7-8
カフェでのんびりとそんな話をして、再び二人で街を歩く。
今日の目的は、セレーネに新しい服を買うことだ。
「俺の事は気にしなくていいから、見たい店見ろよ」
そう言うと、「でも」と一瞬反論しかけたセレーネは、言葉を詰まらせた。
多分それを言うと、また堂々巡りになってしまうのだろうな、と学習したからだ。
「はい」
ぐっと言葉を飲みこんで、そう言うと、ヘリオスは満足そうに微笑む。
確かに、本当に構わないのかとはセレーネとしては思うところではある。
けれど、ヘリオスが以前言っていた言葉を思い出す。
――好きな女に好きなもん買ってやるのも彼氏の務めだよ。
ヘリオスはセレーネの彼氏だ。
ほんの少し、甘えてもいいのだ。
ただ、異性に甘える、と言う事の経験がないセレーネは、頭の中でどうすればいいのか考えていた。
すると、ヘリオスの足がぴたりと止まった。
急な出来事で、セレーネの足も同じく止まる。
「どうかしましたか?」
問いかけるのにヘリオスの方を見ると、そこには以前ヘリオスと訪れた洋服屋があった。
当たり前だが、外のトルソーの洋服は、別のものに変わっている。
「入るぞ」
「え、あ」
手を引かれて、店内に入る。
「いらっしゃいませ。あ、先日の」
店内に入ると、以前対応してくれた店員がそこにいた。
どうやら二人を覚えていたらしい。
「今日はどのようなものをお探しですか?」
店員が問いかけると、ヘリオスが言った。
「彼女に似合うものを」
そう言って、ヘリオスがセレーネに言った。
「お前も自分で気に入ったのを見ろよ。時間ならいっぱいある。――それに、この前ので気づいた。お前、ここの服、好きだろ」
「え!? あ、えっと、その……」
ヘリオスが唐突に言った言葉にセレーネは挙動不審になる。
確かに、セレーネはこの店の洋服には憧れがある。
現に、以前買ってもらった服も大切に着ていたし、憧れの店の服を着れるということだけでも嬉しかったのだ。
なのに、構わないのだろうか。
不安になってちらりとヘリオスの表情を伺う。
「俺の事は気にすんな。大丈夫だから」
そう言って、セレーネに言って、微笑む。
再び、この店の洋服を着れるのだと、少しの高揚感。
それが芽生えた瞬間だった。
†




