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「お嬢さんの名前の意味は〝月〟。そして君の名前の意味は〝太陽〟。……私が言いたい意味が、理解出来るかい?」
マスターはそう言った。
ヘリオスは自分の名前の由来を知らなかった。
親から与えられた名前が、こんなにも重要な名前だったなんて、思いもしなかった。
「――要するに、俺がセレーネを救いだせれば、世界の混乱も治まるわけだろ」
「そうだ」
それにはセレーネを探し、同時にレーシュも探さなければいけない。
二人がどこに行ったかは、まだ見当はついていない。
けれど、探していない場所が、一つだけあるのは事実だった。
「それに隣のお嬢さん。名前は?」
ふと、マスターに問いかけられたイェソドは、自分の名を告げる事にした。
「……イェソド、ですけど?」
「君の名前も、素敵な名前だね。世界の基礎を表す名前なんだよ」
「世界の、基礎?」
「そう。――君たちが出会って、一緒にいるのは本当に運命なのかもしれないよ」
マスターはそう言って、外の景色を見た。
空は雷鳴を轟かせながら、相変わらず大粒の雨を降らせていた。
「早くお嬢さんのところへ行ってあげなさい。私には二人が向かった場所はわからないけれど、この嵐さえ治まれば、おのずと君たちが時間を戻したのだとわかるからね」
優しく、力強い声音でマスターが言う。
「……上等じゃねぇか」
にや、と笑んで、ヘリオスが言った。
「おい、妹、行くぞ」
「え、でも他の場所って……」
「まだ一つ当たってねぇ場所があんだよ」
そう言って、マスターへのお礼もそこそこに、カフェを出る。
「――待ってろ、セレーネ。お前は絶対、俺のモンだ」
小さく呟いて、ヘリオスがイェソドの手を引いて歩き出した先にあるのは、最後の手がかりの場所である、時計台だった。
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