7-13
夕刻。
セレーネを家に帰すために、一緒に街を歩く。
「……明日も、会えますか?」
ふと、セレーネがヘリオスに問いかける。
「毎日会いに行ってるだろ。明日も会いに行くに決まってるんだから、会えるよ」
「……よかった」
ほっとしたような表情で、セレーネは胸を撫で下ろした。
「明日は、レーシュを連れてってやるよ。どうせ挨拶ぐらいしに行くって言ってたから、この後ちょっと寄ってくる」
この提案は、ヘリオスが突然思いついたのだ。
唐突な提案で、レーシュがどういう反応をするかわからないが、まぁ大丈夫だろう、とヘリオスは思っていた。
ただ、イェソドが受け入れるかどうかが不安材料ではあるが。
「……じゃあ、帰ってから掃除頑張らなきゃですね……!」
「……お前さ、実は掃除苦手だろ」
「え!?」
「顔に書いてる」
「そ、そんなことありません!」
「いや、妹に手伝ってもらってる段階で苦手だろ」
「もうっ! ヘリオスさんの意地悪!」
「ははっ! そんだけ元気ありゃ、辛いのも少し、吹っ飛んだんじゃね?」
「……え?」
ふと告げたヘリオスの言葉に、セレーネの言葉が止まる。
「そんだけ俺に反論出来れば十分だよ。……ほら、もうすぐ家だぞ」
「……え、あ、ほんとです……」
もうすぐ家だ、と言われたセレーネは少し寂しそうな声を出したが、ヘリオスが念を押すように言った。
「ちゃんと明日も会いに来るから。ちゃんと待ってろ、な?」
「……絶対ですよ?」
「約束する」
そして、家の前に辿りつくと、セレーネの帰宅を察知したのか、イェソドが家の中から出てくる。
「あ、お帰りー。……うわ、またイメチェン……」
「妹。今日は迷いなくこれに決まったぞ。セレーネも気に入ったらしいからな」
「……なるほどなー。お姉ちゃんっぽいなー。あたしもお姉ちゃんを着せかえたくなるな、これは。ヘリオスさんが羨ましいよ」
「……もう、いーちゃんはすぐ私をおもちゃにするんですから……」
困ったように、セレーネが言う。
「おい、妹。明日、俺と別にもう一人、ここに来るから。……っても、お前が多分敵視してる奴だ」
「……この前の? お姉ちゃん誘拐犯?」
「……当たってるけど、その言い草はもうやめとけ。俺が、セレーネの友達になってくれって頼んだんだから。努力を無駄にさせんな」
「お姉ちゃんの友達!? あんな人が!? え、ちょっと意味わかんないんだけど」
「いーちゃん。レーシュさんは反省なさってるんです。ですから、許してあげてくださいね。それに、私のお友達ですから」
「……うっわー、お姉ちゃんって何言っても説得力なく聞こえるよね」
「ひ、酷いです! いーちゃん酷いです! お願いしてるのに説得力ないなんて!」
「……うん、まぁ、いつものことだけどさ」
苦笑いを浮かべて、ぽつりと聞こえないように呟くイェソド。
仕方ないな、と言うようにため息をついて、言った。
「わかりました。とりあえず、明日来るんですね?」
「あぁ。連れてくる。いつもの時間に来るから、セレーネが慌てないようになんとかしてくれ」
「それは少し無理な相談かもしれないですけど……」
「じゃあな、また明日」
「はい。ヘリオスさん、気をつけて帰ってくださいね」
「ありがと」
そう言って、セレーネの家に背を向けて歩き出す。
見えなくなるまで手を振っているセレーネを見て、イェソドは少しだけ安心した。
――きっと少し、お姉ちゃんは変わったんだな、いい意味で。
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