7-5
二人が初めにやって来たのは、カフェ。
ヘリオスはもちろん、セレーネもレーシュに会うのに一緒に訪れたカフェだ。
ヘリオスは、少し思案してから、テラス席へと足を運ぶ。
その行動に、セレーネは首を傾げる。
「ヘリオスさんは、テラス席がお嫌いだと仰ってませんでしたか?」
「ああ、嫌いだ」
「ヘリオスさんは、奥のボックス席が定位置ではありませんでしたか?」
「ああ、そうだ」
「では、どうして苦手なテラス席なのでしょう?」
「お前とならいい。それに、ここでも日向ぼっこが出来るだろ」
そう言って、テラス席の椅子へと腰をかける。
セレーネもそれにならう。
「いらっしゃいませ」
そう言って、二人が注文した珈琲とオレンジジュースを持ってきたのは、初老のマスターだった。
飲み物を配膳し終わると、ふと笑みを浮かべて、言った。
「珍しいね、テラス席。いつもは奥のボックス席が定位置じゃなかったかい?」
「たまには座りたいんですよ、テラス席。こいつの日向ぼっこタイムも兼ねて」
「おや、お嬢さんは、日向ぼっこが趣味なのかい?」
「ち、違います! 私、趣味とかそんなじゃないです! えっと……そう! 日課……?」
「おやおや、疑問形かい? 全く可愛らしく面白いお嬢さんだ。しかし、無事に見つかってよかったね」
「あの時はありがとうございます。マスターの助言がなかったら、絶対考え付かないとこにいたんで」
「本当に昔話とそっくりな状況だったわけだ。お嬢さんも怪我はしていなさそうだし、安心したよ」
「……あの、ヘリオスさん。マスターさんが私のいた場所を教えてくれたのですか?」
状況が全くわからないセレーネが、ヘリオスに問いかける。
「私が教えたのではないよ。彼は自分でお嬢さんの居場所を見つけ出したんだ。私はただ助言をしただけだよ」
「そ。実際、時計台にいるなんてここに住んでる限り考えられないだろ。必要ないのに入る事もない場所なんだから」
「……それもそうですね。私も、あの日が時計台に入ったのが初めてでした」
「……お前、それ時計台ってわかって入ってたのか?」
「……それはわかりませんでした」
呆れたようにヘリオスに問いかけられて、しゅんとしながらセレーネが答えた。
ヘリオスには、なんとなく察しはついていた事だったので、その返答にも相変わらずだなという感想を持ったぐらいだった。
「けれど、無事で安心したよ。私も心配していたからね」
マスターは「じゃあ、ごゆっくり」と、そう言って二人に微笑んだ。
テラス席は、人通りが多い。
人が通るのがよくわかる、だからヘリオスは以前は嫌だったのだ。
けれど、今は平気だ。
理由はセレーネだ。
今までなら、好きでもない女性が寄ってくるから嫌だっただけで、今大切な人はセレーネそのものであって、逆に自分の彼女だと見せびらかしたいような衝動にも駆られているのかもしれない。
珈琲を一口飲んで、セレーネを見る。
このカフェのオレンジジュースを気に入ったのか、幸せそうに飲んでいるように見えた。
「……そういえば」
ふと、思い出したかのように、セレーネはヘリオスに問いかけた。
「レーシュさん、あの後どうしたんでしょう?」
「あぁ。……殴った、っつーか、気絶程度だからな。一応お前と妹を家に戻してから、レーシュも家に帰したよ、俺が」
「……何か、言ってましたか?」
「いや。もうそんな気力なかったな。……しっかり言ったよ。俺を諦める、ってさ」
あの後、さすがにそのままなのも悪いと思って、レーシュを家に戻したヘリオスは、去り際にレーシュに言われたのだ。
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