7-2
次の日。
セレーネの心はそわそわしていた。
遠くから見守っていたイェソドでも、姉のそわそわは感じる事が出来るぐらいに。
「お姉ちゃん。ちょっとは落ち着きなって。いつもの事でしょ? ヘリオスさんと会って街一緒に歩いて手を繋いで。いつも通りのことでしょ? ほら、いつもの事だしいつも通りじゃん。普通にすればいいのに」
「でもいーちゃん! ででで、デートですよ! そ、そんな……」
「お互い好き同士だから問題ないでしょうが。ていうか、お姉ちゃんはなんでそもそもそういうのを知らないかな。漫画とかドラマとかで見るでしょうが」
「ですけど……。あれは創作の世界であって、現実の世界ではないのですよ、いーちゃん」
「そんなのわかってるし。そもそも今までヘリオスさんと普通にデートしてたんだから、今更そんなにそわそわしたり不安にならなくて大丈夫だから。大体お姉ちゃんが何かしらを考えるわけじゃなくて、ヘリオスさんがリードしてくれるから大丈夫だよ。いつも通りヘリオスさんと一緒にいればいいの」
イェソドにとっては、セレーネへの助言はもう手慣れたものだった。
呆れているわけではないし、セレーネが無知である事は重々承知だからだ。
セレーネがヘリオスと一緒にいると決めたのだから、イェソドからすると二人を応援したい気持ちが強い。
イェソドは元々口の悪い方だと、自分でも自覚はしている。
なので決してこれはセレーネに怒っているわけではない。
セレーネもそのあたりは承知している。
「ああもう、お姉ちゃん。早く用意しなよ! ヘリオスさん、もうすぐ来るよ!」
「でもいーちゃん……! お洋服は……? デートですし、その」
「ああもう! 普段通りでいいってば! 全部いつも通りなんだから大丈夫だよ!」
全く骨が折れる。
イェソドは心底そう思いながら、がっくりと肩を落とした。
瞬間、玄関のベルが鳴る。
「ほらお姉ちゃん、ヘリオスさん来たよ! 早く!」
焦るセレーネにそう言って、玄関を開けると、案の定そこにはヘリオスがいた。
「なんだ、妹。ずいぶん騒がしいな」
「……話すと長くなるので察してもらっていいですか」
「……なんとなく理由はわかってるよ」
ヘリオスもまた予想はしていたようで、ため息をついてセレーネに向けて言った。
「慌てなくていいからゆっくり落ち着いて考えろ」
困ったような苦笑いしか浮かばなかった。
†




