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店内をゆっくり、服なら一着ずつ、小物なら一つずつ、恐る恐ると触れながら、どれにしようか思案しているセレーネ。
セレーネは実のところ、自分に見合う服を理解していない。
服を買う時は、必ずイェソドが同伴して、いつも選んでもらっている。
「お姉ちゃんは白。白っぽい。あー、あと、ふわふわした服かな。フリルいっぱいでいかにも〝ロリータファッション〟って感じのやつ? お姉ちゃん童顔だし、着てるイメージは想像出来るし、似合うと思うよ」
今セレーネが着ている服は、イェソドが選んだものだ。
胸元のドレープフリルとそこにある淡い水色の花のコサージュがワンポイント、水色がベースになっているワッフルチェック柄で、愛らしい清楚でデコラティブなワンピース。
淡い色が似合うのでは、とイェソドの言葉だった。
それに従うセレーネもセレーネだが、やはり自分に見合う服を理解していない以上、信頼できるのはイェソドしかいなかったらしい。
気に入っているし、嫌いでもない。
けれど、やはりセレーネ自身、何が似合うのかわからない。
この店には、何度かショーケースを眺めに来た事があった。
だから、こういう服が好きなのかもしれない、セレーネは思った。
正直のところ、今日この店の前で立ち止まって、一瞬不安が過ったのだ。
ヘリオスと一緒にこのような身なりをした女性が歩いていいのか、と。
そもそも、こういう女性は好きなのだろうか。
それを考え始めると、店内を真剣に見ていくうちにどんどん不安に襲われる。
気になっているのは、やはり店頭に飾られていたトルソーが着ていた服。
店頭のトルソーの服の色は、濃いブルー。
あの色が自分に似合うかどうかはわからないが、気になる。
別の色のパターンも店内にはあるが、あの色には敵わない。
一通り見て、考える。
視点としては、ヘリオスの隣を歩いても見合う服の色を考えてしまっているのだろう。
「……どうしましょう」
小さく呟いて、店頭のトルソーを見る。
先ほどからちらちらと見ているのに気づいたのか、店員にふいに声をかけられる。
「よろしかったら、試着してみられますか?」
「え!? いえ、そ、そんな……」
「お前、さっきからずっと気になってんだろ。着るだけならタダだから、試着させてもらえよ」
「……でも、私、似合うかどうか……」
「着てみないとわかんねえよ」
「きっとお客様ならお似合いになられますよ。ご用意しますね」
「え、あ……」
有無を言わさずに、店員は店頭のトルソーを店内に入れて、トルソーから服を脱がすと、試着の準備を始める。
試着、となると、緊張する。
何より、ここの洋服は高い、それを知っているが故、セレーネの緊張感が増す。
「どうぞ」
緊張で頭がいっぱいだったセレーネの思考は、店員の言葉で現実に引き戻された。
服を片手に抱え、片手で試着室のドアを開け、にこりと笑んでいた。
逃げ場は、なくなったのだと把握して、セレーネは試着室へと誘われた。
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