22-32 こちらに御坐す御方を何方と心得る
雷獣に結び付けられていた糸は、まるで生きているようだ。時間停止機能つき容器に入れたのに、焼き切ったのに伸びている。
才で作った品だ。神でも開封不可能、破壊も不可能。
けれど、急いだ方が良い。
「鎮野、大泉、鎮森を守るため、閉ざす。」
腰に手を当て、和が微笑む。
「はい。」
清和、日和、和音もキリリ。
異が開いた闇の道は遠く、大陸まで続いていた。それを残らず潰すため、用いられたのは和音の毒。
山守から噴き出し、溢れた闇をタップリ食らったのだ。余る事は有っても足りなくなる事はナイ。
「外から来られなくすれば、それで良い。内に残るのは統べる神に御任せする。清和は禍津神、日和は天津神に御知らせして。和音、行こう。」
「はい、喜んで。」
和音は頑張った。
大きく息を吸い、スゥっと毒を注ぎ込む。その繰り返し。
侵入していた大陸妖怪ごと、ドロドロに融けた道は塞がる。塞がれば閉じ、もう開く事はない。
永遠に。
失われたモノは戻らない。どんなに望んでも、強く求められても決して。それが世の常。引っ繰り返せるとすれば? 神。
似た力なら在るが、神通力など存在しない。
それに近いのは才。はじまりの一族、その直系だけが有する特殊能力だろう。
つまりアンリエヌ国王、先代から全ての才を継承した和だけが不可能を可能に出来る。というコトになる。
「ジャンジャン狩るわよぉ。」
大量殺戮兵器と猛毒製造機、発動!
霧雲山系まで続いていた道は全て、通行者ごとドロドロに融けて閉ざされた。
「よぉし、次!」
「ハイッ。」
勝手に通された通路を潰す。それダケの事だが、その遣り方がエゲツナイ。
『いつイツから、この道は使えなくなります』とか、『この道は今から閉ざされますので、引き返してください』とか、そういう『お知らせ』があって然るべき?
「抜け道なぁし。」
手差し確認する幼女。
「なぁし。」
舌を出し入れする蝮。
イヤいや、ないナイ。
こちらに御坐す御方を何方と心得る。臣を取り返すため天界へ赴き、巨大神殿を瓦礫に変えたアンリエヌ化け王、和神で在らせられるぞ。
えぇい、頭が高い。控えぇ、控えおろぅ。
「ギャッ。」
ジュゥゥ。
「ギェッ。」
ジュワァァ。
糸風船を膨らませるように、スゥっと吹き込まれた猛毒が不法入国者を融解する。
やまと側から注ぎ込まれるソレは、噴き出した闇から精製された代物。光の元でなら一発で判るが、闇の中では判らない。




