表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/47

7-14

 その足で、レーシュの家へ向かったヘリオス。

 玄関のチャイムで呼び出すと、すぐに出て来た。


「あら、いらっしゃい」


 レーシュの顔にはまだ傷が残っているが、もうそんなに酷くはなくなっているように見えた。


「……ねぇ、あなたが殴った傷、治りそうにないんだけど」


「訴えるか?」


「だから、訴えたりはしないって。……まぁ、これでもだいぶ治まったのよ? 後は化粧で隠せばなんとかなる感じよね。日にち薬か」


 はぁ、とため息をついて、レーシュは言った。


「こんなところで立ち話もなんだから、入っていけば?」


 ヘリオスは少し考えてから、返答する。


「そうさせてもらう」


 いつぶりかの、レーシュの家は、落ち着いたゴシック色の部屋。

 レーシュもヘリオスと同じく一軒家ではなく、マンション住まいだ。

 間取りはヘリオスの部屋と変わらない。

 リビングには、黒地で花が金と赤や青、様々な色目でゴブラン織りされているラグマットが敷いてあり、そこには猫足で手彫りの薔薇のモチーフが目を引く、パープルのアンティーク風の二人掛けのソファ。

 ソファと同じ形のドレッサーやキャビネット、ジャガード織りの赤の遮光カーテンの下には、スカラップが施された黒のレースカーテン、天井にはブラックカラーのシャンデリア。

 ソファの前には、棚部分と脚部分が曲線のデザインの、強化ガラスの天版の黒の棚付きローテーブルがある。


「座って。珈琲入れるから」


 レーシュがそう言ってキッチンに入るのを見て、ヘリオスはソファに座る。

 部屋を見回しながら、幾度か訪れたレーシュの部屋に変わっていないなという感想を持ったヘリオス。


「お待たせ」


 ティーカップに珈琲を持ってレーシュはそれをヘリオスの前に置いた。

 その隣に、自然に同じように珈琲を持ってレーシュが座る。


「浮かない顔してるわね」


「……あ?」


「なんでそんなに凄んで聞くのよ。でも、事実よ事実。鏡見てみればいいわ」


 ほら、とドレッサーを指さされる。

 ちょうどそれはヘリオスの直線状の真正面にあるもので、必然的に鏡で自分の姿を確認する事が出来る。

 言われた通り確認すると、もやもやとした表情のヘリオスがそこにいた。


「……ねぇ、何かあったの?」


 ふと、レーシュに問いかけられる。

 少し考えて、ヘリオスはその問いかけに返答する。


「セレーネと、一緒にデートをした」


「……まさか喧嘩?」


「違ぇよ。……その、初めて自分の家に上げたんだよ。女を家に上げるのも初めてだし、セレーネは他人の人間の家行く機会もなかったって言うし」


「上げてどうしたのよ? まさかもうそこまでの関係なの? あなたたち」


「まだ違ぇよ。だから、悩んでんだよ」


「……話が全く見えないんだけど」


 呆れ顔のレーシュが、話を進めるようにと言うと、ヘリオスは飲み込みかけた言葉を吐き出すことにした。


「――俺、あいつと結婚したいんだ」


 その言葉に、レーシュは驚いた。

 ヘリオスが数多の女性にそう言われていたのは、レーシュも知っている。

 自分ですら望んだ事だったから。

 けれど、ヘリオスは結婚をするという気は毛頭ない人間だった。

 何が驚いたかと言うと、そんなヘリオスが結婚を考えたという事だった。


「ヘリオスが、結婚?」


 驚いたまま、レーシュが聞いた。


「……俺も、驚いたんだよ。俺はそんなの全然興味なんてなかったのに、気づいたらあいつと一緒にいたくて、あいつと一緒に一生を添い遂げたくなって」


「驚いた、ほんと。……で、それで悩んでるわけ?」


「そうなるな」


 少しの沈黙。

 やがて、レーシュが沈黙を破るように口を開いた。


「セレーネさんは、あなたがそれを悩んでるって、知ってるの?」


「……知るわけねぇだろ。そもそも、結婚も知らない。あいつ、デートも何も知らないぐらいだからな。恋愛も知らなかったらしい」


「……確かに、あの子ちょっと抜けてるわね。他人に勝手について行くぐらいだし。本当に何も知らなさそうね。ヘリオスの話を聞く限り」


「俺と一緒に添い遂げると言う意味すら、わかってなさそうだからな」


「……それはなんというか、難しいわね……」


 うーん、とレーシュは考え込む。

 自分がそんな性格ではないから、余計に考えてしまう。


「……あたしがとりあえずセレーネさんと友好的に会話出来る状態なら、何かしらあなたにヒントが与えられると思うんだけど……」


 そう言ったレーシュに、にやりと笑んで、ヘリオスは言った。


「明日、俺とセレーネの家に行ってくれないか?」


「は? ちょっと待って。急すぎじゃない? しかも家?」


「あいつの妹にも伝えてある」


「ちょっと待ちなさいよ。妹さんにまで? ……ったく、どこまで勝手なの、あなたって」


「知ってるだろ、俺の性格」


「知ってるけど……。仕方ないわね。行くわよ、どうせ謝罪はしないといけないと思ってたから。セレーネさんにはもちろんだけど、妹さんにもね」


 なんだか上手く嵌められたのではないかとヘリオスを疑ったレーシュだったが、もう彼の性格を把握しているので、仕方ないのかもしれないと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ