23-5 隠による
やまと中津国、人の世。中の東国、霧雲山の統べる地。
山守の地は閉ざされているが、和は化け王で神。その気になれば何だって出来てしまう。
「頼もう!」
バーン。
「なっ、和神?」
「山守神。使わしめを残して、山歩きですか。」
平良の烏も連れず。
「いいえ。この地に囚われた隠を合繫谷へ、と思っているのですが。」
難しそうですね。
「纏めて清め、壷か甕に入れて運びましょう。」
楽ですよ。
「そんな壷や甕、この地には・・・・・・。」
神は人の世の物に触れられない。浮かせて動かせるが、人を驚かせてしまう。
そもそも見える目が無ければ見えないし、聞こえる耳が無ければ聞こえない。そんな存在なのだ。
アンリエヌ化け王は皆、はじまりの一族。
人とは違う生き物なので、人には使えない力が使える。それが才。収集の才を生まれ持つ化け王に、出来ない事は無い。
天界で神格化した和なら、猶更の事。
「おや、イケマセンね。憎しみを抱き、闇堕ちした隠が混じっています。」
山守の地に移り住んだ新たな民は、異によってバケモノにされた。と言っても過言では無い。
「禍津国へと御考えのようですが、滝壺に閉じ込められるダケですよ。」
合繋谷には右牙滝と左牙滝、二つの滝が落ちる。その滝壺は大きく、清められずに飛び込んだ隠が閉じ込められるのだ。
出られずに。
「閉じ込められた隠は、滝に打たれて清められる。そう聞いたのですが、違うのでしょうか。」
「隠による、としか。」
清和は和から預かった、山守の守り袋を首から提げていた。
だからだろう。和が迎えに来ると信じ、ジッと絶えられたのは。
もし、あの守り袋を提げていなければ。
考えるマデも無い。闇堕ちし、憎しみを抱いていただろう。
「山守の新たな民を、あの地に囚われた隠を救いたい。助けたい。そう、お考えなのですね。」
「はい。」
山守の民は多鹿のカヨに、呪いの種に滅ぼされた。根絶やしにされたのだ。
死んで隠になった山守の民は、鎮森から追い出される。追い出され、戻るしかなかった。
闇が噴き出す山守の地へ。
「鎮森はまだ、新たな民を。」
受け入れようとシナイ。
祝辺の食糧事情は改善された。とはいえ、良くは無い。
山守の地から人が消えたのだ。農作物を分け与える事は無いし、何とかなる。そう思われていた。
「和神。祝辺の地は、呪われているのでしょうか。」
幾度、清めても変わらない。
「祝辺の民が闇を抱えた。という話は聞きませんが、山守の民を見ているようで。」
気になってしまう。
祝辺の民に限った事ではない。
どこかの民を養っている、守っている。そう思う事で保たれていた『何か』が崩れ、表に出たのだ。
本性が。




