23-2 救いたいのに
オビスは口減らしのため、山守神に捧げられた。
山守の村長の倅として生まれ、死んだ幼児の骸に、闇堕ちした山守の隠が入り妖怪化。
鎮森に入ったのは山守の民と戦い、勝つため。食べ物を探し、力を付けるため。
赤い顔に白い髪、ギラついた目に曲がった角。大きな牙が二つづつ生え、裂けた口から出ている。そんな幼児にジロは、オビスと名付けた。
羊の角に似ていると言って、優しく撫でながら。
鎮野社の祝女頭からは『赤い顔の角持ちさま』と呼ばれているが、オビスが守るのはジロの子孫。鎮野では無い。
そんなオビスが和に仕えるのは、ジロの孫だから。
人で無くなっても、その姿が変わっても和は和。
「社守なんだ。」
和社を守るために、ココに居る。
オビスが唇を噛み、俯く。
シロがソッと頬を舐め、慰めた。一隠じゃナイよ、と。
「もう、そろそろか。」
木でも岩でも思いを抱く。その思いが強ければ人に伝わり、祀られるのだが脆かった。
「和神に清められたのだ。闇を抱いても堕ちる事は、もう無い。」
とはいえ、このままでは何れ。
「はぁぁ。」
ひとつ守が溜息を吐き、祝社の外へ。
「また増えた。」
山守の地に縛られた隠の魂が、山守と祝辺の境を彷徨っている。
「鎮森へも行けぬのか。」
助けを求めるように、閉ざされた空間を叩いている。その度にジュッ、ジュッと焼かれるのに。
「まとめて清めるには、足りない。」
だからと捨て置けば、闇に呑まれてしまう。
「急がせるか。」
祝社に戻り、夏を呼び出す。山守へ式を飛ばし、探らせるために。
ザワッ。ザワワッ。
不毛の地となった山守を鎮森が呑み込む。少しづつ、少しづつ。
「見つけた。」
祝辺の獄に忍び込んだ八が、ニヤリと笑う。
「山守の新たな民、異。ココから出たいか。」
山守の新たな民は祝の力を持つ子が生まれたと喜んだが、闇を思いのまま動かし、影を縫うことで操る呪いの力を持つ妖怪と人の合いの子。
それが異である。
強い恨みや憎しみに突き動かされ、姿を見せられる獣や人の隠が一つの骸に入り、生まれた妖怪が祝人の孫娘を襲って孕ませた。
生まれた幻妖は三日で嬰児から幼児に成長。その容姿は恐ろしいホド整っており、山守に住み着いた男たちを骨抜きにする。
「な、にを。」
祝辺の獄に放り込まれ、弱るばかりで動けない。そんな己に近づくのが、良い守であるワケがナイ。
「もう一度、闇の道を。」
ハッ。何を言い出すかと思えば、そんな事か。
「ココから出せ。」




