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3-2

 イェソドに相談してからというもの、セレーネはヘリオスと一緒にいる時には妙にそわそわとしてしまう事が多くなってしまった。

 けれど、やはり〝好き〟などという実感がよくわからないセレーネ。

 胸のドキドキはなくならないけれど、ヘリオスと一緒に過ごす時間は、とても幸せだと感じていた。

 ヘリオスはセレーネの家に来たり、お互い外で会ったりと、日によって違うが、今日は外で会っていた。

 街を歩いて、ヘリオスがよく行くと言うカフェに連れて行ってもらい、夕刻には家の前まで送ってもらう。


「お前、最近変じゃね?」


「どういうことでしょう?」


「そわそわしてるっつーか。ぼーっとしてるのはいつもの事だけどな。……気のせいか?」


「き、気のせいですよ、きっと」


 セレーネはそう言って取り繕う様に言う。

 やはり彼は鋭い、気づかれていたのだと思うと少し恥ずかしい気持ちになる。

 でもなぁ、とヘリオスはセレーネを不思議そうに見ながら、言った。


「まだまだ俺の知らない事がありそうだな、お前。見てて面白い」


「……からかってますか?」


 馬鹿にされたのかと頬を少し膨らませると、ヘリオスは柔らかな笑顔で頭を撫でた。


「からかってねえよ。……ほら、もうすぐ家着くぞ」


「……むぅ。ヘリオスさんは意地悪さんですね」


「意地悪とは失礼だな。別に意地悪してねえよ」


 そんな会話をしながら、気づけばセレーネの家の前に辿りついていた。


「じゃあな、また明日」


「はい。また明日」


 ヘリオスと別れる時は、少し寂しい気持ちになる。

 心がぎゅっと、掴まれるように。

 笑顔でヘリオスを見送ってから、門扉を開けて家に入ろうと思った瞬間。


「セレーネさんって、あなた?」


 聞き覚えのない女性の声が、背後から聞こえて振り返る。

 そこにいたのは、真っ黒なウェーブの長い髪、白い肌に映える赤いルージュが印象的な女性だった。


「あの、どちらさまでしょうか?」


 見覚えのない女性に問いかけると、女性はにや、と笑んで、告げた。


「あたしはレーシュ。ヘリオスの婚約者なの」


「婚約者、の方、ですか?」


 そんな話は、ヘリオスから聞いていない。

 そもそも、過去の彼をあまり知らないセレーネからしてみれば、あの風貌で存在感のヘリオスなのだから、そういう相手がいても当然なのかもしれない、と思った。

 けれど、ほんの少し胸が痛むような感情が産まれたのに、セレーネは気づいた。


「あなた、最近ずっとヘリオスと一緒でしょう? あなた、何なの? ヘリオスとはどういう関係なわけ?」


「……ええと、私は、ヘリオスさんのお友達、です。ヘリオスさんは、私と一緒に居たいと、仰っているんですが……」


「そうなの? ……じゃあ、ヘリオスに伝えておいて。あたしに会ってほしい、って。名前を言ったら多分覚えてるわ」


「レーシュさん、ですね? 覚えました。お伝えしておきます」


「ええ。時間取らせてごめんなさい。じゃあね」


 そう言って、レーシュは去って行く。

 多分、上手くいった。

 こんなにあっさりと騙されるとは、少し拍子抜けだった、と思った。

 そして、これから、セレーネとヘリオスと引き離せばいい。


「……ヘリオスが一緒に居たい女、なんてね」


 物好きかしら、レーシュは心の中でそう思った。


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