23-1 あの頃へ
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山守社の北で砕けていた大岩が倒れた。深い嘆きが圓洲にまで届き、不毛の地となった山守を鎮森が呑み込む。
大岩は願う。山守と祝辺が割れる前、土に埋もれていた頃に戻りたいと。
喜悦編、はじまります。
大陸から伸ばされた闇の道は、不法侵入した大陸妖怪ごと閉鎖。
山守の地に建てられた館も、地下空洞と共に消滅。
「どうして。」
山守の祝が、アキが務めを果たしていれば違った。
「どうして。」
地が割れて、山守と祝辺が離れる事も無かっただろう。
「どうして。」
山守から闇が噴き出す事も、鎮森の民が他所へ移る事も無かったハズだ。
その昔、山守社は頂に在った。けれど山守と祝辺を分断した、あの一件で倒壊。
再建したのは山守の民ではなく、祝辺の守。選ばされたのは鎮森の際、村外れ。
鎮森の民は山守に、山守の民に殺された。祝の力など無いのに有ると、隠し持っていると言われて。生きたまま。
「苦しかった。」
地が割れる前は賑やかだった。ほとんど埋まっていたけれど、幸せだったんだ。
小さな獣が歌ったり、駆け回ったり、鳥が羽を休める事もあったな。
山守の民は地が割れる前から、ずっと変わらない。祝辺の民に、祝辺の守に頼りきり。
だから風通しが悪く、日当たりも悪い崖下に落とされたんだ。
「カヨ。」
大地震で投げ出され、離れた所に落とされた。砕ける事は無かったが、ドゴッと割れた。
割れて出来た洞に住み着いたのは、山守の民に攫われた多鹿の娘。
呪いの種になり、山守の民を根絶やしにする事だけを願った、哀れな娘。
「寂しい。」
この地に落とされ、はじめは嘆いた。寂し過ぎて。
森の中、開けたトコロに落とされたのにと、繰り返し。
雨や風を凌ぐ事は有っても、住み着く事は無い。そんな小さな生き物を引き止める力も、閉じ込める力も無かった。
ゴトッ。
山守社の北で倒され、割れた大岩が倒れる。
思い出したのはカヨと、幼児の声。
洞に住み着いたカヨが琴を弾きながらティ小のうたを歌い、鎮森の民が聴きに来る。子が歌い、踊り、笑う。
はじめは閉じ籠っていたが、洞から顔を出すようになった。そのうち手を振ったり、岩の上で日向ぼっこすることも。
人は近づかなかった。けれど隠は、鎮森の民は違った。違ったのに。
「戻りたい。」
あの頃へ。
深い嘆きが鎮森に広がり、伝わった。祝社の南、冀召にある和社へ。
「わかるよ。」
オビスが呟く。
「でも、どうすれば良い。」
使い捨てられたのは、壊れても朽ちない大岩。残された道は・・・・・・無い。




