22-38 赤飯を炊かねば
アルバが広げた竹簡は蠶蛾の妖怪、蠶贓に関する裁判記録。
天獄のモノがナゼ地上で発見されたのか、その経緯は記されてイナイ。
「清和からの報告によれば地下に、冥界とは異なる空間が広がっていたと。」
音もなく現れたのは狼の魔物、アルジャン。
「ホウ。」
アルバが後ろに回した頸を戻し、ネージュが見つけた護符を読む。
「乳のように白い蛾、その幼虫に気を付けろ。吐き出す糸は切れず、どこまでも伸びる。」
アルバ、ネージュ、アルジャンは思い出す。和音が言っていた事を。
「雷獣に結ばれていた糸を焼き切り、回収なさった。」
アルバが切り出す。
「炎の才に、切れないモノは無い。」
アルジャンが吻を上げる。
「回収された糸は恐らく、蠶妖怪のモノ。」
そう言いながらネージュが古地図を広げ、指し示す。
「天竺と唐の間に聳える山、その尾根に冥界への扉が隠されている。」
アルバとアルジャンが息を呑む。
「天獄を経由すれば、辿り着けるだろう。」
「ネージュが言うんだもの、間違いナイわね。うふふ。」
「なっ、和様ぁ?」
「考え事には、甘い物がツキモノよ。」
ニッコリ。
ティーラから届けられた果実の中から、ヴァイスが選んだのは三種の桃。
タルトレットにしたのは、食べ過ぎを防ぐため。
「はい、どうぞ。」
ニコニコ。
一口サイズのソレは、宝石のように美しかった。食べるのが勿体なくなるホド。けれど食べる。
大好きなオヤツを『どうぞ』と、分けて下さったのだ。断るなんて有り得ない。
「ありがとうございます。」
パクリ。モグモグ、ゴックン。
和は聞いた。糸を焼き切る時、舌打ちを。
アレは異空間の奥から、糸を伝わって届いた音。
切ってしまったのだ。もう辿れない、手繰り寄せられない。けれど方法はある。切っても伸びる、その先を出せば良いのだ。
天竺と唐の間に聳える、その山稜に。
「天獄を経由すれば、片付けられるよネ。」
ぽかぁん。
「天獄から神獣が来るから、頼んでみようっと。」
あぁ、コレは止められないヤツだ。
カー様、和姫は今日も元気です。さすがジロの孫。目が離せません。
「そうだ。離宮で働く皆にも、お菓子を差し入れよう。何が良いかな。」
と言いながらスキップ。
「上手になりましたね。」
ジーン。
片足づつ交互に軽く跳びながら進む。簡単なようだが、幼児には難しい。それが出来るようになったのだ。赤飯を炊かねば、と思うアルバたち。
その思いが伝わったのか、化け王城の厨房でヴァイスが小豆を洗い始めた。
「明日の御飯はモッチモチ♪ お豆が入った赤いヤツ。」
るんるん。




