5-2
「……くっそ、本格的に雨降ってきやがった」
ヘリオスはイェソドと一緒にセレーネを探していた。
行きそうな場所をもう一度当たって、確認してもどこにもいない。
やがて雨の強さが増していく。
「今日、雨の予報とか聞いてない!」
イェソドはそう言いながら、とりあえずセレーネを探すのも優先だが傘を買うのも優先だと思った。
濡れ鼠になる前に、二人で傘を買った。
その店の店主にセレーネの事を聞いても、知らないと言う。
「……どこ行ったんだよ……」
苛立ちもある、けれどどちらかというと不安の方が強い。
「……もう、片っ端から聞きこみしていくしかないですね」
「……みたいだな」
雨の中、二人はそう言って、セレーネがよく訪れそうな場所で聞き込みをする事にした。
セレーネの容姿を伝えて聞き込みを続けて行くと、ヘリオスが以前訪れたカフェの初老のマスターが見たと言った。
「ああ、見たよ。……そういえば、連れの人もいたかな」
「連れ?」
「そう、連れ。そのお嬢さんよりも大人っぽい女の人だったね。その女の人も私は見覚えがあるよ。君もよくここに一緒に来ていただろう?」
そう言われて、ヘリオスははっとした。
恐らく、多分、いや、確実にその女は、レーシュだ。
マスターの話は続く。
「君と来た時は大概ボックス席だったが、今日は二人でテラス席に座っていたね。珍しいなと思って見ていたんだよ。他愛のない話をしていたんだろうね、話の内容までは私は聞いていないけれど。うちの会計は先払いだから、話が終わったら二人で店を出て行ったよ。けれど、少し不思議だったね。入って来た時はしっかりとした足取りだったお嬢さんが、店を出る時は少しふらついた足取りだったんだよ。気分でも悪くなったのかな。それから二人がどこへ行ったのか、私にはわからないけれど……」
二人はこのカフェに来た。
お茶をした、そして店を出た。
けれど、入店前と入店後では、セレーネの様子がおかしかった。
「――そういえば、お嬢さんの名前は、セレーネさんと言うのかい?」
ふと、マスターに問いかけられる。
「はい。お姉ちゃんの名前は、セレーネで間違いないですけど」
「で、お兄さんは」
「ヘリオスだ」
すると、雨の景色を見て、「偶然なのかな」と呟いた。
「どうやら、今、不思議な事が起こっているらしいんだけど、知っているかい?」
「不思議な事?」
二人は首を傾げる。
「そう。今日は雨の予報はなかった。けれど、天気は気まぐれだからね。雨だって降る事はある。これは特別不思議な事じゃない。不思議な事と言うのは、時計台の事だ」
「……時計台が、どうしたんですか?」
イェソドが問うと、マスターが渋った顔で言う。
「狂っているんだと。さっき、ニュースでやっていたんだよ。徐々にではあるけれど、狂いが生じている、って」
「ちょっと待て。――時計台の時計は、狂っちゃ駄目なんだろ?」
「そうだよ。世界の時間を統治しているからね。狂いが生じると、世界の時間にも影響が出てくる」
その言葉を聞いて、二人は背筋が凍るような感覚を覚えた。
「ただの偶然かと思ったんだけれど、どうやら、君とお嬢さんがきっかけみたいだね」
「……俺と、セレーネが?」
「そう。二人の名前を聞いて、もしかしたら、と思った事があったんだ。君たちは知っているのかな。〝暦〟で起こった昔の災害の話を。そして、それが〝太陽〟と〝月〟が関係していた事を」
そう言うと、マスターはその話を語りだした。
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