そうか。」
才を揮えば戻せるが、あの岩は深く傷ついている。
「和様。山守の地は閉ざされ、待っています。囚われた隠が中津国を離れるのを、ジッと。」
けれど、このままではイケナイ。
「ジル。良いと言うまで、山守山に入ってはイケマセン。」
「はい。」
入り組んだ闇の道、地下空洞も消滅させた。山守社の北。大岩の下に作られた、あの異空間も。
天獄からの報告によれば團暴、残党狩りが終了。天獄軍が引き続き、大陸不良妖怪の処分を進めるらしい。
「大和。」
「はい、和様。」
キリリ。
「クゥン。」 オトモ、イタシマス。
キュルン。
「コレ、清和。」
「あの奥へは、もう行けません。だから天獄を経由して、と御考えなのでしょう? イヌなので飛べませんが、きっと御役に立ちます。」
モフン。
清和は他の使わしめと違い、隠になる前から和に仕えていた。
アンリエヌの新たな一族から主人を守れず、蹴り飛ばされた悔しさ。『もっと強ければ』、『戦える力が有れば』と泣きながら死んだ事を、今でも忘れずにいる。
だから、もう離れない。どんな時も御側に控え、切り刻まれても戦う。
和様を守り抜くと決めたんだ。隠になった今なら、それが叶う。
「大和さま。闇は消えても、また広がります。」
「それは、そうだが。」
「私には禍津国で得た闇耐性、素戔嗚尊に鍛えられた精神力。鋭い嗅覚、聴覚。一吠えで闇を開く力も有ります。」
えっへん。
「和様を背に乗せ、走る事だって出来ます。」
キラン。
「ふふっ。頼もしいわね。」
和に撫でられ、御満悦。




