22-22 大丈夫かしら
広滝の底に、強い力を持つ何かが現れた。闇をグングン、ものスゴイ勢いで清めている。と思ったけど違う。
食らって、いや吸い込んでいるのだろう。
そう思って覗き込んだのが悪かった。
何だよ、何なんだよ。聞いてナイよ。闇が噴き出した山守の地に、強い力を持つ生き神が居るなんて!
「名は。」
「九尋神の使わしめ、尋で御座いますぅぅ。」
と言って暴れる妖狐。
九尋神は武闘派の山神。
神議りに参加するため訪れた出雲で、大陸妖怪に絡まれると同時に秒で倒し、目についた七五三縄で拘束。
大社に引渡すも受取拒否され、仕方なく大社の大札を用いて強制服従。
流れるように九尋社雇用契約書に押印させ、使わしめにした傑神で在らせられる。
「シズエとは、どのような。」
「へっ。」
ピタッ。
「どど、どのようなって。」
ポッ。
尋は妖艶な九尾の白狐。元、大陸妖怪。メス。
出雲で好き放題していたら、九尋神にぶつかると同時に秒で倒された。そのまま七五三縄で拘束され、大社に突き出される。
結果、まさかの受取拒否。
呆然としていたら強制的に九尋社、強制服従雇用契約書に押印させられた。以降、従順に。
なったように見えるが毒舌。
「シズエが好きなのだな。」
愛は性別を越える。
「ち、ちがう。違いますぅぅ。腐れ縁ってヤツですよ。」
と言いながら、頬を染める尋。
「シズエが好きなら血を寄越せ。」
「ホエッ。」
急にビタンと処置台に縛り付けられ、首筋の毛をジョリリと剃られた。前足も後ろ足も、自慢の尻尾も動かせない。
「いやぁぁ、殺さないでぇぇ。」
「殺しはせぬ。」
と一喝され、耳をピクリと動かすコンコン。
「使わしめを殺すワケなかろう。」
「そう、ですよね。」
妖狐、それも九尾だ。驚異的な回復能力を持っている。
破裂した内臓や砕けた骨は、そのうち治るだろう。けれど折れ、毛皮を突き破った骨はイケナイ。
「シズエは多くの血を失い、死にかけている。」
ピクッ。
「血を調べる。型が同じならシズエに、尋の血を入れる。良いな。」
「はい。でも、殺すなよ。」
ギロリ。
大人しく検査を受けながら、尋は思う。
『殺すなよ』なんて凄んじゃったケド、大丈夫かしら。化け王よね、アンリエヌの。和神よね、いろんな力を御持ちの。
・・・・・・終わった。
どうしよう、締められる。九尋に戻りたくない。でも、他に行くアテなんてナイし。シズエ、お願い。目を覚まして。
「山守社にアタシを匿って。友達でしょう?」
ふぅ。
「尋よ。心の声を口に出して、どうする。」




