22-34 まさかぁ~
山守神は穏やかな山神。そのような目を為さる神ではナカッタのに、どうして。
いや違う。そんな山神を変えてしまう、恐ろしい事が起きたのだ。
「流を呼ぼう。神成山へ使いを。」
「はい。」
和山社の使い蛇がニュルッと現れ、スススと下がった。
渦風神の使わしめ、流は猫又の大妖怪。
懐にハンムラビ法典の一部が記された巻物。指の先がチョコッと触れたダケでも効力を生じる、オッソロシイ代物を入れている危険なニャンコである。
「嫌だ。」
プイッ。
「渦風神、そう仰らず。」
と言いながら、流に木天蓼を差し出す。
「やまとには他に、頼れる御猫サマは。」
チラリ。
使い蛇も慣れたモノ。
和山社から持ち出したのはアンリエヌ領、圓洲産の木天蓼。『ニャ酔わセル』である。
「参ります。」
『一度で良いから食べてみたい』と思っていた数量限定、幻の逸品を胸に抱き、目を輝かせる流。
「御許しいただけないなら和社へ」
「許す。」
流は本気だ。もし止めれば、直ぐにでも『辞める』と言う。
そんな目をしていた。
「その代わり、早く戻れ。良いな。」
「はい、渦風神。」
流の頭の中は『ニャ酔わセル』でイッパイ。
きっと美味しい。美味しいに違いナイ。あぁ、早く食べたい。それダケ。
「ニャンだい、これ。」
器に入れられた大陸妖怪、虎杖を見た流が呟いた。
「猫は液体らしいケド、限度ってモンがある。ニャに事にもね。」
パクリと木天蓼に齧り付き、ウットリ。
瀕死の虎杖を見た流が白澤に連絡。その数分後、西の空に稲妻が走る。
「どうするの、これ。嫌だよ。」
流からの呼出状をスッと遠ざけ、頭を抱える神獣。
「白澤よ、諦めろ。」
「じゃぁ麒麟、代わりに行って。」
「断る。」
生草を踏まず生物を食わない一角獣、即答。
猫又の大妖怪、流が動いた。その知らせはアッと言う間に天獄に広まる。
呼ばれたのは神獣、白澤。けれど恐らく、アレが絡んでいる。
「團暴の首領、奇羅復活を主導したのは。」
コソコソ。
「金臣、跋扈。」
ヒソヒソ。
「銀臣、妄染。」
ザワザワ。
「蠶贓。」
ピタッ。
蠶贓は絸緝の首領で、蠶王と呼ばれる下級妖怪。
「まっ、まさかぁ~。」




