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この国〝暦〟は、時間と言う空間、そして物体界の成立のための最も基礎的で基本的なものを創り、それを安定させている国。
そして、この国の時計台がその役割を全て担っていると言っても過言ではない。
しかし、〝時〟というものは、元々太陽と月があってこそ成り立つもの。
太陽が昇れば朝が来て、月が昇れば夜が来る。
太陽と月、そして時間は切っても切り離せない関係にある。
元来人間は、太陽と月で時間を知り、それを元に生活してきた。
そして、この国における時計台の存在は、太陽と月の存在が大きい。
過去、〝暦〟でたった一度だけ、起こった災害がある。
時計台が狂う、という事件だ。
太陽の名を持つ男性・ソル、月の名を持つ女性・ルーナ、お互いが離れてしまったのだ。
離れた、というよりは、引き離された、という言葉が正しいのかもしれない。
ソルはルーナに、ルーナはソルに、お互い恋をし、それを引き離したのはニンバスという女性だった。
彼女はソルに恋をしていたが、自分に振り向いてはくれないソルに苛立ちを覚え、やがてルーナと引き離すことにしたのだ。
「ソルから離れなさい。あなたが離れないなら、あたしはあなたを殺すから」
ニンバスはそう言って、ルーナを引き離す事に成功した。
しかし、その瞬間だった。
時計台が狂ってしまった。
二人の存在が太陽と月であったが故に起こった事象。
国は嵐に見舞われ、他の世界の時間も狂いが生じた。
時間は当然のように狂い、世界の時間が歪んでいく。
それに気付いたソルは、ルーナを救うためにニンバスを殺すことにした。
自分には〝太陽〟の名がある。
それと同じくしてルーナには〝月〟の名がある。
お互いは運命で結ばれているのだと、しっかりと認識していたが故の行動である。
ニンバスはお互いを引き裂く、いわば〝暗雲〟のような存在だと感じていた。
ソルはやがてニンバスを殺し、ルーナを再び自らの手で抱いた。
やがて、世界の時間は元に戻っていった。
国の嵐は治まったものの、惨状たるやなかった。
唯一無傷で残っていたのは、時計台だけで、他はほぼ壊滅状態だった。
しかし、少しずつそれも復興していき、現在の状態に戻った。
そして国ではソルとルーナ――太陽と月のエンブレムを奇跡の時計台に、二度と災害に見舞われないようにと焼きつけるように掲げたのだった。
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